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1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 3-2 モチベーションの理論 (第3部 19章) ~

2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。

本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。

(導入説明 300字、各章概要 1000字、振り返り 500~1000字 構成である📣)


1.本文概要:モチベーションの理論

✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P341~P358 ✄

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リーダーシップの対の関係にあるのがモチベーション。心理学・経済学でのモチベーションの定義は、例えば以下であり、まとめれば「人を特定の行動に向かわせ、その熱意を持たせ、持続させる」のがモチベーションである。

モチベーションとは、才能、スキル、業務の理解度、環境における制約などの条件を一定とした上で、個人の行動の①方向性、②規模、③持続性を説明する、諸処の変数の関係性に関するものである。

Pritchard et al., 1976, pp. 63-130

モチベーションには種類があり、大きくは「報酬・昇進など、外部から与えられる影響で高まるモチベーション」である「外発的動機」と、「外部からの影響なしに、純粋に "楽しみたい"、"やりたい" といった内面から湧き上がるモチベーション」である「内発的動機」に分けられる。

以降では、関連する理論を古い順に解説する。


■理論1:ニーズ理論 (needs theory) [1940年代~]
この理論は「人には根源的な欲求があり、その欲求がモチベーションとなり、行動に影響を与える」という考え方に基づく。有名な「アブラハム・マズローの欲求五段階説」もその1つである。
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■理論2:職務特性理論 (job characteristics theory) [1970年代~]
この理論で重視されるのは内発的動機であり、「仕事には、従事者の内発的動機を高めるものと、そうでないものがある」という視点に立つ。その中では、①多様性 ②アイデンティティ ③有用性 ④自立性 ⑤フィードバック がモチベーションに影響を与える主な特性として挙げられる。


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ニーズ理論や職務特性理論は一定の説明力を持つものの、モチベーションのメカニズムの全体像を描けるものではない。以降では、1960~70年代「モチベーション理論の黄金時代」に生み出された三大理論を解説する。


■理論3:期待理論 (expectancy-valence theory) [1960年代~]
この理論は「人は合理的に意思決定をする一方で、その意思決定・行動はその人の認知に規定される」という基礎を持つ。その中で「人の動機は、その人が事前に認知・予測する以下の3つの影響を受ける」と考える。

『期 待』:努力すれば成功などの成果を予測できること
『誘位性』:達成した成果に対して、予測される見返り
『手段性』:自分の業務成果が見返りに直結する度合い

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■理論4:ゴール設定理論 (goal setting theory) [1960年代~]
期待理論を前提としながらも、「ゴール・目標の設定」をモチベーションの基礎として加えたのが特徴である。ゴール設定を軸に2つの命題を提示したことが、この理論が広く支持されることに繋がっている。

命題①:人はより具体的で、より困難・チャレンジングなゴールを設定するほど、モチベーションを高める。
★命題②:人は、達成した成果について明確なフィードバックがある時、よりモチベーションを高める。

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■理論5:社会認知理論 (Social Cognitive Theory) [1960・70年代~]
社会認知理論はゴール設定理論の発展系であるが、異なるのは「自己効力感」という概念が組み込まれることである。自己効力感が高い人は優れた成果を上げやすく、そのフィードバック効果で更に自己効力感が増すとする。
自己効力感そのものは、以下4つの要素に影響を受けるとされる。

①過去の自分の行動成果の認知 (フィードバックのこと)
②代理経験 (他者の行動・結果の観察で自身の自己効力感が変化すること)
③社会的説得 (ポジティブな言葉を周囲に投げかけること)
④生理的状態 (精神的不安に陥ると「責務を果たせない」という心理になる)


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これらの3大理論は今でも経営学のモチベーション研究の中心的存在であるが、2000年代に入って進みつつある新しい視点を以下で解説する。


■理論6:プロソーシャル・モチベーション (prosocial motivation:PSM)
PSMは「他者視点でのモチベーション」である。これが高い人は、他人の視点に立ち、他人に貢献することにもモチベーションを見出す。特に注目されているのは、PSMと内発的動機の「補完関係」であり、それらが共に高い人は「他者に貢献することを、自らの楽しみとして感じる」中で、更に高いパフォーマンスに繋がる。

~ メモ ( ..)φ:内発的動機とPSMが共に高い企業 ~
代表格はリクルートである。同社の「あなたはどうしたい?」文化は、内発的動機の啓蒙になっている。また「顧客とのイタコ化」文化は、顧客視点に「乗り移る」り、顧客の「不」の様子を突き止め、解消することを目指すが、これはPSMを高めることに繋がる。



2.本章に対する振り返り

外発的動機と内発的動機は必ずしも綺麗に切り分けられるものではないと感じている。ある種、表裏一体の様なものであり "外発的動機が内発的動機を誘発したり、内発的動機が外発的動機の土台となったり" することも少なくないと感じているが、この辺りは明確な定義を別途追いながら、自身としても掘り下げていきたいと改めて考える次第である。

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日々、マネジメントを行う中では「仕事の進め方を整えただけでは、チームのパフォーマンスは引き上がり切らない」ということを素直に感じている。同じスキル、同じ業務情報を持っていたとしても、相手の心持ち (モチベーション) によって "成果が得られる速度 や 得られる成果内容"には差異が生まれる。だからこそ、モチベーションへの理解が重要になる。

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この章はモチベーション研究の変遷を追っているものであったこともあり、情報量も多く1000字では到底まとめきれないが、自分達が何気なく使っている「モチベーション」という言葉の背景には、非常に分厚い歴史があることを改めて知る機会となった。分かったつもりになりがちな「モチベーション」という概念について、本書の内容を糸口に更に理解を深めたいと思う。

【参考資料】


ここまでお読み頂きましてありがとうございました!💐
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