No.32 嘘に嘘を重ねて
アプリで知り合った男と初めて会った日から
約1週間後、その男が紹介したいという人と
3人で会うことになった。
待ち合わせ場所に行くと、
アプリの男が先に座っていた。
聞くと、どうやら紹介したい人は
後から来るらしい。
お昼時でお腹が空いていたので、
食事を頼み、ご飯を食べながら
紹介したいという人についての話や
私の家の話(嘘のシナリオ)を少しした頃、
1人の男がガラッとお店に入ってきた。
前屈みでのしのしと仏頂面をして歩き、
何も言わずにどすんと私の前の椅子に座った。
怖い人がきた…!
そう思った。
アプリの男が
あ!この人が紹介したかったヒラさんです!
とサッと紹介してくれた。
あ!どうも!ヒラって呼ばれてます!
とペコっと頭を下げてその人は挨拶をしたが
印象は全く良くはない。むしろ最悪だ。
しかも挨拶をした後直ぐに店員さんを呼び、
親切ではない言い方で食事を頼んだ。
どうやらご飯を食べながら話をするみたいだ。
でもこんな人と食事なんて…怖すぎる!!
そう思っているとヒラさんは、
隣に座っているアプリの男に
LINEでチラッとは聞いたから
とりあえずは把握してるけど、
もう一回教えてくれる?と聞き、
アプリの男は私がした話を
たまに言葉を詰まらせながらヒラさんに話した。
なるほどね。と納得した表情で
深く頷いたヒラさんは、
で、どうしたいの?お前は。
とアプリの男に聞いた。
アプリの男は、
収入もなく家族にも助けを求められない状況なので
僕としてはなんとか助けてあげたいです。
でも僕1人の資金繰りじゃ難しいので
ヒラさんにご支援いただきたいと思ってて…。
と、半ばヒラさんに申し訳なさそうに、
本来私が言わなければならないセリフを
代弁してくれた。
うーん。と斜め上を見て少し考えた様子で、
人1人を生活させるって結構大変なんやで。
支援するっていったって、やるからには
徹底的にやってあげたいし、
それだけ俺にも責任がいる。
それはちゃんと理解した上やんな?
と私とアプリの男を交互に見ながら言った。
はい、もちろんです!と男は言い、
私は、はい!と大きく頷いた。
それで、ほんとに家族には頼られへんのか?
と、ヒラさんが言った言葉に心が痛んだ。
お金欲しさに私が咄嗟についた嘘のシナリオが
こんな大袈裟な話になるなんて…。
だが後戻りもできないと思った。
ここで、嘘でしたごめんなさい!なんて
何があっても言えない…。
と、しょうもないプライドが働き、
はい。両親もいなくて、祖母は入院中で…。
従兄弟たちも遠くにいて疎遠状態なので
なかなか助けを求められなくて…。
また嘘に嘘を重ねた。
お願いします!と言うと、
ヒラさんは、わかった。と言い、
これからの動きについて説明してくれた。
まとまったお金をドンっとくれるのかと思いきや
これからの動きって…?
一体何をするの?
これからやろうとすることは
20歳そこらの私からすると衝撃的だった。
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