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子ども向けこそわかりにくく

 わかりやすいことと、子ども向けであることは異なる。なぜならわかりやすいことは、つまらないことと紙一重だからである。わかりやすいとは単純であること、すぐにすべてが見渡せること、予想が簡単なことなどを含んでいる。
 だからわかりやすいあらゆる物事は、まず、単につまらなくなりがちである。全ての答えが予め用意されていて、しかも最初から説明されているかのごとく見渡せる。ならばそれは、もはや見る必要も聞く必要もない。
 だから、その物事はつまらない。大人にとっても子どもにとっても。

 わかりやすいことが、必ずしも子ども向けでないことは、そのような理由による。結局、子どもだからといって単純なものが好きだとか、適しているというのは大人の勘違いでしかないのだ。むしろ子どもの方が、複雑さや混雑、わかりにくさに夢中になれるポテンシャルを持っている。そして、その混迷に付き合ってくれる胆力もあることが多い。
 そう考えると、子ども向けだからこそわかりにくさを。そして大人向けならばわかりやすさを。そういう物事の方が、もしかすると受けるかもしれない。子どもの方がわかりにくい物事に夢中になってくれるし、大人はわかりやすい物事を手軽に見聞きするのが好きになるくらいには、きっと日常が忙しい。

 わかりやすいことと、子ども向けであることは違う。それはむしろ忙しい大人のためにあるのだ。大抵の物事はわかりにくいものであり、わかりやすいのはむしろ特別である。
 その貴重な面白さを、単に子ども向けのためにあるものだと考えるのは、あまりにも浅慮だ。

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