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1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 2-6 認知心理学ベースの進化理論 (第2部 第16章) ~

2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。

本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。

(導入説明 300字、各章概要 1000字、振り返り 500~1000字 構成である📣)


1.本文概要:認知心理学ベースの進化理論

✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P285~P299 ✄

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本章で取り上げるのは「組織はなぜ、どのように変化するのか?」「組織を進化させ続けるために注意すべきことは?」といった疑問に答える理論の1つである「進化理論 (Evolutionary Theory)」である。

進化理論の基礎は【限定された合理性】であるが、認知心理学・カーネギー学派 (後述リンク参照) と異なるのは「組織の進化」に焦点を当てている点である。ここで決定的な役割を果たすのが「ルーティン」という概念である。

~メモ ( ..)φ:進化理論におけるルーティンとは ~
得られた知を元に組織メンバーが似た行動を繰り返すことで、それが「意識しなくても、この組織では当然の行動」としてパターン化され、埋め込まれていくこと。組織のメンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する、暗黙知と形式知を土台にた行動プロセスのパターン。


ルーティンは組織に様々な効果をもたらす。ここでは、南デンマーク大学のマーカス・ベッカーの論文を元に主要な3つの効果を解説する。

①安定化 (stabilization)
ルーティン化により、メンバーの繰り返される業務・行動プロセスは平準化される。平準化されれば、将来の予見もしやすくなり、現場での監督・管理も行いやすくなる。

②記憶 (memorization)
トランザクティブ・メモリー・システム (TMS) や シェアード・メンタル・モデル (SMM) と並ぶ、組織の記録の仕組みである。TMSやSMMは「形式知」の保存であるのに対し、ルーティンは「暗黙知」を強調するものである。

③進化 (evolution)
ルーティンの充実した組織は、認知キャパシティに余裕が生まれ、サーチ行動がしやすくなり、新たな知を受け入れられる様になる。結果として組織の認知の幅を広げ、そこから学習して進化できる。


ルーティンの進化には、ルーティンであるが故に3つの特性がある。

①漸進的な変化 (Incremental change)
進化する際も、それ以前に形成されたルーティンに縛られる。組織に新たに埋め込まれる知も、既存の行動パターンにそれなりに適応したものでなくてはならない。

②経路依存性 (Path Dependence)
一度築いたルーティンの方向性を、急激に大幅に変えることは難しい。ルーティンが出来上がった経緯に進化の方向性は制約を受ける。似たルーティンの組織同士でも互いに大きく異なるルーティンへ昇華することもある。

③硬直化 (Inertia)
ルーティンによる安定化が行き過ぎると、組織メンバーがすでに埋め込まれた内部ルーティンだけに依存する様になり、結果的にサーチ行動を怠ったり、外から得た知を受け付けなくなる。

~メモ ( ..)φ:硬直化を防ぐには? ~
「①適切な頻度で、②時にイレギュラーな行動パターンを織り交ぜ、③性急に結果を求めない。」ということが重要である。

2.本章に対する振り返り

【限定された合理性】の観点については、自身の体感としても賛同する次第である。自身としても「如何に認知に負担を掛けない様にするか?」は仕事をミスなく円滑に運ぶ上で大切であると考えており、そのため "暗黙知を形式知に変換" していく "マニュアル化" は重要であると考えていたが、この章は【限定された合理性】の観点をアップデートするものであった。

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"ルーティン" を "暗黙知を暗黙知のまま共有” するものとする観点が印象的であった。これまで、マニュアル化を重要視しながらチーム運営を行う中で、「全てを形式知に変換できる」と考えるのは "マニュアルを作成していく上でも、マニュアルを使用する上でも危うい考え方" であると感じる中であったからこそ印象に残った側面がある。

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とは言え、ルーティンによる進化にも上述の様な "効果" と "影響 (特性)" があり、「ルーティンにさえ頼っていれば上手くいく」というものではない。だからこそ、関連の経営理論含めて理解を深めた上で「何を形式知に変換するのか?」「何を暗黙知のまま受け継ぐのか?」について適切な感度を持ったマネジメントを行っていくことが大切なのだと思う。

【参考資料】


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