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よの27 あーびっくりした

私の場合よくあることなのだが。

誰もいないと思って
ひとりで事務所内で仕事をしている時に、
ふと人が現れると、思わずわーっと声を上げてしまうことがある。

こちらとしては全く予想していなかったので、
「あーびっくりした!」と、
思わず大声を出してしまうのだ。

脅かすなよ。心臓が止まるかと思ったよと。

ところが相手は、
驚いた私の大声に逆に驚いて、
「うわ、びっくりした!」となる。

そしてお互い
「いや~びっくりした~」となるのだ。


この場合、どちらのせいになるのだろうか。

よく相手は私を驚かせてすいませんと言ってくれるのだが、相手はただ普通に現れただけなのだ。
相手にしてみれば、いつも通り事務所に入ってきたところを、突然「わっ!」と驚かされたようなものだから、むしろ謝るべきは私のほうなのかもしれない。



この間。

私はオフィスビルの一室でひとり残業をしていた。
人の気配もなく、し~んとした部屋。

20時15分。
早く終わらせて帰ろう。

コピーした資料を取りに隣の部屋にいこうとドアをあけた瞬間、人がいた。

「うわ、びっくりした!」

と私は思わず大声を出した。
すると、相手は、うわっ〜!と心底驚いた声を出し返した。

そしてお互い相手を見て再び、
「うわ~本当にびっくりした~」
となった。

「ほんと、ごめんなさい。驚かしてしまって」
今回はすかさず私のほうから謝った。
「いえ、私のほうこそ、すいません」と相手。

そしてお互い頭を下げあいながら、別れようとした。

と、その時。

突然、警報器が鳴った。

「ジリリリリリ!」

オフィス中に大反響する。

あまりのタイミングに驚きはマックスとなり、私とその相手は、同時に「うぁ~!」と声を挙げた。

本当に心臓が止まるかと思った。
相手も腰を抜かすほど驚いている。

一瞬パニックになりかけたが、以前も何回か誤作動があったことを思い出し、
「たまにあるんですよ」
と相手に声を掛けた。

私と相手はお互い災難を共有して、ちょっとした仲間意識感のなかで、それでは、と軽く会釈し合いながら別れた。

相手は急ぎ足でエレベーターのほうへ向かう。

ふと私は、あの人誰だろう?と思った。

と、突然エレベーターが開き、中から警備員2人と警官1人が飛び出してきた。

その警備員達をみて先ほどの相手はとっさに逃げようとするが、あっという間に取り押さられた。

え?

まさか。

あっけにとられる私。

警官が私のところに駆け寄ってきた。
「お怪我はありませんでしたか?」
「は、はい」
「じつは凶悪犯の追跡中に犯人を取り逃がしてしまいましてね。こちらのオフィスに逃げ込んだところを駆けつけて取り押さえたというわけです」

え?きょうあくはん?

「お怪我がなくて本当に良かった」と警官。
「あの、凶悪犯って、ちなみにどのくらい凶悪なんですか?」
「ええ、それは結構凶悪ですよ。でも無事でなによりです。それではこれで。ご協力ありがとうございました」

警官は警備員と凶悪犯ともに去って行った。


なんだか。

ドラマみたい。

あっという間の出来事のあとの静けさのなか、
思い出したかのように、思わす声が出た。

あ~びっくりした~!



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kawawano


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かわわの
小さな喜びの積み重ねが大きな喜びを創っていくと信じています。ほんの小さな「クスッ」がどなたかの喜びのほんの一粒になったら、とても嬉しいなぁと思いながら創っています。