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スタートアップのための展示会挫折録(こうやったら4,500万円損するよ♩)

もうだめだ。
意味なかった。
お金の無駄だったわ。
メンバー総出で3日間も頑張ったのに。。
出資してもらったお金、一瞬で溶かしちまった。。。

今でこそ、1回の展示会から、なんとか150件ほどの商談を作り出すメインマーケチャネルになりました。ここまでに「しなくていい失敗」をどの企業よりもしてきたように思います。

同じようにスタートアップとして頑張る人々や、そのチームがこうならないためにも、そして世の中の素晴らしいサービスがもっと世の中にキチンと広まるためにもnoteとして残しておくことにします。
逆に、「これと同じことすると、再現性高く失敗するよ」という情報万歳でいきますので良い子はマネしないでね。

あと、長いので、プロセスすっ飛ばして結論だけ知りたいっていう方は以下の結論のところからどうぞ。


自己紹介


2019年設立の弊社battonはオリジナルRPAの事業と、製造業・卸業の受注入力をAIでゼロにする「受発注バスターズ」の開発を行っています。

これまで、そりゃあ色々なマーケ手法に挑んできたのですが、それはそれでさまざまな失敗を重ねてきました。それをここに記載しようとすると大変なボリュームになってしまうので、また別noteで書いていきます。
今日は弊社のメインマーケチャネルとなった展示会について書いていくことにします。

これまで計15回の展示会に出てきた。

2024年9月現在、これまで計15回の展示会に出展してきました。
現在6期目に入ったばかりなので、平均年5回を約3年も繰り返してきたことになります。このうちの60-70%くらいは失敗してきていると思うんです。
あ、ちなみに、超絶リアルな数字の方が読者の皆様の役に立つと思うので、全て晒して書いていきます。まず、参加してきた展示会と来場者数、出展コマ数、かけた予算などはこちらです。

過去3年間での展示会出展実績


これ、計算してもらうとわかりますが、合計金額4,500万円以上です。。。
過去、1,000万円出資してもらうのにめちゃくちゃ苦労した時もあったのに4,500万以上使って、60-70%失敗て。
勉強代にしてはかなり高くつきました。
普通、PMFしきってから踏むよね、こういうのは。
実は、僕らが2つのプロダクトをもっているというのがこの辺の「踏んできた」経緯でもあるのですが、それは追って説明していきます。

きっかけは静岡銀行さん

きっかけは静岡銀行さんにお声がけいただいたTECH BEAT Shizuokaというビジネスマッチングイベントです。まだこのようなイベントに出展したことのない僕らが、出てみようと思ったのは、、、無料!だから。
静岡銀行さんが地域の企業とスタートアップ企業などを結びつけるキッカケとして、スタートアップ側は基本無料で出れると!?
マジすか!ほんとに無料すか!?しずぎんさんすげ〜!神!!!
ということで、本当に静岡銀行さんが持ち出しでやっているこのイベントに出なければ展示会というチャネルに触れることがなかったでしょう。
本当に感謝しております!

TECH BEATShizuoka2021

2021年の1月にこちらに初参加させていただきました。
当時は展示会というものに触れたことがなく、ノウハウもなければ、何をどう準備していいのかもわからず、もちろん写真もありません(コロナでオンライン開催だったのもある)。

にも関わらず、とても多くの来場者の方々とお話しできました。
これは、静岡銀行の皆様が地域の企業と繋いでいただいたり、ご紹介いただいたことで実際に商談も発生したという経緯があります。実際に県内2社(うち1社は地域大手)がRPAのお客様となっていただきました。

これを機に社内で「展示会いけるんじゃないか説」が浮上。
まだ本格的には検討しないものの、「ワンちゃんあり」的なモメンタムがつくられていきました。

展示会での副産物

そして、コロナが明けてきた2022年7月、ようやっとオンライン開催から久しぶりにオフラインでの開催があるとのこと。2つ返事で参加を決定しました。

前回で展示会とはどのようなものかを体感しつつあった僕らですが、オフラインは初めて。今度は準備物としての対策が必要そうです。

過去に新卒採用コンサルで務めていたことのある川人(僕)は大きな会場で新卒採用の合同イベントのプロデュースなどをしておりました。
そのイメージもあり、
・服装は一番の広告になる
・展示会を歩き回る人が、他社のものも含めてチラシ・パンフレットを入れられる大きなバッグがあれば、それも広告になる(具体的には、肩にかけられるくらいの大型トートバック)。
・いかに集客できるかが成果を分ける
このように考えていたわけです。

2022年7月 TECH BEAT Shizuoka

この時の失敗のひとつとして、
「想定より紙袋小さ!」
です。

上の写真をご覧ください。
全然肩にかけられません。
また、持って歩いてもらうことを想定してデザインにしたのですが、来場者から「ふり切り過ぎていて、持ち歩くのが恥ずかしい」とまで言われました。

僕らの方が恥ずかしかったです。
在庫2,000個。オフィスに段ボールの山が積み上げられました。。。

また、ブースデザインも今となっては
「インパクト<何をしているかが1目でわかる」というルールに従い、ブース設計などをするのですが、当時はそんな経験値積まれていません。
ブース壁面も、紙袋もインパクトを重視したデザインにしてしまっていました。
結局、ブース前を通る方にこちらから声をかけて説明しなければ自社がやっていることをわかってもらうことができなかったと思います。

この時は直接的に顧客につながるような商談は得られませんでしたが、一方で、この時は会社にとって大きな収穫がありました。

それは
「社内を巻き込み、大きな方向性を組織に浸透させるキッカケになる」
ということです。

当時、弊社では2つ目のプロダクトを作っていこうと注力しておりました。
いや、弊社で、というよりかは、僕だけ盛り上がっておりました。
お客様先にインタビューや丁稚奉公をして現場の課題を抽出し、仮説検証をしていた頃です。お客様の反応や、現場での課題感を見て、一定の手応えを感じていました。

一方で社内はそれを直に見聞きしたわけではないので、同じ温度感になるわけがありません。正直、社内に第2プロダクトの構想を伝えても「まあ、そうだよね。」的な感触しかありませんでした。
そこで、ランディングページを作るときのようにドライテストを行うことを思いつきました。まだプロダクト・サービスができていない(開発すらしていない)時にチラシを作成して、展示会で配ることにしたのです。
実際に展示会でお話ししてみると、反応がいいどころか、すぐに提案して欲しいという企業やデモを見たいという企業、既存システムの連携についての質問など「プロダクトがあれば案件化していただろうに」という状況をつくることができました。
この手応えを一番感じたのは僕ではなく、一緒に展示会に行ってくれたメンバーです。
「すぐに開発に取り掛かりましょう!」
メンバーのこの一声で本格的に事業が動き出すことになります。
そして、この事業が会社の方向性を大きく変えていくことになります。

何かしらの手応えを感じた我々はその後、関西ものづくりワールド(製造業がターゲットなんじゃね?という感覚)、Ceatec(製造業の人たち、これよく入ってない?という思い込み)と連続して出展します。
もちろん、各数字をとってPDCAを回すなんてことはできていないため、成果を正確に把握することができずに他展示会に挑んでしまうのでした。

ちなみに、今でこそブース装飾は社内であ〜でもない、こ〜でもないと議論をするのですが、この時は以下ご覧のようにツンツルテンでした。

写真は前日です。ちなみに、当日も同様です。
Japan IT Week 秋 2022

当初は「画面に色々映せば、ブースの装飾なんていらないっしょ」という攻め気味な妄想で出展を決定。結果的に、主催者が見かねてA4にプリントしてくれたキャッチコピーを印刷してくれて、それを柱などに貼るという応急処置をいたしました。
そもそも、画面を見るところまで人を惹きつけないと、ブースに近寄ってくれることすらありませんでした。
通常、このような写真を撮る際はブースが賑わっている時です。上記写真が撮られているということは、座っている人が2-3名、立って聞いている人が2名だということを示しており、且つそれが「賑わっている」という定義になってしまっていたという何よりの証拠でした。

それだけでなく、ブースの位置も最悪です。この時はお客様が会場に入ってだいぶ奥まで見にいかないと僕らと出会うことはできない構造になっていました。
でも、ブース位置によって出展料が異なる(正確に言えば、当たり前に、大きいコマの企業が大通り沿いに出展できるようになっている)ので、すぐに大きな投資はできません。

とは言え、どんなツキがあったのか、ここからエンタープライズの企業が商談となり、受注にまで繋がり、弊社を代表する事例にまで繋がるとは思いもしませんでした。この時に、ブースの装飾や出展位置について、もっと考える必要があるんだと内省しました。

時を同じくして、よく展示会会場で見かけていたのが、弊社に出資していただいているGazelle capitalさんの別の投資先であるanyさんでした。

anyさんはQastというナレッジプラットフォームを開発している会社さんでして、既に55,000名に使われている先輩SaaS企業です。
Gazelle capitalさんに繋いでいただき、代表の吉田さんに展示会のノウハウなど含め、ヒアリングさせていただけないかと打診させていただいたところ快諾!!
かなりこの時に聞かせていただいた内容を現在も踏襲しています。
初めて、どのくらいのKPIを置くべきなのか、何を優先して実施すべきなのか。
マネでもいいから展示会の型を意識した瞬間だったと思います。
今でも会場でanyさんを見ながら参考にさせていただいています。
anyさん神!!吉田さん神!!!
https://twitter.com/kazufumi0110

これをきっかけに2023年の春のITweekにはブース装飾を本格的にやろうというモメンタムが巻き起こりました。
また、前回から開発をしていた新サービスである「FAXバスターズ(現在は受発注バスターズ)」を全面的に打ち出していくタイミングでもありました。

ブース装飾は金がかかる

ブース装飾というのは、その時用にデザインをしてもらって、作ってもらって少なくとも凝ったものでなくとも80-100万程度がかかってきます。
コマ(地代)だけでも100万、200万とかかるのに、それに上乗せしてもう100万。もしも配布するグッズや衣装、コンパニオンさんなども揃えるとなると相当な費用になるわけです。しかも、装飾って木材などでできており、展示会の3日間が終わるとその場で解体してぶっ壊すんです。機械でバキバキにされていく木材をみながら、この時代に全然サスティナブルじゃない!と感じていました。

そんな時に出会ったのがコンバートコミュニケーションズさんです。

総合広告会社さんのような立ち位置をされてらっしゃるんですが、その中でもブース装飾が際立っていました。僕らが展示会に出展するように、コンバートさんもブース出展。自社のブースが凄すぎて、引き込まれていきます。
まず、今まで見た中でどこにもなかったような装飾。
そして、ブースが段ボールでできており、プラモデルのように組み立てと解体ができ、繰り返し使えるということでした。それにより、1回で作り込む料金はあまり変わらないですが、何回も展示会に出るのであれば、コストが圧倒的に安くなるということに気がつき、即決。僕らは同じブースを7回も8回も使い回すことができるようになりました。こすりまくってます!

当時はFAXバスターズ=ゴーストバスターズのように車に乗ってやってくる。
FAXなどの複合機を墓場までもっていき成仏させる。
ゴーストバスターズに見立てて、全員ツナギを着用する。
このようなコンセプトに従い作ったのが初めてキチンとブース装飾をした時だったかもしれません。

段ボールでつくられたブース装飾。折り畳みができるので、何回でも使用できる。

これまでのブース集客は、「集客人数を揃え、トークを磨き、声がけで集める」という考え方でやってきました。ところが、ブースを変えることで「興味がある方が自ら発見し、集まってくる」という考え方に大きくシフトチェンジをすることができました。無理やり声がけで集めるのではなく、自然に集まるブースに変わってきたということです。これは方針が180度転換された瞬間でした。

どの展示会に出るべきか

こうしてやっと形になってきて、一定の反応を得られるようになってきた僕らは
「どの展示会に出るべきか」を意識するようになってきました。

上記でも触れているのですが、さまざまな種類の展示会に出る中で、成果が出やすいものと出にくいものがありました。数字というファクトが物語っています。僕ら、限られたリソース(人やお金)の中では優先順位をつけることはもちろん、一番効果があるものにリソースを集中させなければなりません。
そこで、改めて数字を見返したところ、以下2点にまずは集中することにしました。
Japan IT Week
DX総合EXPO
これまで本当に安いものから、がっつりとお金がかかるものまでやってきました。
そこで出た結論としては、金額と成果は相関する(ある程度は)。

当たり前ですが、展示会の主催者側も来場者の集客をするわけで、その集客にかかる費用を捻出します。当然、金額が高いところはその中から集客に当てられる費用も多くなりますし、逆に金額が安いところは集客に当てられる費用は限定的になります。
いくら安い展示会に出たとしても、ブースに、もっと言えば会場にターゲットがこないのであれば0円だとしても高い出展費用(出展に関わる人件費や時間がロス)だということになります。
僕らはことごとく、安さで選んだだけの展示会は失敗(成果に全く結び付きませんでした)しました。

コマの場所・大きさどうする問題

また、どの展示会にでるかと同じくらいに重要だと思っているのが、「どのコマに出るか」です。これはコマ数もあるのですが、会場の中で奥まっているところなのか、大通り沿いなのか。3面開放なのか、2面なのか。入口付近かどんつきなのか。いろいろな見方ができます。
当初はコマの大きさをどうするかは大きな悩みどころでした。なぜならば、これによってかかるコストが大幅に変わるからです。Japan IT Weekであれば0.5コマで50万円ほど(主催によってコマの定義が異なります)。DX総合Expoでも大きさと単価はあまり変わりないです。
当初はこの大きさによって、どれくらいの差が出るかと思っていたのですが、それ以上にコマの場所の方が成果に影響してきます(この辺も上記、anyの吉田さんに教えて頂きました)。
当然、いい場所には大きなコマしか販売がありません。いい場所でチャレンジするには必然的にコマも大きくしていくことになります。
当初、Japan IT Weekは2コマからスタートしてきましたが、最近は3コマで出展しています。コマ数によって場所がどのくらい異なるかは以下をご覧ください。

Japan IT Week2022(2コマ)全会場の奥中の奥!人通りなし!
Japan IT Week 秋 2023(3コマ 入口からのメイン通り)
Japan IT Week春 2024(3コマ)
DX総合EXPO夏2024(3コマ 入口からのメイン通り)

費用対効果をどうみるか

もちろん、ブース位置にこだわると、いい場所はコマ数が大きい設定になっており、それなりの費用が発生します。

費用例

例えば、2コマと3コマでは出展料だけでも100万ほどの違いがでます。
それでは、実際に同時期(1年違い)で出た2コマと3コマでの違いを見てみましょう。
Japan IT Week 秋 2022:2コマ 出展コスト約339万(コマ料、ブース装飾)
Japan IT Week 秋 2023:3コマ 出展コスト約562万(コマ料、ブース装飾)
1コマ違うだけでも、ブース装飾費用も増えるので、結果的に1.65倍(223万の差)のコストになっています。もちろん、配置する人員もその分だけ必要になります。

効果例

上記に対して、どのくらいの効果に違いがでるのでしょうか?
効果を図るKPIは色々とありますが、僕らは現場で設定できたアポ(商談)の数で見ています。
Japan IT Week 秋 2022:2コマ 設定アポ数 25
Japan IT Week 秋 2023:3コマ 設定アポ数 48
こちらは1.92倍の差となりました。
商談からの受注率が20%だとすると2コマの時で5社受注、3コマの時で10件ほどの受注に繋がる計算になります。

現在で言えば、弊社のARPAが360万/年だとして、5件の違いが出るとなると1,800万円/年の違いを生み出すことになります。これを223万上乗せすることで獲得するというゲームになります。
コマ数(というか場所)によって、これだけの違いが出るのであれば、コストをかけてでも良い場所をとりにいくという判断になるわけです。

色々な人に助けていただく

この頃に、さらに大きな出会いがありました。
Xを見ていた時に、営業や展示会について、キレッキレの発言を投稿している人を発見。

早速DM打診。オンラインでもお時間を頂きました。この匠さん、めちゃくちゃノウハウの宝庫でした!展示会のコンサルティングなんかも行ってるんですが、現場でコンサル先のブースなんかを見ても学ぶことばかり。。。
※ちなみに、匠さんがどんなことやっているかはこちら↓


僕らの展示会はanyの吉田さんと、匠さんのアドバイスでできているといっても過言ではありません!
Xの投稿だけでも気づきがあるのですが、特に匠さんのアドバイスによって大きく変えることになったのが、ブースの見せ方です。

「何をやっているか」がわかること。これっきゃない。

途中、ブースデザインをキチンとやり始めてから集客ができるようになってきました。それに伴い、ブースデザインを目立つようにしたり、凝った方がより集客ができるのではないのかという仮説を立てるようになりました。
この考え方は展示会スタート時点からもっていました。
のぼりに始まり、壁面デザインを自分たちで作ってみては、クオリティの低さに作ったその日に捨てたこともありました。
しまいには「何か、にぎやかな祭り」のようなブースづくりがしたいという思いから社内会議が盛り上がり、その流れで射的をつくったこともあります。
社内会議で話しが盛り上がっている時は、気持ちがとても充実していてなんでもうまくいく感が出てきます。
ところが実際に現場に設置してみると、
「跳ね返った球が他の通行者にあたるのではないか」
「うつ時の音が大きすぎるのではないか」
「主催者に止められるのではないか」
などなど、大きな不安もよぎります。

渾身の盛り上がりとノリで作ってしまった射的例
「本当は自社の課題を打ち抜いちゃってください!」というオペレーションのはずだった。。。

実際に展示会がスタートするとこの不安も消え去ります。
お客様をブース内にご案内し、デモ・プレゼンを行い、それどころではありません。
結果、テストで展示会前に打った射的は、現場で一度も放たれることなく、ただの飾りとなっていました。というか、むしろ射的を設置したことによりブース内もその分狭くなります。

・・・邪魔・・・だな。。

こうして、あれだけ盛り上がったお祭り射的案は一度試すのと同時に廃棄となりました。。。

この時に匠さんからいただいたアドバイスが

「一言で何をしている会社なのかがわかった方がいいですよ」

ということでした。
シンプルで当たり前なことですが、一番重要なことでした。
これまで自分たちが行ってきたブース装飾は以下のような前提条件で考えてきました。

  • とにかく目立て

  • 他社と違うことをして差別化を図る

  • 頑張って集客して1人でも多くの方々と話す

これって、かなりの思い込みなんです。来場者の方からすれば、ブース前を通る際にどんなに目立っていて、他社と差別化されていても「何をやっているかわからない」状態では話すを聞く土台にすら乗りません。
だからこそ、僕らが協力に声がけをしていかなければならない。
さらに、いくら看板を大きくして「受発注バスターズ」と書いたとしても、それでも外からみるとなんの会社かわからないというわけです。
また、高さがないと遠くの人から発見してもらうこともできません。ある時はブースの中がスカスカ過ぎて、奥にある他社ブースの一部と思われて通過されるような虚しい体験もしてきました。

「集める」ブースから「集まる」ブースへ

このアドバイスをきっかけに、顕在化しているお客様ニーズを言葉にして、さらには遠くから見てもわかるようにブース装飾を変えました。
奇を衒うのではなく、とことん来場者目線になってわかりやすい一言を柱にする。また、遠くからでも見えるように高さを出し、それを斜めに配置。
これにより、お客様が自ら見つけてくれて、興味をもってブースに入ってきてくれるようになりました。これまでの集客の努力はなんだったのかと思うほどのスムーズさ。もちろん、そのような来場者の方はその後の商談設定、案件にもつながります。こうして、集客の部分いついては一定の効果が得られるようになりました。

【失敗例】ブースに凝り出した当初。目立つことと差別化ばかり考えていた。
【失敗例】高さもないし、中もスカスカでなんの会社がわからない。
一言でわかるような柱を立てる(現在)

集客では何を配るべきか

これまでスタートアップ業界では、「展示会の集客では、じゃがりこが効く」という都市伝説がまことしやかに囁かれています。
なぜ、じゃがりこ?
というのはもちろんそうなんですが、それで集客につながるのであれば弊社も試してみたいです。これまで弊社では以下のお菓子を配ってみました。
・餅太郎
・ヤッターめん
・蒲焼さん太郎
・うまい棒

展示会配布物 餅太郎
展示会配布物 ヤッターめん
展示会配布物 蒲焼さん太郎
展示会配布物 うまい棒

結論。
どれも効果は変わらない。
このお菓子は◯◯の反応があって、、、とご説明したいところなんですが、あまり配布物を変えたところで意味はなかったです。
というより、僕らがKPIをリード獲得から商談獲得に切り替えたタイミングで、こだわらなくなったという方が正しいかもしれません。
それより、集客する時は

  1. 遠くから弊社の強みが見えている

  2. 目線をとる

  3. 目線を落としたタイミングで声をかける

ということの方が効果があります。現在はお菓子配布をやめ、その代わり、手持ちの看板を作成して集客しています。手持ちにすることで高さが出せ、また動いていますので来場者の目を止めることができます。
目を落としたタイミングでお声がけをすると話しを聞いてもらえる確率があがります。例として以下の動画をご覧ください。

地方はどうか?

展示会を数をこなしていると、だいぶ再現性がとれるようになってきました。どの展示会に何コマで出るとどのくらいのリードがとれて、そこから商談にどれくらいにつながるのか。
ところが、僕らが絞り込みをしたJapan IT Weekは春に1回、秋に1回。DXEXPOも冬と夏と秋です。そうなると年間での展示会から生み出すことのできるMRRの天井も見えてきてしまいます。
そこで検討し出すのが地方(名古屋や大阪など)の展示会(同イベントの地方開催)です。

こちら、見ていただくとわかるのですが、来場人数が東京の4分の1程度。それでも東京と同じコマ料です(昔と比べ、今の方が装飾にお金をかけていますので、その分も合計)。明らかに強気な展示会主催会社を横目に見つつ、それでもチャレンジしてみました。

来場者数は1/4程度にも関わらず、値段は同じ。出展企業もその分減るからか、そういうビジネスなのか。

結論、費用対効果は悪いです。まずは東京で筋肉質な状態(同じ費用でさらなる結果を出すためにオペレーションや装飾などを磨く)をつくった上で、それでも、もう東京は出すところ全部出して、他に出すところがない。そのような状態でチャレンジすべきです。
僕らの場合は、数々の失敗を経験してきて、さらにプロダクト全体のARPAをあげてきている(展示会出展当初の頃が¥49,999/月→2024/7で¥315,000/月)ので、損益分岐点がだいぶ低くなってきている(1-2社受注すればpay)のもあり、チャレンジにいたりました。ただし、このチャレンジによって、運営として大きなものをゲットすることになります。

訪問してみる

2024年1月の大阪でのチャレンジのこと。会場来場者数が限られているので、自分たちも人員を4名まで縮小して挑みました。その際、これまでやってこなかったことにチャレンジしたのです。
通常、展示会と言えば、ブース前を通る方々に声をかけ、プレゼンを聞いていただき、名刺や現在はQRコードをゲットします(プレゼンを聞こうが聞くまいがこれはします)。そして、後日、ゲットした個人情報にインサイドが連絡をしてアポを取りに行くというのが通常のフローかと。

この頃、僕らはCCC(キャッシュコンバージョンサイクル:お金が出ていって入ってくるまでの期間)をなるべく短くしようというプロジェクトを進めていました。
そのため、展示会で接触してから実際にアポになるまでの時間を短くしようという施策を打ちました。それが「その場でアポ」です。
個人情報をとって終わらせるのではなく、その場でアポをセッティングしていこうと。
特に地方の場合「訪問します!」というと、「わざわざ来てくれるなら時間とろうかね。」という流れになることをこれまでの経験から感じていたので、大阪でもこれを発動。展示会の翌週・翌々週を関西でのホテル暮らしとし、一気に訪問アポを周る作戦にしました。
この施策を初めて行なったところ、3日間で40社以上のアポを獲得。営業メンバー2名で泊まり込みで大阪のフォローをする流れができました。

ゴールの変更

これ以降、僕らのKPIの取り方を大幅に変更することにしました。
まず、ゴールを「リードの数」から「商談設定の数」へと変更。

現在の展示会のKPI

S:次回商談決定済み
A:商談承諾(日程調整中)
B:一旦持ち帰り(アポとれず)
C:対象外

トークを統一せよ

新しいKPIを設定すると、運用の中での力の入れどころが変わってきます。
まず取り組んだのが、プレゼンの際のトークの統一です。
正直、多くのS(商談確定)を取得できるメンバーとそうでないメンバーの差が大きく開いていました。
そこで、一番とっている人のトークとプレゼン資料を元に全員で統一。毎週ロープレを行い、一言一句、同じ話ができるように揃えました。

また、1トーク5分以内というルールも作りました。
展示会は約3日間あります。
が、その間、均等に来場者がくるわけではなく、だいたい3日目が一番多く、
1日の中では13-15時がピークとなります。
そうなると、ピーク時間になるとプレゼンターのテーブルが埋まってきてしまいます(だいたい6-8名)。人的リソースが限られていますので、プレゼンターの人数を簡単に増やすことはできません。
そうなれば、回転をあげるしかありません。1トークを長く話そうが、短く話そうが、結局は別日でアポをとるのです。
であれば、1トーク5分で話して、アポ打診をする。

仮アポを取得せよ

さらに展示会の経験値をあげ、分析を続けていくと、社内で数字が良い人とそうでない人の違いも明らかになってきました。以下の2つの溝です。
S:次回商談決定済み
A:商談承諾(日程調整中)
B:一旦持ち帰り(アポとれず)
現場でもちろんSをとりに行き、日程が確定できない場合はAとなります。
が、数字の取れている人は、通常AになってしまうところをSにしているのでした。

「社内戻って日程確認しますね。」
「他のメンバーもいるので、確認してみます。」

多くの場合、このようにお客様から言われた場合、そこで終話してAとなります。
ところが、いざAから調整して後日調整しようとしても、一定数はかならず未調整のまま話が流れていってしまうのです(ISの方ならよくわかるはず)。これはどんな優秀なISの方でも一定数は流れていく数字が出てきてしまいます。
であれば、意地でも現場でSにしなければならない。
お金も人のリソースが限られているスタートアップには
余裕がないんです。

では人がAのところ、Sまで持っていける人は何をやっているのか。

答えは「仮アポ」です。
上記のような発言があった場合、以下のように答えます。
「そうですよね。僕らもこの3日間が終わると1ヶ月も2ヶ月も先までアポが詰まってしまいます。いざ調整頂いても、僕らの方が埋まってしまっている可能性があります。そのため、今日時点で貴社用の枠だけ仮で抑えておきます。もしも、そこで調整できなかった場合は再度調整させてください。」

人は面白いもので、仮でも決定すると、そこに向けて調整してしまうものです。
本当に予定があわず、再調整になってしまうものは数%しかありません。
あとでISで調整するよりも、こちらのやり方の方が圧倒的に数字は良くなります。

さらに、前述したCCC(キャッシュフローコンバージョンサイクル:お金が出てから入ってくるまでの期間)も短くすることができます。当日にSを設定できた場合は、早ければ展示会の翌週には初回商談になり、早ければ1ヶ月程度で受注までもっていけます。
一方、持ち帰って日程調整して、、、とやりとりしているだけで1ヶ月かかってしまうこともあります。「鉄は熱いうちに打て」はどの業界も同じです。

この考えになってから、「展示会の結果にAはなし。SかBのみである」と定義しました。
S:次回商談決定済み
A:商談承諾(日程調整中)
B:一旦持ち帰り(アポとれず)

Sをとるためのツールたち

また、Sを誰でもとりやすくするためのツールも考えました。
まず、一旦持ち帰りや、その場で日程をいただけない方がいた場合
「本日、こちら日程確定までいただけますと、こちらの無料トライアルチケットをプレゼントしています(通常は有償)」ということを告げて、チケットをちらつかせていました。

クレジットカードのようにプラスチック製でつくった無料トライアルチケット(カード)

こちらは、一定の効果があり、迷った人(AやB)をSにアップさせる効果はありました。ただし、弊社内でトライアルを一時中断したことや、金額、トライアルのやり方の変更に伴い、現在はやっていません。
トライアル無料を武器に使いましたが、他の会社であれば、色々な特典(なるべく原価や人的工数を伴わないもの)が考えられると思います。
また落ち着いたら弊社でも復活させようと考えています。

ブース内導線を考える

また、ブースを大きくしていくにあたり、新たな課題が生まれてきました。それがブース内の導線です。
大通りにブースが面している場合、集客部隊が声をかけて、プレゼンターの元へつれてきてくれます。この時、プレゼンターの位置が人によって表に近い人もいれば、奥まった位置の人もいるのです。
当然、集客部隊に近い、表に近い人にはどんどん来場者がトスされてプレゼンが行われます。表に近いプレゼンターが埋まってくると奥にも人が流れてきます。
ところが、奥まっているだけあって、集客部隊からはプレゼンで埋まってしまっているのか、空いているのかが認識できません。

導線上、集客部隊から見えなくなるブースがある。

これを解決するために、また社内で議論を進めた結果
「イオンの駐車場のように、空いているところが遠くから見てもランプでわかるようにしよう!」という話で一致し、「そうだ!それだ!」と盛り上がりました。
早速ネット注文して届いたのがこちら。

またやってしまった「誰が空いているかわかるランプ」

これまで、社内で無駄に話が盛り上がった場合には要注意だということを忘れてました。。。。
これでは空き状況がわかるというよりも、「事件」です。
まわりに危機を知らせるみたいになってしまうので、使用することなくお蔵入りすることになりました。

問題は解決されておりません。そのため、さらに社内で議論を進めた結果、盛り上がることもなく、冷静に決まったのがこちら。

iPad用アプリ

iPad上に上記を表示して、集客部隊から見えるところに置いておきます。プレゼンターはプレゼンが終わり、手が空き次第、自身のスマホで待機中のボタンをクリックすれば遠隔でipad上には「待機中」と表示される仕組みです。

これにより、瞬時にどのメンバーがプレゼンできる状況にあるかがわかるようになりました。回転数をあげるために必須の仕組みとなりました。

フィルタをかける

僕らのサービスは「製造業・卸業・商社」の「受注業務」の効率化・属人性の排除を促進させるサービスです。バーチカルSaaSの領域です。
このサービスは対象外の人には見向きもされません。一方で、対象の方にはめちゃくちゃ効果を出すことができ、喜んでいただくことができます。

そうなれば、いくら集客できても、対象外の方にお話しをするというのはお互いにとって時間の無駄ということになります。集客もとにかく頑張る、プレゼンもとにかく頑張るでやってきましたが、より、プレゼンの回転率をあげ、喜んでいただける可能性の高い人たちに話しを聞いていただきたい。
そのため、プレゼンを開始する前に以下のシートを用意して、お客様にヒアリングさせていただくことにしました。
この条件に当てはまったお客様は、めちゃくちゃ結果を出すことができます。同時にこのフィルタのチェックは新人だとしてもヒアリングができます。
弊社は創業から新卒採用をやってきているため、半分が22-27歳までの若手メンバーです。誰でも結果を出すための仕組みが必要となります。

プレゼンを始める前のヒアリングシート

このシートに当てはまらない場合は、資料を送付させていただくなどのナーチャリングの方向になります。

結局は気合い

色々施策はやってきましたが、最終的には気合いかとw。
これまで書いてきたことは、毎回みんなで議論し、終わったら振り返りをします。そして、毎回、新しいことを試しています。
そんなことを年何回も試していると、社内イベントみたいになってきます。まだコロナで集まったり、出社の機会がない時に、みんなで集まることのできるのが展示会でした。そうなると、この社内イベントを通してどれだけ成果が出せるのかという運動会や文化祭みたいなもんです。もちろん、毎回打ち上げもやっています。そんな、数字に表しずらいモメンタムが結構重要だったりします。

こちらに記載した施策もメンバーみんなで意見を出し合い、ぶつけ合い、失敗しながらも組み立てきたものです。今回記載した各種施策はメンバーが発案し、実行してきてくれました。

ですから、毎回、展示会前にはみんな気合いめっちゃ入ってます。
そして、その気合いが数字となってあらわれます。
毎回、時間ごとに数字の報告もしますし、当日誰が一番だったのか、トータル3日間での優勝も決めます。
本当に、その人がどれくらいの気合いで挑んでいるかで全く違う成果になるんです。

現状での成果

2024年8月時点での僕らの主要(目標KPI)は以下のような感じです。
1展示会(3日間)での商談設定数:150アポ
受注率:10.5%
受注数:16件
受注単価(ARPA):315,000円/月
LTV換算(18ヶ月で計算):5,670,000円

つまり、1回の展示会で新規MRRで約450万円(16件×31,5000円/月)、LTVで約9,000万円分(16件×31,5000円/月×18ヶ月)をつくろうとしています。
これに対してどれくらいの費用をかけるのかは企業によってことなると思いますが、うちでは人件費以外で500-600万円(コマ料、装飾、チラシなど)でやっています。今後もいろいろな施策をやる中で前後はするものの、このあたりでやっていきたいと考えています。

結論

どの展示会に出るか

弊社ではIT WeekとDX EXPO。地方展示会は東京でやりきるところまでやって、それでも余裕があれば。

出るべきコマ数、場所は

コマ数というよりも場所。奥はキツい。なるべく大通り沿い、入り口かつきあたりくらい。もちろんかけられる費用に限界はあるが、費用と効果は一定の相関はするので、お金をかけるところにはかける。その代わり、かけないところは徹底してかけないようにする。

ブース装飾

凝らなくていい。自社がなんのサービスなのか一言、一目でわかるようにする。また、ブース装飾はお金かかるので、繰り返し使える工夫を。

集客

配布物は、こだわってもあまり違いがでない。それよりも目を止めてもらい、足を止めて話を聞いてもらうように工夫する。

トーク内容

ハイパフォーマーを元にプレゼン資料やトーク内容を標準化。少なくても20回はロープレ・練習を行う。また、回転率をあげるように時間を区切る。

ゴール設定

これは会社さんにもよりますが、弊社は「リードの数」ではなく、「商談設定の数」にしています。当日、プレゼンをしたお客様に仮でもいいので次回商談の枠取りをさせていただく。また、場合によっては商談設定をするときの特典を用意する。

フィルタをかける

ターゲットでないお客様=自社のプロダクト、サービスでは結果を出しづらい、喜んでいただける可能性が低いお客様。
ターゲット外のお客様の時間をとってしまうのはお互いにとって不幸になってしまう。なるべくターゲットの条件かどうかを振り分けできるようにフィルタリングしてからプレゼンを行う。

最後に

ということで、色々書きましたが、まだ自分たちも実験の真っ最中です。
また半年、1年すると「こんなことで失敗した」というものが増えているのでしょう。
その時はこちらのnoteにどんどんと失敗録を追記していきます。

是非、この長文を読まれた方も、「自分のところはこんなことやっているよ」というのを教えていただきたいです。また、面白そうだから、自分も一緒にやってみたいという方は、人材も絶賛募集中なので是非お話しさせていただきたいです。

長文にお付き合いいただきましてありがとうございました!


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