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【保育とボードゲーム】 〜②どんな力が育つのか?〜

【保育とボードゲーム】シリーズ連載、2回目になります。前回はこちらになります↓

今回は遊びの1つの選択肢としてのボードゲームが、子どもたちのどんな力を育てるのかを書いていきたいと思います。

①社会性を育む

 ボードゲームはテレビゲームなどとは違い、基本的に2人以上の人数で行われます(なかには1人で出来るものもありますが…)。複数人で行なうということは、そこに“コミュニケーション“が発生します。言葉でのやり取りが不可欠なので、遊びの最中の会話が増えます。会話もさらに細かく分類していくと、ただ言葉を交わすのではなく、ルールや遊び方を説明するなど、ゲームを1セット遊ぶ中でもいろんな種類の言語コミュニケーションに触れることができます。また、相手の表情を読むという非言語のコミュニケーションも同時に行われています。ゲームに勝敗がつき、相手が負けてしまい悔しそうな表情をしている。そんな表情を見て、「もう1回やろうか?」と言えることってすごいことだと思いませんか?

 またボードゲームにはルールが必ず存在します。それは秩序といってもいいでしょう。ルールを守って遊ぶ楽しさや、ゲームが成立した時の嬉しさを共有できるのも魅力です。ということは、誰かがそのルールを崩すと面白さは途端になくなってしまうということです。
「〇〇くんはズルするから一緒にやりたくない!」と誰かが言った場合、あなたは言った子を責めますか?私はルールを真剣に守っているからこその心の叫びだと思います。少しキツい言い方かもしれませんが、〇〇くんにもどうしてそのように言われたのかも考えるきっかけになるな、と考えます。もちろん両者ともフォローはします。

②感情のコントロール

 ボードゲームには展開の仕方に2種類あって、

A:個人の勝敗を決める
B:参加者全員で1つの課題を達成する

 があります。勝ち負けがつくということは、喜ぶ子もいれば負けて悔しい子もいるわけです。また、みんなで課題を達成できた嬉しさを経験することもできます。ボードゲームは子どもたちがそれまでに知っていた感情以外の感情にも出会わせてくれる可能性を秘めています。なかには悔しさのあまり、「もうやらない!」とその場から逃げ出す子もいるでしょう。けれど、その姿はありのまま受け止めてあげてください。そしてその姿に寄り添って、その子が今向き合っている感情を言語化してあげます。

「負けて悔しいよね。もうやりたくないよね。でも、もう1回やりたいってちょっと思ってない?」そしてポンと背中を押してあげる存在でいたいですよね。

ゲームには負ける経験が必ず付きまといます。可能であれば1回目は勝たせてあげてもいいかもしれません。けれど徐々に負ける経験も必要かと思います。ただし負けたからといって相手を傷つけたり、道具を壊したりすることはしっかり注意しましょう。

③現実とファンタジーの線引き力

 ②と重複しますが、ゲームをしている世界をファンタジーとするのであれば、そこで勝敗がつけば、感情が昂ってちょっと言葉が乱れたり、相手を気にせず勝ち誇ってしまうこともあるでしょう。けれど、それはゲームというファンタジーの中だから許されることなのです。
 現実世界では相手を傷つける言葉はだめですよね。鬼ごっこなども同様で、遊んでいる最中は「鬼さんこちら、ベロベロベー」といくら言ってもオッケー。でも、遊びが終わったらそれはおしまい。現実とファンタジーを見極めて、必要な振る舞いを知るきっかけにもボードゲームは繋がります。

④客観視する力

 ゲームとなれば勝ちたいと思うのは大人も子どもも変わりません。負けが続けば、「どうして負けたんだろう?」と考えるようになります。すると、「次はこうしよう」と闇雲にゲームをするのではなく、自分の振る舞いを客観視して戦略を立てて挑もうとする力を育みます。メタ認知ストラテジーと言ってもいいと思います。記憶が必要となれば記憶力が伸びるし、聞きそびれないようにしっかり聴こうとするだろうし…それが遊びを通して自然と身につくというわけです。

 ボードゲームがこれまで園の遊びに取り入れられていた遊びよりも飛び抜けて優れているとかではないと思います。ただ、“ボードゲーム=娯楽。そんなの保育現場に必要?“と思ってらっしゃる方がいたらもったいないです。今回紹介した4つの力を、遊びを通して育むことができるのです。遊びの選択肢の1つとして導入するのに十分なくらいの可能性を秘めています。
 
 ということで、今回は何が育つのか?と題し、“ボードゲーム“で育つものを改めて言語化していきました。次回は現場での実際をお伝えします。

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