No.5 嫉妬
【いるか塔】という物語を作って
友達に言いふらしていたのには
こんな理由があったのかもしれない。
私の家は決して裕福な訳ではなかったが
貧乏な訳でもなかった。
『凡人』『一般家庭』と
表現するのが一番しっくりくるだろうか。
夜は9時〜10時の間には
布団に入るよう言われ、
当時流行っていたドラマを見ることも
バラエティー番組を見ることも
あまり許されなかった。
欲しいおもちゃを買ってもらえるのは
誕生日かクリスマスの時だけで
あまり高価な物(一万円以上の物)は
買うのを拒まれていた。
そんな教育の下で育ってきた私だが
物心がつくまでは
あまり気にもならなかった。
しかし物心がついてからは違った。
毎日可愛いお洋服や可愛い髪型をして
保育園に通っている友達が
羨ましいと思った。
その子は私が欲しいと思った物は
結構なんでも持っていた。
かっこいい年上のお兄ちゃん、
プリキュアのおもちゃやゲーム、
その頃流行っていたドラマを見ていたり
(当時はのぶたをプロデュースが流行っていて
よくごっこ遊びをしてたのだ)
バラエティー番組に出ている
女優さんや俳優さん達の事も詳しかった。
『私よりも物事について詳しく
私の欲しい物をなんでも持っている子。』
物心ついた5歳の私はその子の事をそう思い、
負けないように必死に
その子に勝てるような話しを作り
あたかも自分の事のように
ベラベラと自慢げに話していたのかも知れない。
小さいながらの嫉妬心から
作り出された物語が
【いるか塔】だったわけである。