日本語教師にも使える!現代日本語書き言葉コーパス
ゆる言語ラジオというポッドキャストで、オンラインで無料で公開されている、現代日本語書き言葉均衡コーパスというものの存在を知りました。
コーパスとは、実際に使われた言語を大量に収集し、データベース化したものだそうです。
国語辞典は、言葉の意味を調べるためのものですが、
コーパスは、ある言葉が実際にどのように使われたかを調べるためのものようです。
つまり、言葉の用例集、といえるでしょう。
言葉には書き言葉と話し言葉がありますが、
ここで紹介するのは書き言葉を集めた書き言葉コーパスです。
様々なジャンルの書籍やインターネット上のブログ、法律などの書き言葉から無作為に抽出され、収集された1億500万語の中から、調べたい単語の使われ方を検索することができます。
例えば、「やさしい」という言葉を検索すると、
1871の用例が見つかり、「やさしい」という言葉が使われている文と、その文が掲載された書籍のタイトル、執筆者、発行年、メディアのジャンルなどが表示されます。
私がいろいろと説明するより、まずは使ってみてください。
KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 少納言 (ninjal.ac.jp)
おもしろいでしょ?
この書き言葉コーパスの存在を知ってから、学習者の疑問を解決するために実際に使ってみたので、活用方法を紹介します。
「やさしい」と「親切な」どちらが多く使われますか?
この質問に、どう答えていますか?
「やさしい」のほうがよく使われる、と答えるにしても、
「親切な」のほうがよく使われる、と答えるにしても、
それは教師の感覚に頼ることが多いのではないでしょうか。
似た意味の言葉、同義語や類義語を学んだとき、
使い方はどう違うの?とか、どちらのほうが自然か?という質問をする生徒さんは多いです。
そこに、今までは、なんとなく、で答えていたのですが。
この書き言葉コーパスを使って、
「やさしい」と「親切な」をそれぞれ調べてみました。
「やさしい」は、かんたんな、という意味でも使われるので、
「優しい」と、漢字で検索してみました。
すると、「優しい」はおよそ2400件、
「親切な」はおよそ600件の検索結果が表示されました。
圧倒的に、「優しい」のほうが多く使われていることが分かります。
これからは、自信をもって、「優しい」のほうがよく使われるよ、と言うことができます。
「浴びる」という言葉、シャワーのほかに、何に使いますか?
これも以前、実際に生徒さんから出てきた質問です。
日本語教科書「げんき1」の6課に「シャワーをあびる」というフレーズが登場しますから、ほとんどの生徒が同じ質問をします。
私が咄嗟に考え付いたのは、日光と銃弾と放射線。
「浴びる」という単語は、頭の上から何かが降り注ぐこと、というイメージを生徒に伝えると、そんな細かいイメージの単語があるなんて!と、生徒さんはびっくりしています。
そこで、「浴びる」を検索してみると、出てきました!
注目を浴びる、脚光を浴びる、歓声を浴びる、喝采を浴びる、非難を浴びる、批判を浴びる、など。
これらの慣用句的な表現は、考え付きませんでした。
物質的なものでは、酒を浴びる、火の粉を浴びる、本塁打を浴びる、など。
コーパスのおかげで、「浴びる」の使い方のバリエーションが増えました!
ちなみに、「シャワーを浴びる」とも言うけれど、「シャワーをする」とも言うから、「する」と言っても間違いではない、
と教えてきたので、「シャワーをする」で検索してみると、
なんと、検索件数ゼロでした!
話し言葉では「シャワーをする」の用例は多い気がしますが、
やはり書き言葉では「浴びる」のほうが使われてきたのでしょうか。
ちなみに、この公開されている書き言葉コーパスに収集された言葉たちは、一番古いものは1971年、新しいものが2008年です。
2008年といえば、インターネットはありましたが、ソーシャルメディアはプラットドームもコンテンツも現在ほど多様化されておらず、利用頻度も低かった記憶があります。
言葉の変化や新語の登場は、ソーシャルメディアの登場とともに加速した気がしているので、2008年以降の書き言葉コーパスも、見てみたいですよね。
オンラインで公開されている、書き言葉コーパスは、
日本語学習者の疑問に答えるヒントとなる、用例の宝庫です!
他にも、こんな使い方があるよ、という方法があれば、コメントにシェアしてくださいね。
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