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       ノ ウ ワ ン

                

この世に開かれた天地というものが如何なるチカラのはたらきによって生み出されたものか確たる説は存在しない。古来より多くの学者によって解明が試みられてきたが、今だにその謎は明かされてはいない。古文書には神代のモノ達による御業が記録されてはいるのだが、今の世の人々にはその記録の内容を完全に理解することはできない。あまりにも途方もなさすぎるからである。
 
 無論、我々が住む大和(タイナ)の国の西方にある鳴門海峡には天の沼矛(アメノヌマボコ)と呼ばれる巨大な棒が突き刺さっており、その高さは成層圏に達し、時折奮い立ったかのように震えては海面に渦潮を生じさせている。これは確かに人類の来し方を探っている考古学者の好奇を集めている、がしかし世界中数多に存在する宗教のあらゆる神学者からはこれを神具と見なすことに反論する声が多く、むしろ世間一般的にはこれに神秘を見出すことは禁忌とされている、道徳的に正しくないからだ。またあまりにも人知を逸脱した巨大さを誇るこの棒は数多の科学者の好奇の的にもなっているのだが、この棒(あるいは柱)があらゆる光学機器・電子機器を受け付けないため実証不可能な仮説ばかりが次から次へと現れてはその度に飲み干され用が無くなった空き缶のように図書館の片隅に不要な論文が山積みとなって投棄されている。

 その鳴門から東方7000里の距離に難波の港がある。これは紀元前の昔、自らを天孫と称した西国の王がこの周辺の平野を統治しようと思い立ち上陸を試みたところ、地元民である国津の民から大いに反感をかい、戦闘の末に撤退を余儀なくされたという故事に由来して名付けられた港だ。この港から遠く北の方角に存在する河内湖まで広がる平野を逢坂(オウサカ)という、逢坂の地は江戸末期の騒乱を経て明治が始まって以降、大和国の首都に定められている。

 今から始めるのは、そんな逢坂の本当に何者でもないただの女の子の話。虚心に聞いていただけると有難い。最後まで付き合っていただければ、判ってもらえると思う。


 逢坂紀行
 偉そうなこと書いてますが、作者猫F伝は映画スターウォーズの「デデーン♬!から始まるデカい文字が映画館でスクロールするあれ」がやりたかっただけです。

 

 


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