病案本(1・2巻)読んだ!!
(ほぼどこが最高だったかという語りなので以下ネタバレ配慮などはしてないです)
方々で御名前を拝見する肉包不吃肉先生の作品という事で読んでみましたがすっっっっごく面白かった〜〜〜〜!!!!
2巻まで読み終えて、何より思うのはずば抜けて心理描写が巧みな方であり、キャラクター毎の人物造詣の深さが素晴らしいなと。2巻まで読み終わって、賀坊ちゃんも謝先生も大好き!!!!になりました!!!
お兄ちゃん過激派の雪ちゃん、哀れな陳刑事も好きだよ!!
読み始めてからある程度の時点まで、私には受け攻めどっちかさっぱり分からなかったのが面白かったです。謝先生、ご飯作り始めたからてっきり攻めかと…(そこ!?)
私の中華BL歴は墨香先生が始祖なので、やっぱりご飯上手に作れるのは攻めっていう先入観がありました。
謝先生の腰が細いとか肌が白いとかの描写がちらほらあったのでお?もしや?と思ってたところ、賀坊ちゃんがピンチ時にロールスロイスで颯爽と駆けつけてくれたので、そこでお前が攻めか〜〜〜〜〜!!!!!と分かりました。受けピンチロールスロイスはまごうことなき攻めの証。
話自体もめくるめくサスペンスでありめちゃくちゃ面白いし、私は中華BLを書かれる先生方が常に真摯に社会問題や重いテーマを取り入れていかれる姿勢を本当にリスペクト&愛しているので、本作でも「精神異常」と呼ばれる「病」を患う人々はこの社会の中でどう生きていくのが正しいのか?というかなり重大かつ安易な解決が難しそうなテーマを意欲的に提示されているのが、すごいな…と。BLやサスペンスとは別軸で、ここにもちゃんと回答が提示されるんだろうなと期待しています、帯見たら全8巻と書いてあったのでたっぷり語って頂けそうでとても楽しみ。
1巻でキスまでいったので、なるほどこのペースなら最終巻くらいで本番か…やたらエロくコーヒー飲ませるシーンもあったし(ここすごい!!!!!と思った。飲ませてるだけなのにめちゃくちゃセンシティブ!!)今後もいっぱいお楽しみシーンがありそうで全然満足できそうだな…などと思っていたら2巻後半で突如合体祭りになったのですっっっっごいびっくりしたし嬉し!!!!!となった。肉まん先生、描写激しい〜!色んな意味で!
元々、受け攻めが精神的救いを互いに求めた先にそういう行為があるBLが好きなんですけど、病案本はずっと受け攻めギスギスしてるので、無理矢理要素も入ってきて普段だったら「これは私のためのお話ではないようです!さようなら!!!!」ってなりそうなところ、するする読めて自分でもビックリしました。
やっぱり賀坊ちゃんが謝先生に「中に入れてよ〜」ってスンスン泣いてたのが可愛すぎたからかな(巻末の作者コメントでもめちゃくちゃいじられてて笑った、坊ちゃん…)。マジで声出して笑いました。童◯丸出し攻め、かわええ!!!媚薬酒出てきた時も声出た、「媚薬キタ!!!!!!」って声出た肉まん先生大好き。
あと無理矢理に納得できたのは、そこに至るまでの坊ちゃんかわいそう描写が読んでてもうやめてくれ…ってなるくらいきつかったから、謝先生には悪いがもうこうなってしまうのもしょうがないか…という受け取り方になっちゃって、これは肉まん先生の筆力あってのことかなと思いました。しかし気持ちが通じ合って受けが気持ち良さそうじゃないと、やっぱり読んでて心のどこかで苦しみを感じてしまうので、無理矢理気持ち良くなってる1回目はともかく更衣室での2回目はちょっとハラハラの方がまさってしまい、ひたすら謝先生の身体の心配をしてしまった…若さほと走る坊ちゃん、激しすぎるんだもの。でもそれでも、シチュエーションや細かな肉体描写など(肉まん先生の汗や熱気、匂いの描写大好き!!)から「良さ」は感じられたし、何より肉まん先生がこういうの大好き!!!!で書いてらっしゃるんだなと読んでてめちゃくちゃ伝わってくるので、そこが良かった!!!
そういうわけで私は普段無理矢理要素が入ってくるとnot for me …と撤退してしまう事が多いところ、病案本が大丈夫だったのはそこに至るまでの過程の納得感、キャラクター2人への愛着、何より肉まん先生の筆力でぐいぐい引っ張ってもらえたからだと思うんですが、人によってはかなり抵抗を感じる描写なのかな、とも思う。一番長い巻末コメントを読むと先生も書きたいものと読者の反応の相剋で苦労されてるのだな…とひしひし感じられた。ただ、背徳感や暴力に激しい興奮を感じる(平たく言うとSM要素ですかね)のは人のサガなのもまた真実であり。最初クラブで行為に至るところで、賀坊ちゃんが謝先生みたいな男らしい男を屈服させるにはこういう行為が一番なんだ!!!と思考を煮詰めていく所、支配欲で酩酊している描写、雄が雄を抱くことで「こいつを負かす!!!!!」という思考回路に突き進んでいく過程が圧巻ですごい…!!!!!!と思ったんですけど、これは男性の性行為に対する態度としてある種本質をついてるなと。やっぱり性行為の本質って「侵略」なので。
行為が愛の産物の場合、「受け入れ側」が「攻めいる側」にどうぞと己を明け渡す、究極に無防備でまさに命まで渡すような受容行為を2人の関係性で可能にしてる所に読んでる側は感動したりときめいたりする感じじゃないかと思う訳なんですけど、やっぱり難攻不落の城を攻め落とす行為でも絶対血湧き肉躍ってしまうものじゃないですか、人間って(?)。おれ、いくさ、だいすき。
BLは女性が安全圏に逃れた上で心から楽しめる性的ファンタジーという発明であり、新しい自己表現なんだというのを割と本とかあちこちで読んでその通りだと思ってるので、安全を脅かす暴力的表現が特に昨今嫌われるのはむべなるかな(特に昨今は緻密な心理描写が受けているイメージがあるので、余計に対話じゃなく暴力により話を進めていくのは忌避されるかなと思う)、だし自分もあまり好んで読まないんですけど、でもかと言って、ジャンルの特性として性行為を多くの場合挟む以上、行為が持つ本質は変わらないわけで、そこを突き詰めて読み手に納得させた上で興奮できる描写に昇華できるのって凄いことだと思います。BLがどこまでいってもファンタジー(あるいはフィクション)だからこそ、本来は自分ごとになってしまう痛みと恐怖を切り離し心ゆくまで味わう事が出来る、という事でもある。
声を大にして言いたいが私はこの本の描写に素直に興奮しました!!!!!!!!忌避しがちな本質を突かれるのって刃物を向けられるみたいにヒヤッとするけどゾクゾクするし読んでて気持ちいい!!!!
肉まん先生すごい!!!!!!!!
というわけで病案本の性描写、私は大好きなんですがこれはやっぱりいざという瞬間までにどこまで書き手が理性的にこっちを説得するロジックを組み立ててくれるかに掛かってると思うので、肉まん先生単体での話だと思う。通常はYESラブラブNO無理矢理の人間なので。ファンタジーだろうがフィクションだろうが、読むのは現実の人間なのでどこまで許容出来るかのラインは人生経験、モラル、好悪といったその人の全てから判断されるので真の意味で人それぞれですし。「無理矢理」とか「SM」とか、ジャンルで括って要素としてNGかOKか、という話でもないのだろうなと思います。肉まん先生も巻末でそんな事を書いてらしたので、表現って、BLって難しいねぇ…とも思ったりしましたが、先生が書きたいものと受け入れられるものの相剋に立ち向かいながら物語を書いておられるように、読者も愛を標榜しつつ本質的には暴力である行為に興奮してしまう自分、という相剋を御しながら読んでいくという、ある種これはこれで特異で素晴らしい体験なんじゃないかと私は思います。
あとどうしても言いたいのは、さっきのロジックの話に戻るんですが性行為書くのが上手い人って、言葉という媒体で手練手管を尽くして理性的にこっちを興奮させてくれるのがすごいですよね…!!という事!!身体じゃなくて脳を興奮させてくれるというか。当たり前ながら身体が興奮しちゃうと文章読めなくなるので、純粋に脳だけでその場の出来事を擬似体験してる、そのプロセスを経たからこそ激しく中毒性のある楽しさが生まれるのだと思うし、物語上の性別が自分自身と重なり得ないという現象とあいまってこの感覚はBLでしか味わえないなと思います。
諸々ひっくるめて、病案本は素晴らしいし、BLって改めて唯一無二の読書体験でほんと面白いものだなぁと思いました。
主役2人に関して。
中華BLは、キャラクターにみんな人生の厚みがあって、それぞれ命や誇りをかけるものがあったり芯の通った生き様を見せてくれたりで、ただでさえかっこいいこの男たちが更に愛を育んでくれるんですか!?という所がやっぱり最高の見どころだと思うんですよね。
病案本の2人もそれぞれ大好きなんですけど、2巻までだと盛大にすれ違ったまま、賀坊ちゃんから一方的に盛られてる感じの謝先生、仄暗い美しいさと人としてのかっこよさが素敵だけどかなりおいたわしくて…。すれ違いの原因になってるのは何かしら重大な事を先生が1人で飲み込んでるからなんだろうな。だって謝先生こんなにかっこいい大人なのに、坊ちゃんを保身で捨てた訳ないじゃん!?でも賀坊ちゃんも色々大変なので、なかなか誤解解けないだろうな。謝先生、ものすごく自分自身を大事にしてない理由もおいおい明かされていくと思うんですけど、2回目以降の賀坊ちゃんとの行為に関して感情が「無」なのが、先生個人の話というよりは性暴力被害者の解離状態みたいで辛いので、どちらかが問題に気付いて早めに解消してほしいな…。2人の関係進展とは別の軸として、物語最後では謝先生が自分自身を大切に出来るようになっていると良いなと思います。
賀坊ちゃんはね…性行為においては暴力性とか、加害者的な片鱗を見せ続けるんだけど不思議と嫌いになれず…。やっぱり生い立ちが壮絶(雪ちゃんとのあれこれはマジで肝が冷えた、こっちが思うよりあっちはどうも思ってないとかそういうすれ違い人間関係には絶対起こりがちなやつの究極形態でヒエ〜!!となる)なのと、物語開始時完璧人間なのが一回謝先生と関係持ったらどんどんカッコ悪くなってくのが本当可愛いからかな〜若者丸出しで。全然関係の主導権握れてないし、ほんと宝物を隠したいジタバタドラゴン。2回目の行為の後、一瞬「恋」に似た感情が芽生えそうになったシーンが好きです。感情赤ちゃんなのに身体と頭脳だけパーフェクトなの、絶妙なアンバランスさでやっぱり魅力的だ。
無意識下でかなり謝先生にドロドロに溺れてる賀坊ちゃんと、「愛」を知らないので今の時点では毎回ドラゴンにじゃれかかられケガさせられてる感じの謝先生(シンプルにお身体心配)、この2人は2巻以降もずるずるギスギスベッドタイムを重ねていく感じなのでしょうか。最終的にラブラブになるのか?今のところどう転んでも無理じゃないか?!?!って感じなんですが。
ずっとこんな感じでも良いかもしれないけどラブラブになってくれたらそれはそれで嬉しい。というか謝先生の主に下半身に健康になってほしい。ほんとに。
いや読み始めた冒頭からほんとーーーーーに2人がギスギスしてるのでずっとどうにかなるの無理なんじゃ?だったんですが、賀坊ちゃんの病がそこは上手い物語上のギミックになってるなと。
この「特殊な病」という要素は、「いつか精神崩壊するかもしれない不治の病」という性質から読者にいつそれが起きてしまうのか?というタイムリミットサスペンスのドキドキを与えてくれつつ、一方で発作が起きれば坊ちゃんと先生2人の関係が(今のところ主に身体上でしかないけど)大きく進展していくのでワクワク寄りのドキドキも与えてくれるという。これは作劇がほんとにうますぎる!!
それに異能バトル要素にもその病が絡んでいくので、一病(ひとやまい)で何回もおいしいことになっていてすごい。精神異常と隔離という深いテーマにも繋がってるし、いずれ「恋の病」という要素も出てくるかもしれないし(先生が情熱的な愛を病扱いしてるシーンあったので期待)。
そんなわけで肉まん先生初読書、大変刺激的で最高な体験でした。続巻も楽しみです!!
肉まん先生は墨香先生やpriest先生ともまた違って、重くドロドロした情念的なものの上に毒混じりのポップな描写が流れていく感じがクセになる味ですごくいいなと思いました。新しい大好きが見つかって嬉しい。
話題の二哈和他的白猫師尊も予約してるので、今月は肉まん先生祭り!!!
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