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【C105 レビュー前編】 コミケに初サークル参加を決意するまで

コミックマーケット105(C105)、これが僕にとって初めてのコミケ参加、初めてのサークル参加となりました。C105レビュー前編となるこの記事では、僕がコミケにサークル参加することを決意した経緯や、同人誌のテーマをどのように決めたのかについて綴っています。後編ではC105当日の参加レポートをお届けする予定です!。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです!


コミケにサークル参加を決意するまで

高校生になったばかりの頃、深夜アニメという世界に出会った。それまで見てきたアニメとは異なり、どこか大人びていて尖った作品ばかり。なかには少し低俗な印象を受けるものもあったが、それも含めて魅力的だった。その独特の雰囲気に、僕は一気に引き込まれた。

『げんしけん』『ドージンワーク』『らき☆すた』—— そんな作品を通じて、「コミケ」という存在を初めて知った。登場人物たちが、自分の好きなものを自由に作り、共有し合う姿を見て、すごく羨ましいと感じたのを覚えている。そして自然と「コミケに初めて参加するなら、サークル側で参加したい」と思うようになった。「サークル側で参加するまで、コミケには行かない」という謎の決意までするようになっていた。

そんな思いから、僕はイラストを描き始めた。最初は好きなキャラクターの模写や、試しにオリジナルキャラを描いてみたりなど、手探り状態だったが、とにかく絵を描くことが純粋に楽しかった。

しかし、大学で数学科に進学すると、次第に数学そのものの魅力に取り憑かれていった。アニメは見続けていたし、たまにイラストを描くこともあったが、コミケにサークル参加しようという気持ちは次第に薄れていった。

大学院に進んだ頃、ふと立ち止まる瞬間があった。自分が本当にやりたいことは何だろう?このまま数学を続けていって本当に良いのか?

そんな折、ふらりと参加したアニメーション映画祭で、僕は大きな刺激を受けた。ポップカルチャーとしてのアニメだけでなく、アニメーション作家が手掛けた独創的な映像表現など、さまざまなアニメーション作品が連日にわたって上映されていた。

「こんなにも多種多様なアニメーションがあるなら、自分にも何かできるのではないか」。そう感じたものの、いまさらアニメーターを目指すには遅すぎる気がしたし、ここまで続けてきた数学を捨てる勇気もなかった。

その迷いの中、僕はアニメーション制作技術の研究という少し変わった切り口で、自分の立ち位置を探ることにした。制作現場に立つのではなく、研究開発という立場からアニメに向き合う道。技術や理論を通じて、アニメの可能性を広げる仕事。それが、今の僕が選んだ場所だ。

博士号を取得し、社会人になってからは、運よく希望通りの道を切り開くことができた。本当に運が良かったとしか言いようがない。

社会人になってからは、それまで以上にアニメについて学ぶようになった。制作現場の人々とコミュニケーションを取る機会も増え、SNSでもアニメ関係者と交流することが多くなった。

そして2023年の冬ごろ、アニメビジネスを研究しているはらぐちさんから、こんな誘いを受けた。「カワズさんも来年の夏コミに参戦しませんか?カワズさんの文章、純粋に楽しみです!」

正直なところ、仕事で手一杯で、二次創作したい作品があるわけでもない。もはや絵で勝負する自信もない。文章を書くにしても、仕事に関連しすぎる内容だと専門的すぎてターゲットが狭くなり、誰にも興味を持ってもらえないかもしれないという不安があった。

悩みに悩んだ末、2024年の夏コミはサークル参加を見送ることにした。振り返ってみれば、一般参加くらいはしてみてもよかったのかもしれない。ただ、参加を見送ったことで時間ができ、じっくり考える余裕が生まれた。どんなテーマにするかを悩みながらも、「仕事じゃないんだから、ターゲットのことは気にせず、自分が読みたいものを書けばいい」と、次第に肩の力が抜けていった。

そう思えた途端、気持ちは一気に楽になった。そして思い切って2024年冬コミ、正式名称コミックマーケット105にサークル参加を申し込んでみた。数ヶ月後、無事当選の通知が届き、高校生のころに憧れていた夢のコミケで、ついにサークル参加を果たすことになった。

これが僕がコミケにサークル参加を決意するまでの物語である。

サークル名、同人誌のテーマ

サークル名と同人誌の大まかな方向性は、比較的早い段階で決まった。僕は特に2Dルックのアニメーション表現に強い興味を持っており、それを全面に押し出したいと考えていた。以下のXのポストに要点がまとまっている。

サークル名に関して、ポストには書かなかったが、数学における複素平面の英語であるComlex Planeを文字るニュアンスも込められている。若干数学的な要素も織り交ぜたかったからである。

同人誌の具体的なタイトルはなかなか決まらなかったが、いろいろと模索しているうちに、以前から自分の中で整理しておきたい問題が一つあるのを思い出した。それは、近年話題になっている生成AIを利用したイラスト生成モデルで「アニメは作れるのか?」という問題だ。

結論を先に述べると、イラストデータで学習した生成AIでは、アニメを作ることは基本的に困難である。もっと正確な言い方をすればイラストと呼ばれるデータ群と、アニメと呼ばれるデータ群との間には大きなドメインギャップ(データ分布の違い)が存在し、そのギャップはちょっとした工夫では越えられない。結局のところ、イラストベースの生成AIが原理的に作り出せるものは、非常に限定的なアニメーションに留まるだろう、というのが僕の見解である。

しかし、このままだと単にお気持ちを表明しているに過ぎない。イラストと呼ばれるものが何を指しているのか、アニメと呼ばれるものが何を指しているのか、そしてその相違点はどこにあるのか。そこが明確にならないことには議論が単なる感想にとどまってしまう。

だからこそ、その点を可能な限り丁寧に深掘りする同人誌を執筆したいと思った。なにより僕自身がそのことを知りたかった。そんなわけで基本タイトルは『アニメとイラストの表現比較入門』に決定した。

執筆方針を練る中で、この同人誌の構成についても考えを巡らせていた。当初は1冊にまとめる予定だったが、アニメとイラストの定義や背景、表現の違いを比較するには内容が膨大になりすぎることが判明した。そこで、テーマを「アニメの定義」「イラストの定義」「表現分析」の3つに分割し、それぞれ独立した冊子として展開する方針に切り替えた。

1冊に統一感を持たせたかったという葛藤はあったが、分割することで各テーマを深掘りし、より多面的な議論が可能になると判断した。こうして『アニメとイラストの表現比較入門』は3部作として構成され、それぞれ独立して読める形ながら、一貫したテーマが流れる設計を目指している。

この方針が、内容の充実と読者の自由な読み方を両立できる選択になることを願う。マジで願います。

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