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綺麗事で回る世の中を

 綺麗事が素晴らしいと思うのは、それが正しいと感じるからではなく、それが正しいと感じると信じられるからである。綺麗事はプラスにならないかもしれないが、マイナスにはならない。少なくとも、綺麗事にまつわる人間の認識はそうである。綺麗事という言葉には確かにいいイメージはないかもしれないが、それを否定して他の何かを取るべきだとは誰も思わない。綺麗事とは常にそのような保険として機能し、だからこそそれは無くてはならない、誰も拒否できない存在となる。

 拒否できない。

 綺麗事と分かっていても、それを無くすことは困難だ。なのにそれは、毒にも薬にもならないことがほとんどであり、ある意味がない。重宝され、拒まれず、無駄なのに、無駄ではない。綺麗事で世の中は回り、しかし本当は何も進んでおらず堂々巡り。それをごまかすためにまた、綺麗事が使われる。
 綺麗事が素晴らしいと思うのは、そのようにして私たちに存在感を示すからである。それは不可欠だ。でも不可欠ではない。そのような不可思議な存在としてある綺麗事を、私たちは否が応でも注目せざるを得ない。

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