見出し画像

衰微/凋落/死滅のアウラ、坂本龍一「opus」


シュタイナーの寺子屋では「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」を底本に、100年前の語りかけを直接聴き、読み解いていくということをやっています。


現在のテーマ
植物の発生/成長/開花のエネルギーサイクルの観察と衰微/凋落/死滅のエネルギーサイクルを交互に見ることから背後に横たわるエーテル界を知覚する、
ということに取り組んでいますが、シュタイナーからのヒントとして前者は「太陽がのぼるような」
後者から「月がのぼるような」"感情"を精細に感じとる、
ということが挙げられています。

今日12/11に発売された坂本龍一さんによる「opus」は、まさにこの後者のエーテル移行が映っている演奏で、「12」もそうでしたが
「死」に向かう深淵が音のアウラとなって流れ出ているようです。

映画館へはこの深淵な音に浸りたくて何度か足を運びましたが待ち焦がれたCDリリース。

以下は劇場で、空音央さんによる映画opusを見た時にInstagramに書いたものですがこちらにも。

opusを見にシネリーブル神戸まで

「儀式」としか言いようのない神聖さ
演ずる人も音響も場も照明も映像も
また楽器にいたるまでのあらゆるものが、
"すべての刹那も決して無駄にはしない"

という強い決意に満ちていた。
本来、仕事とはこういうことだ、
当然なのだ、わたしたちは命を削りながら生きている。

音はひとつひとつがその深淵を味わい尽くすように
丁寧に、残響の揺らぎすら取りこぼさず
確かめながら
慈しみながら、
聴き慣れた曲が想像を超えた遅い速度で満たされてゆく。

津波にのまれたピアノの
いわゆる"調律が狂った"といわれる楽器を、
「楽器が本来の姿に戻ろうとしている」

と弾いていた東北でのコンサートの時のように
「ピアノ」という自然物からなる生命体との融合を希うように、
ペダルの動作音は心音のように、
演奏者の息づかいと相まって
ひとつに溶け合おうとしていた。

YAMAHAはほんとうにいいピアノを作る
ピアノ自身が耳をすましながら次の音を待っていた。
そのように向き合ったから
そのように呼応してゆくのだと思う。

驚いたのは弦のうねりの回転軸と
音そのものの周波数が反響し合うのを、
どこまでも聴いていたこと。
音響エンジニアの一切の妥協を許さない技術のおかげで坂本龍一というすぐれた音楽家の聴覚を
垣間見ることができた
とてつもなく美しかった。

20180219のプリペアドピアノ、
ラストエンペラーのソリッドな切れ味の張り詰めた高音、あんなに澱まない超低音を初めて聴いた

全ての曲は感情を揺り動かすものでなく瞑想的なのは
彼の魂の態度なのだろう
音楽は最早、
感覚界をはるかに超越した「思考」と「知性」によって神の階段を登る。
それでもワルツでは
音の粒子やとりまく空気と戯れながら
楽しげに踊っていた。

日本がキライと話していた人は、
逃れようがないくらい日本的な静謐さで
水が流れるように
風が吹くように
光と闇を入れ替えながら
揺蕩っていた。

ドビュッシーや、サティやバッハや
アルテミエフへの憧憬、
それでもこの音の重なりはこの人でなくてはあり得ないものだった。
限りある鍵盤の上から、
無限世界へ触れてゆく。

芸術にしか出来ないことがある。

あらゆるものは決して失われることはない
目に見えない神殿に刻まれるということを忘れないように。

映像は息子さんの空音央さん
音響ZAK素晴らしい仕事




CD出して欲しい
DVDも。

—————————————————-

年末年始はこの音にじっくり向き合います。

いいなと思ったら応援しよう!