黒髪
「先生、出来ました」
「おお、今日も出来たか金子。今日のお題はなんだったんだ?」
「はい、今日のお題はコレでした」
「………念の為に聞くぞ、金子。これはなんと読む?」
「先生、僕を馬鹿にしないでください。同じ轍は踏みませんよ。それは『黒髪(くろかみ)』です」
「そうだ金子! お前は前回『長髪(ちょうはつ)』を『長髭(ながひげ)』と間違って読んでいたからな! その反省が活きたな!」
「はい先生。僕は日々進化しています」
「ははは。黒髪が読めるようになったくらいで進化とは大きく出たな金子。だがそうだな。新しい知識を取り込んで身になっていることは確かのようだ。では、今日のお題『黒髪』で書いたお前のショートストーリー、読ませてもらうぞ!」
「よろしくお願いします!」
黒い髪。
艶やかな黒髪が印象的なあの人。
いや、艶やかかどうかは分からない。
だってあの人はスキンヘッドだから。
艶やかなのはあの人の光り輝く頭部だ。
けれどあの人はちゃんと毎日スキンヘッド。
定期的に剃らなければスキンヘッドは維持できない。
つまり、あの人は頭部にきちんと時間と意識を割ける人。
そんな人が髪を伸ばしたら、その髪はきちんと手入れされた艶やかな黒髪であるに違いない。
だから私はあの人の艶やかな黒髪を、そのスキンヘッドから想像するだけでうっとりとしてしまう。
「……金子」
「はい先生」
「……先生をおだてても何も出ないぞ~?」
「うわっ!先生のスキンヘッドが夕陽を反射させて……まぶしっ―――」