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バンコク|風物詩と言うには強烈すぎる運河ボート|タイ暮らし10年 旅の記録(17)

10年ほど前、バンコクに暮らし始めたばかりの頃、週末になるとよく旧市街へ出かけていました。オフィスや住居があるアソーク地区はいわゆる商業地域で高層ビルが乱立、道路は渋滞で騒がしく東京と対して変わらない環境に疲弊する毎日。休日くらいは異国情緒を楽しみたい。そう思っていた私に在タイ長い友人が旧市街へ行くことを薦めてくれました。

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どこの町でも「旧市街」というと歴史ある古い趣のあるエリア。バンコクもご多分に漏れず由緒ある美しい寺院とどこか懐かしさを感じる木造の長屋、そして美味しいローカルご飯が満載。一回訪れて魅了されました。

ただ、問題はそのアクセスの不便さ。近くに電車や地下鉄の駅はなく(当時)、タクシーはボッタくり。バスは乗り方がわからない(これも当時)。チャオプラヤ川ボートは定番だけれどもえらく遠回りの上外国人観光客でごった返している。行き方をいろいろ調べてみると自宅からそれほど離れていないところに運河があり、乗り合いボートが旧市街まで運行されていることを発見。早速試してみることにしたのでした。

運河の名前はセンセープ(Saen Saep)。地図を片手に船着き場へ到着。その時点で今まで自分の中にあった「運河クルーズ」という概念はぶっ飛んだのです。

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最も衝撃を受けたのはその水の汚さ。そりゃあベニスでもアムステルダムでも運河の水はお世辞にもキレイとは言えない。しかし、このセンセーブ運河の水はレベルが違う。万が一落ちたりしたら溺れる前にショック死しそう。まさに大きなドブである。

呆然と船着き場に立っているとボートがやってきました。結構なスピードでドーンと乗り入れてきます。

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お客さんでほぼ満員。船には2人の車掌さんが狭い縁に立っている。一人がロープを持ち、鮮やかな手さばきで船を固定。車掌さんたちは船が走っている間、外側から運賃の徴収もします。激務だ。

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特に乗降する場所は決まっておらず、降りる人は人をかき分けまたいで降りる。落ちたらえらいことなのでみんな真剣。乗る方は船の席の隙間めがけてダイブ!

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なんとか乗り込み出発。船はスピードを上げてブンブン進みます。船の周りにはブルーシートが張られている。そして柱には紐。乗客たちは水しぶきが上がると紐を引っ張ってシートを上に持ち上げる。そう、このシートは水除けなのです。誰もこのバッチイ水滴を浴びたくない。そうでしょう、そうでしょう。しかしなんともシンプルな仕掛け。なんだか楽しくなってきました。

運河にはたくさんの橋が架かってます。中にはかなり低いものも。橋をくぐるときに立っている乗客たちは天井の紐を引いて屋根の高さを下げていました。橋にぶつかって屋根がなくなったら困りますもんね。

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私も天井の紐を引っ張りながら他の乗客の方々との不思議な連帯感を感じてしまいました。

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運河沿いには住宅街が続いていて人々の生活の様子が見えます。飛沫をよけつつ興味津々で眺めてしまう。

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途中、激安衣類で名の知られたボーペー市場に停まり、大量の乗客が降りて行きました。そして間もなく終点のパンファーに到着です。

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ここでまた折り返し運行。船を降りて外に出てみると目の前はゴールデンマウントと言われる丘の上の寺院、ワット・サケットがあります。

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なかなか刺激的で、すごく便利で、渋滞もなく料金も50円程度とメチャ安い。以後、頻繁に愛用することになりました。

それから時を経て現在(2021年)地下鉄は旧市街まで延長され、バスも英語表記が増えて運行通知アプリまでできました。しかし、この運河ボートは健在。いまも庶民の足として活躍しています。水の汚さも相変わらず。ただ、船は間もなく電化され窓付き、冷房付きになる計画があるとのこと。みんなで必死に紐を引っ張ることもなくなるのは何だか寂しいなと自分勝手なことを思うのでした。

おまけ。

運河ボートの終点、パンファーのすぐ近くにはパッタイの超有名店、ティップサマイがあります。夕方からの営業ですが機会があれば是非。(写真は一番人気、海老パッタイの玉子包。)

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