ショートヘア
「飯田!」
「はい!監督!」
「お前は今日からショートだ!」
「……!!ありがとうございます、監督!俺、一生懸命チームの為に頑張ります!」
「ああ。頼んだぞ、飯田」
「はい!……あの、監督。それは……?」
「お前に使うバリカンだが」
「え!ウチの野球部って丸刈りなんてしてないじゃないですか!ウチの野球部はロン毛オッケーで有名な野球部、むしろロン毛じゃないとどこか浮いちゃうくらいなのに…どうして!」
「今までスタメンではなかったお前は知らないかもしれないだろうが…実は、スタメンはそれぞれのポジションに応じた髪型をするのが、代々我が部のしきたりなのだ」
「え!そうだったんですか?でも傍目には皆ロン毛にしか…」
「ヅラだ。普段はロングのヅラを被っている」
「どうりで!スタメンの皆はなんかいつも頭痒そうにしてると思ってたんです!ちゃんとシャンプーしてないのかと思ってたらヅラで蒸れてたんですね!」
「理解が早いぞ飯田」
「…あの。例えば皆本当はどんな髪型に…?」
「センターの大野はセンター分けだ」
「じゃあライトの草間先輩は右分け…?」
「そう言う事だ」
「じゃ、じゃあ僕のこの自慢の踝まで届くこの黒髪は…」
「ショートヘアになるな」
「……そ、そんな!!」
「どうする?ショートヘアになるのがイヤならこの話は無かった事になるが?」
「ぐっ……!!」
「どうする、飯田」
「………やります…!俺……ショート、やります!!」
「飯田~~!!」
「監督~~!!」
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