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ムーンナイト (2022)

本作では主に二つの軸で物語が動く。
一つは、罪を犯す前の人間を裁くことの是非の戦い。
エジプトが舞台なので全体的に砂漠色なのだが、DUNEやSWのような広大さや、最近よく扱われる西部劇の感じではなく
インディージョーンズなどに見られるようなギミック多めの、アドベンチャー色強い演出が特徴的である。

MCUの他作品との関連性がほとんど見られないストーリーになっていて、元ネタや過去作のことを深く考える必要がないのも、ここまで複雑化したMCUにとっては良いポイントになっていると思う。

そしてもう一つの軸は、スティーブン/マイクによる精神世界の問題。
これはマーベルがフェーズ4以降注力してきたメンタルヘルスと地続きのトピックであり、むしろこの点が一番、他MCU作品との関連性を見出せるポイントとも言える。

最初はそれぞれ独立していたかのように思える二つの軸が、物語後半になるにつれて相当に入り組み、最終的に現実と想像の境目すら曖昧になっていく複雑な構成。
好き嫌いは分かれるとは思うが、このチャレンジングな取り組み自体は個人的に好感。

とはいえストーリーの消化不良感は否めず、アドベンチャー作品としてもメンタルヘルス作品としてもやや中途半端な印象も。
2時間の映画にするか、もう少し話数を増やすかどちらかがベストだった気がしなくもない。

ただ、とにかくオスカー・アイザックの解離性同一障害の演技が素晴らしく、彼の存在そのものが物語を牽引。
俳優陣の魅力は全開なので、そういった視点では非常に楽しめる作品だと思う。

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