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パイプオルガンをコンサートホールできくか大聖堂できくか
2022−2023年、コンサートシーズンが始まりました。今週末は金土日でクラシックのコンサート5つ。うれしいーーー。
昨日は、ロイヤル・フェスティバル・ホールで、パイプオルガンの演奏。
ロイヤル・フェスティバル・ホールには、ステージ後ろに大きなパイプオルガンがあります。(トップの画像)
年間20回以上は訪れるロイヤル・フェスティバル・ホールですが、パイプオルガンの演奏はなかなかチャンスがなかった。いつもパイプオルガンを眺めながら、あの音を聴きたいーーーと思っていました。
なので、待ちに待った、あの、パイプオルガン。
ヨーロッパでパイプオルガンというと、教会です。大聖堂には必ず大きなパイプオルガンがある。だから、私も今までイギリスやドイツの大聖堂や教会でパイプオルガンをたくさん聴いてきました。
本来教会で演奏されるパイプオルガンが、コンサートホールで。これは全く違った音楽体験になります。
何しろ音響が全く違う。
大聖堂の東西にのびる細長い建築。天井が高く、さらに高い塔がある。石造。そこで演奏される音楽は、反響して音がふくらむ。音が邪魔し合う。力強く、威圧的で、厳かで、荘厳で、そして、その音が、塔の上へ、そこから天へ響いていく。
まさしく、宗教なのです。神様とつながり、神様からのお言葉を音楽を通してわたしたちに伝えてくれるもの。それが教会音楽。もう、ひざまづいて頭をさげて文句なしにその美しさを受け取るしかない。
コンサートホールのパイプオルガンは違います。音が反響しあって邪魔し合うこともなく、音がホール全体にいきわたり、聴衆をつつみこむような調和のとれた音の空間を創り出す。そこには、教会のような居丈高な雰囲気はない。
今回のロイヤルフェスティバルホールのパイプオルガンは、とても良かった。やわらかい木管の音、金管のシャープさ、そして、その配置がとてもよくて、30m幅くらいに配列されたパイプから出てくる音が、まっすぐ、ときにふわっと、ステレオ音響のように伝わってくる。
たったひとつの楽器が、こんなことを成し遂げてしまうなんて。さすがだ。
結局、同じパイプオルガンで、同じ曲を演奏するとしても、教会での演奏と、コンサートホールでの演奏は目的が違うのだと実感。
教会は宗教行事。コンサートホールは音楽の表現。宗教か芸術かの違い。
パイプオルガンを、コンサートホールでも大聖堂でもどっちでも聴いてほしい。それぞれに、全く違う素晴らしさだから。
私は中学生のときに、バッハの小フーガ・ト短調を聴いて以来、バッハのオルガン音楽が大好きになった。
バッハは生涯を教会音楽の作曲にささげた。まさしく、キリスト教のための音楽をバッハは作曲した。
でも音楽性は先端をいく。今、コンテンポラリーのフィリップ・グラスと並んで演奏されても遜色ない、時代の先を見据えた作曲をしている。
バッハは教会で威力を発揮し、コンサートホールでは、色を変えて輝く。でも、フィリップグラスを教会で聞くのは違和感がありそう。
ロイヤルフェスティバルホールを含むサウスバンクセンター。いつも、この、コンテンポラリーをうまく組み合わせたプログラムが最高に面白い。
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