蛙谷んこ
ランダムで流れて来る今日のお題を10分で書き上げる企画です。
AIが自動生成した絵画を上げてくれるサイトがある。 このサイトに日々上げられる絵を実況してどんな絵に見えるか 説明して、自分の脳内を文章化していく特訓にしたいと思う。
思いついたけど、思いついただけのネタ。 今のところこれ以上どうする気もないので、このネタ使えると思った方はご自由にお持ち帰り下さい。
私は高校の教師だ。 ひとつ奇妙な事がある。 それをご紹介したいと思う。 2-6のクラスの黒板だけ、いやにチョークの乗りが良いのだ。チョークが良く走ると言うか、ついつい力がこもってしまってもチョークが折れない。私はチョークを折りがちなのだが、不思議と2-6で授業をした時には折れた事がない。 また、チョークだけではなく授業の進行自体もスムーズなのだ。いや、2-6の不名誉の為に言っておくが、2-6は決して扱いやすいクラスではない。他の先生方も2-6には手を焼いていると言う話をよ
「ジョロゲ」 「オグエノ。おはよう」 「おはよう。また来たの?」 「うん。何か良いのないかな、って…」 「ある訳ないと思うけど」 技術の発展により、多くの人間が自身の理想の姿であるアバター、つまりバーチャル世界での肉体を手に入れた。それは性別も、人種も、種族も、生物の枠さえも飛び越える、自己表現の為のアイテムとして広く普及した。ただしそれはあくまで先進国での話である。 隔絶の時代を乗り越えて、人々は直接対話をする事と同様かそれ以上にバーチャル世界での対話を重要視す
「先生、出来ました」 「おお、今日も出来たか金子。今日のお題はなんだったんだ?」 「はい、今日のお題はコレでした」 「………念の為に聞くぞ、金子。これはなんと読む?」 「先生、僕を馬鹿にしないでください。同じ轍は踏みませんよ。それは『黒髪(くろかみ)』です」 「そうだ金子! お前は前回『長髪(ちょうはつ)』を『長髭(ながひげ)』と間違って読んでいたからな! その反省が活きたな!」 「はい先生。僕は日々進化しています」 「ははは。黒髪が読めるようになったくらいで進
12月31日 日中 「今から出してもどうせ明日には間に合わないだろうけどな………――ああ、喉痛い…」 昨夜から突如始まった女性化猛特訓のボイスレッスンの無理がたたって痛めた喉をさすりながら、柿崎は通りにあるポストに年賀状を投函していた。それは両親へ宛てたものだった。 柿崎は、たとえ今回の計画が上手く行かなくとも次への希望は抱かず、自殺するつもりでいた。不退転の覚悟で挑む、一回限りの、命をかけた大舞台。だからこそ輝ける生の美しさがある筈だ。勿論、何もかも上手く行って莉奈に
公園に忘れられた帽子がある。 それは野球帽だった。 公園はもう日が沈む。黒字にオレンジでロゴが入ったその帽子は、夕闇に紛れてしまう。 遂に日が沈んだ。壊れた電灯しかない公園は、近くの家の灯りだけが届く。時折公園の前を通る車のライトが強く、鋭く公園の中を照らし出す。それでも、誰も帽子には気付かない。 忘れられた帽子は、闇に紛れて誰にも見つからない。 帽子は誰の頭の上にも乗らない。 帽子は、今はどこにも居ない。 帽子は今は、帽子ではない。 孤独とは、自分と言う存在の枷から
3月2日 日中 「まったく! いい加減にして下さいよ! 彼女、殺人をしてしまったんですよ!」 「大変申し訳ございませんでした。恋人さん、容態の方は如何ですか」 「酷くショックを受けてるに決まってるでしょう! 人殺しですよ、人殺し!」 「…と言うよりは、柿崎さんの幸福実現に加担してしまったと言う自責ですよね」 「……!! ええそうですよっ! もう昨日からずっと「ごめん」の嵐です!」 「重ねてお詫び申し上げます。今回の件は、全て私の一存によるものです。柿崎さんのお申し
某月1日 日中 「…こんにちは。特区へようこそ。宮前です」 「…宮前さん! 会えて嬉しいです! 私、ずっと会いたかった…!」 「そうですか。それはどうも……あの、早速ですが書類をお預かりしますね」 「はい! あとこれ、宮前さんにお手紙書いて来たんです! 読んで下さい!」 「いや、こう言うのはちょっと…って言うか、ですね、……お話があります吉川さん」 「はい? なんですか?」 「私には恋人が居るんです。その人はとても繊細な人で、不安になりやすい人なんです。だから、
「執事ってさ」 「あん?」 「いや、執事っているだろ」 「ああ、セバスチャンとかそう言う感じの、な」 「そう、そう言う感じ」 「それがどした」 「ああ言うのってどう思う?」 「ぁあ?」 「いやだから、ああ言うなんか、話の中に出て来るような、主の為に忠義を果たします、みたいなさ」 「くっだらねぇ」 「馬鹿げてる?」 「だってそうだろ。仕事だぜ仕事。単なる仕事。何が主の為に、だ。金で雇われてるだけで命まで懸けられるかっての」 「話の舞台設定によったら、雇わ
某月28日 日中 莉奈でなければ駄目なのか。 莉奈に愛されなくては駄目なのか。 莉奈に殺されなくては駄目なのか。 柿崎はずっと苦悩していた。だが莉奈を否定しようとすればする程、心は莉奈を求めていった。自分の中の妄念が、まるでとぐろを巻く蛇のようにその場から動こうとしなかった。 そもそも莉奈の何にそこまで惹かれているのか。 柿崎は莉奈の何を知っている訳でもない。 ただ出会って、宮前の恋人だと言う事すら忘れて一目惚れをし、そして、殴られた。 一目惚れをしてしまった事は否定
「先生、できました」 「ああ、毎日お題に沿って小説を書いて行くと言うのも、書く練習になっていいだろ、金子」 「そうですね。何はなくとも書いた、と言う実感も沸きますし」 「10分で書く、と言う制約もいいだろ」 「そうですね。とにかく手を動かす、考えた事を如何にまとめてアウトプットするかと言う訓練にすごく良いです」 「うんうん。それなら良かったぞ、金子」 「この、箱。この中に先生が書いてくれたお題が入っていて、その中からくじを引くようにして、ランダムに選んだお題につい
某月25日 日中 その日は、通りである事件が起きた。有り体に言ってしまえば、殺人事件だ。 最初に包丁で脚を刺されたらしい男性が大声で助けを求めながら通りに飛び出して来た。その後ろから急がず慌てず、けれど歩みを止めず、包丁を持った女性が後を追う。脚を刺されたせいで上手く走る事が出来ない男性は、痛みに耐え切れず転んでしまう。そこに、追い付いた女性の追い打ちが入る。包丁は男性の腰に刺さった。 そんな騒ぎを聞いて、何事かと歩みを止める人間、通りに出て来る人間、家の窓から見る人間
ゆらめく炎に包まれて。二人は森の中で夜を過ごす。女は男に言いたい事があり、男は女に聞きたい事があった。しかし女はそれを言い出せず、男はそれを聞き出せずにいた。 バチバチと、薪が音を立てる。虫の音と、風で揺れる木々の揺らめきと、月明かり。二人は静寂に包まれていた。けれど、その静寂は重い。出来る事ならその重さから早く抜け出したいと二人は思っていた。 夜はまだ長い。言いたい事があるならいくらでも言える。聞きたい事があるならいくらでも聞ける。それでもその一歩、相手の心に踏み入るま
ある地方に伝わる風習をご紹介しよう。 それは「養子足組み」と呼ばれている。 「養子縁組」ならば聞いた事がある読者も多い事だろう。血縁関係にないものが法律上の親子になる事だ。 だが「養子足組み」は膝小僧。 血縁関係にない者同士の膝小僧が法律上の「膝親子」になる制度である。 膝親子とは何か? それはお互い困った時に膝を貸し合う関係性の事である。 夜中突然、無性に膝枕して欲しくなった時はないだろうか。そんな時、養子足組みをしていれば膝を貸して貰えると言う訳だ。親子なんだか
某月20日 日中 柿崎は街を歩く。あてどもなく歩く。ただ、考え事をしたかっただけだ。歩くと不思議と考えがまとまる。5日前の出来事を思い出す。 これから自分がどうすべきかを考える為にも、それは必要に思えた。 結局、「会って話したい」と言う鶴橋に根負けした柿崎は、直接顔を突き合わせて別れを切り出した。お互いにパートナーになれなかったと言うだけで、どちらかがこの街から出て行く訳でもない。狭い町の中だ。また顔を合わせる事もなくはないだろう。そうなった時の気まずさを減らす為にも、し
季節が巡って 新しいものが芽吹く日 そんな日はいつも決まってあの曲を聴く わたしは あの頃から少しは変われたはず 夕暮れの公園で あなたと二人だけだと そう思っていたあの頃 他には何も見えなかった 夜の公園で ぎゅっとつないだ左手 今までも私の左手は あの頃の熱をまだ覚えているよ 季節が巡って 新しいものが芽吹いても 私は 眠り続けたまま 重たい目を 開ける事がずっと恐かった 夕日が沈む屋上で あなたは笑ってくれた なのに私は まちがえて あなたを
某月15日 日中 カラオケボックスの自宅。柿崎はテーブルの上で通知を何度も告げる携帯端末を眺めて考え込んでいた。 連絡して来ている相手は鶴橋。あの日は結局泊まり、翌日も一緒に過ごした。とても幸せだったと思う。だが同時に、本当にこれで良いのだろうか、と言う問いが柿崎の頭の中にこびりついて離れなかった。だから、また会おう、と連絡してくる鶴橋に対して返事を出来ずにいた。柿崎は頭を抱えた。 柿崎は小さい頃から「死」を見るのが好きだった。小さい頃なら多くの人に経験がある事だとは思