第三章:マイクロマネジメント上司体験記②本領発揮
質のUPを迫られ、同時に量もこなせ!!!と言う上司D。
しかし、当の本人は基本的に手は動かさない。
マネジメントの役割としてそれも必要なことだけど、部下の作業がそれで円滑になっているかといえばそうではないことが多い。
まず、最も辛かったのは「電話の一字一句指摘される」こと。
これでも自分は当時、課長という立場でした。
一定の裁量権限はあったはず。
だからこそ、この上司Dも
「取引先との交渉に俺はでない。俺が出てしまうと交渉の最終関門が出る事になってしまうから」
との仰せ。まあ、それも一理あるので、厄介な案件などは私が電話で対応をしていた。
ところが。その言葉一字一句を全て聞き取り、ちょっとでも気に入らないニュアンスがあると、パーン!と付箋が視界に飛んでくる。
「そこは、○○といわず、△△というように」みたいな。
これが一度ならいいのです。一回の通話に対して果てしなく繰り返される。
自分でやってくださいよ・・・健全な自分ならそう思えます。
しかし、この当時は既に不調路線まっしぐらでしたので、
「私はやっぱり期待にそった仕事のできないダメな人だな」
と、ただひたすらに自分の無能を責めるばかり。
しかし、見えないところでそそくさ何かをやっていることに敏感な、この上司Dは、下手に隠れて仕事を進めようとすると
「何?え、その案件知らなかったのってオレだけ?」
というように、知らせないことを責められるので、小さなことでも報告しなくてはならない。ここで非常に厄介なのが、当時この部門で私に対して指示をしてくる人が4人いた。
一人はこの上司D。何事も掌握し、自分の決めた形にやりたい。でも社長の顔色は気にしている。
二人目は次長。着任したてのDと違い、部門について一番よく分かっているがマネジメントが下手でプレイヤー向き。でも勘所は一番正しい。
三人目は上司Dの上司にあたる取締役。この分野は疎く、一生懸命アドバイスをしてくれるが的外れなことも多い。
四人目は社長。この部門を立ち上げ大きくしたため思い入れがある。重要案件はDではなく、直接自分に指示が下りる事もある。
往々にして、この四人の意見が一致しない。Dの言う事ばかり聞いて進めると、締切直前で社長にひっくり返されることもあった。
社内で調整できることなら良いが、他社と関わる大きな案件もあり、告知媒体など残るモノを作るとなると、どうしても期日に間に合わせねばならない。
校了直前で大どんでん・・・なんていうこともしばしば。
とはいえ、Dと取締役の言い分を無視して進めると、メンツにこだわる取締役の機嫌を損ねる・・・など面倒ばかり。
私は混乱に陥った。
私は「相手の期待に応えたい」人間なのである。
では、その相手は誰であるか?ということである。
こちら立てればあちらが立たず。というように、誰かに沿う事は、誰かの意見に沿えないことになる。
これは自分にとって辛く、自分を責める材料にもなった。
この頃から極端に残業が増えた。
誰よりも朝早くきて、夜遅く帰る。
そうでもしないと、期待に応えられる仕事ができなかった。
少しずつ、自分の心に雲が広がっていることにまだ自分は気づいていなかった。