1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 1-4 SCP対RBV、および競争の型 (第1部 第4章) ~
2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。
本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。
1.本文概要:SCP対RBV、および競争の型
✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P85~P94 ✄
ーーー
SCP理論とRBV、どちらも「完全競争から、独占の方向に自社の競争環境・強みを持っていくことが望ましい」とする点で共通する。SCP理論はそのために製品・サービス市場でのポジショニングや業界構造を考えるのに対し、RBVはその製品・サービスを生み出すための経営資源(リソース)に注目する。
ーーー
そして、「SCPとRBVのどちらが重要なのか?」という問いは以下の2つの側面をもって決着する。
■決着1:両方とも大事
企業の戦略にとって、顧客に接する「表側」の製品・サービスの戦略は重要だし、他方で人材・技術・ブランドなど「裏側」の経営資源を充実させることも重要なはずだ。近年の多くの研究では、産業属性の効果と企業固有の効果のどちらもが、収益性に貢献することが示されている。
■決着2:そもそも「競争の型」が異なる
バーニーは「企業の競争には3種類の型がある」と述べている。
↓↓↓
①IO型の競争
経済学の産業組織論(industrial organization)に基づく競争の概念ことである。これは、産業・競争環境の構造要因が競争に影響を及ぼす状況を指す。IO型の競争では、競争環境が完全競争から乖離するほど、そこにいる企業の収益性は高まる。これはSCP戦略そのものである。
②チェンバレン型の競争
独占的競争(monopolistic competition)モデルに基づいた競争の考え方だ。このモデルは、製品・サービスが企業ごとに差別化されている状況を、所与として組み込んでいるのが特徴だ。他方で産業への参入障壁はないので、新規参入企業も差別化された製品・サービスを持って参入できる。
チェンバレン型競争はIO型競争と共通点が多いが、チェンバレン型では、そもそも全ての企業がある程度差別化されているのは前提であり、問題はその厳しい競争の中でどのように「勝つ差別化」をするか、ということになる。以前の日本企業は「自社の技術力・人材力を磨いていけば、製品は自然に売れる」という考え方の企業も多く、これは極めてRBV的な考え方である。
③シュンペーター型の競争
この競争と、それ以外の2つの競争との違いは「不確実性の高さ」あるいはそれに基づく「予測のしにくさ」である。シュンペーター型の競争で必要なのは、事前に練られた精緻な戦略・計画よりも、むしろ「試行錯誤をして、色々なアイデアを試し、環境の変化に柔軟に対応する」企業の力である。
違う型の環境では違う戦略が求められ、それらは違う経営理論で説明されるからこそ、「競争の型」を理解することが重要である。だからこそ、ビジネスパーソンが自社戦略を考える上では「鷹の目」を持つことが必要である。自社のいる業界だけでなく、より多くの他業界を幅広く俯瞰して、自社を取り巻く環境はどの型の競争に近いのか?を比較検討・予測することが必要。
2.本章に対する振り返り
「置かれている業界がどのような "競争の型" に該当するか?によって、取るべき戦略が変わる」という観点が、一見当たり前の様に感じながらも改めて立ち返ると新鮮味を覚える次第であった。日頃、自身が置かれた環境で仕事に向き合う中においては、自身が所属する業界しか視界に入らないからこそ、"自分が所属する業界の特徴" を蔑ろにしがちかもしれない。
ーーー
だからこそ、本章の内容は「自身が所属する業界を超えて他業界と見比べながら、取るべき "競争の型" を適切に把握することが大切である」ということを示唆する内容である様に自分は感じた。自身が取り入れるべきものを知るためには、自身以外に対しても理解を深める。その観点の中においては、本章中での「日本の家電業界はRBV的なオペレーショナル・エクセレンス(業務改善プロセス)に根付いている」という示唆も興味深かった。
ーーー
この内容を踏まえながらマネジメントにも広げて考えると、「チームが置かれる業種/環境/文脈等の【型】に応じて、取るべきマネジメント手法も変わる」という話にもなるのかもしれない。本章中の事例に習い、マネジメントを担う中における『チームの型』と『マネジメントの手法』をマトリクス的に整理することによって、より迷いのないマネジメントを実現出来る様になるかもしれない。