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【連載小説】揺れる希望の虹(#3)

第1部:目覚めと初恋
第1項:揺れ動く心
学校でのいじめの始まり


ダンスの練習は続いていたが、真輝は周囲の視線に耐えるのが次第に苦痛になっていた。男子たちはふざけながら、真輝の動きを真似してからかい続けた。笑われるたびに、真輝は無理に笑い返していた。彼らに逆らえない自分が嫌だった。それでも、笑いを浮かべるしかなかった。

「おい、また真輝が変な動きしてる!」
「見ろよ、こいつ笑ってるぜ!」

男子たちは声を上げ、真輝を取り囲んだ。笑いながら、自分たちの悪意を隠しもしない。真輝はその場から逃げ出したい気持ちを抑え、顔に引きつった笑みを浮かべた。心の奥底では、どうしても笑わなければならないと感じていた。

「真輝、もっと面白い動きしろよ!」
「なんだよ、楽しんでるんだろ?ほら、笑ってるじゃん!」

その言葉が刺さるたびに、真輝は笑い返すしかなかった。笑えば、すべてがやり過ごせる――そんな幻想を心のどこかで信じていた。だが、笑うたびに自分が遠ざかり、失われていくような感覚が広がっていく。

その時だった。クラスの女子生徒である佐藤結衣が、真輝たちに近づいてきた。

「ちょっと、やりすぎじゃない?」結衣は男子たちを睨みつけた。「真輝、困ってるじゃん」

その瞬間、男子たちの笑いが止まった。結衣の言葉は、真輝の胸に一瞬の安堵をもたらした。誰かが自分を助けようとしている――そんな希望を抱きかけたが、すぐにそれは崩れ去った。

「は?こいつ笑ってるだろ?楽しんでるんじゃねぇの?」

男子の一人が真輝に振り返り、問いかけた。周りの視線が一斉に真輝に集まる。彼はその視線に押され、何も言えなくなった。そして、結衣の方に目を向け、思わず頷いた。

「うん……僕、大丈夫」

その言葉を出した瞬間、真輝は心の底から自分に対して嫌悪感を覚えた。結衣の助けを拒むことで、自分を守ろうとしていた。男子たちはまた笑い出し、「ほらな、こいつ楽しんでるんだよ」と声を張り上げた。

結衣は真輝をじっと見つめていた。彼女の目には、哀れみの色が浮かんでいた。その視線が、真輝の胸に深く突き刺さった。彼はその場をやり過ごすために、自分を見失いつつあった。

男子たちは笑いながら去っていき、結衣はしばらくの間、何も言わずに立ち尽くしていた。真輝もまた、何も言えなかった。彼女に向かって言い訳をすることも、感謝を伝えることもできなかった。ただ、自分がもう一度笑ってしまったことに、心の奥で怒りがこみ上げていた。


家に帰っても、真輝の心には虚無感だけが残っていた。鏡の前に立つと、そこに映っている自分がまるで他人のように感じられる。結衣の目に映った自分は、果たして本当の自分だったのか?それとも、あの場で媚びへつらったただの影だったのか?

「僕は、もういないのかもしれない……」

心の中でそう呟きながら、真輝は鏡に映る自分から目を逸らした。笑顔の下に隠されている本当の自分が、どこに行ってしまったのか、もう分からなかった。

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