川田果弧

かわた・かこ/短歌ときどき俳句/塔短歌会(2016年7月~)/※敬称略ご容赦ください

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かわた・かこ/短歌ときどき俳句/塔短歌会(2016年7月~)/※敬称略ご容赦ください

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糖花〈こんふぇいと〉2018年8月号(残暑お見舞いネプリ)感想

短歌ユニット「糖花」(雨虎俊寛・江戸雪・東風めかり・志稲祐子・髙木一由・冨樫由美子・豊増美晴)の7名によるネプリ。カラフルなかき氷とホットミルクのイラストがポップです。 今回、配信期間中であることと、おひとり一首ずつの掲載ということもあり、歌そのものは引いていません。A4サイズは今日(8/28)まで、葉書サイズは9/2まで配信されているので、ぜひ出力して味わってみてほしいです。 ※9/4追記: メンバーの豊増美晴さんより、ネプリ配信期間終了につき「糖花」の皆さまの歌を当記事

    • 短歌連作サークル誌 あみもの 第七号/各連作より一首選

      2018年7月24日に発行された、短歌連作サークル誌『あみもの』第七号。 さまざまな連作があり、とても興味深かったです。私も初参加させていただきました。 ご一緒させていただいた皆さま、そして編集発行人の御殿山みなみさま、ありがとうございました。 だいぶ日が経ち、発行日より次号の〆切り日の方が近くなってしまいましたが、皆さまの連作から、好きな一首を以下に引かせていただきました。 なお、時間の都合上まことに勝手ながら15首に限り短い感想を添えさせていただいています。 死にたいと

      • 塔 2017年2月号掲載歌/川田果弧

        自転車に通学してゆく少女らのスカートの襞交互に尖る ハンドルの無き蛇口立つ裏庭にかたばみの花咲きて静もる 秋晴れのプールサイドに軽鴨は嘴ふるはせて首をしまへり おもむろに吹かるる Over the Rainbow 虹の手前に二度つまづきぬ 荻の穂の揺るる彼方にかがよへり今し吹かるるトランペットが 荻原はクリーム色の陽に染みぬとんび平たき螺旋を描く 死のうよと誰彼にいふ酔ひどれの袖口に貝の釦が光る 満月をズームで写しゐるきみの影踏みしめて一歩近づく (若葉集/永田淳選)※新樹

        • 塔 2017年1月号掲載歌/川田果弧

          声あげて素足に浅瀬をわたりゆく子らの腓にひかりの鱗 積雲の天辺きらり光りをり乗り越したれど顔には出さず 曽祖父は名をニヘイと言ふ うはごとに西瓜欲りつつ逝きにしと聞く 眼鏡にぶつかり来たる青金蚉 日なかの月はうすく削がれて 登戸駅ゆ乗りしタクシーの助手席に多摩川梨の積まれてをりぬ 恋人に梨買ひにきとふ運転手の形よき眉ミラーに映る ひと枝に咲き残りゐる百日紅あなたの声を憶えてゐます (若葉集/江戸雪選)

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          5本

        記事

          塔 2016年12月号掲載歌/川田果弧

          小さなる木彫りの象のキーホルダー開くドアもう無き鍵に下がれる けふ夫は小諸へ行きて天気予報地域選択長野県とす 公園へ移されし馬頭観音に紅き造花の供へられをり 消火器にバリエーションのありと聞き人気色とふオレンジを買ふ 立ち話する人の影伸びゆきて隣町との境越えたり エアコンの修理工来て皺ふかき手にはふたつの結婚指輪 波のごと風はかたちをあらはして夏野の草の裏のしろがね (若葉集/前田康子選)

          塔 2016年12月号掲載歌/川田果弧

          塔 2016年11月号掲載歌/川田果弧

          前輪のなき自転車の棄てられておしろいばながめぐりに咲きぬ 教卓の抽斗に飼ふお蚕に水泡のやうに君は触れたり スプライト二缶を投ぐ雲梯の上で夕雲眺めゐる君に 夏の野に紛れてわれもそよぎたり 君の街より夕立よ来よ 自転車の二台がふいに近付きてせえのと少年少女にキスする 別れしとふ電話のまたもかかり来ぬ薬缶の麦茶いまだ温とし ひさかたの月の真下のバス停で人運びゆくバスを見送る 「ウスターソースちよつと垂らすと旨いんだ」トマトジュースを好む君言ふ (若葉集/山下洋選)※新樹集

          塔 2016年11月号掲載歌/川田果弧

          塔 2016年10月号掲載歌/川田果弧

          わが嫁ぐ朝に姉貴と呼びかくる弟鴨居に額をつけて ベランダに雀の糞の黒くあり野に桑の実の熟れたるころは 僕といふ一人称のをみなごのあけぼの色のひなげしを摘む 音のなき裏門に咲くあぢさゐは監視カメラに撮られてゐたり どの人も供花を提げつつ列となり服部坂をしづかに上る 苔生せる地蔵の面眺めをり 祖父に遺影の一枚もなく コトコトと父の手になる椅子揺らし子は『人体のしくみ』読みをり チヨさんは目の見えぬ犬かがまりてつめたき鼻に私を嗅がす (若葉集/三井修選)※新樹集 塔に入会してはじ

          塔 2016年10月号掲載歌/川田果弧

          樹の下になつの鼓動があるごとく天牛虫のしろき星の斑/祐德美惠子

           『塔 』 2017年9月号〈作品2〉江戸雪選  木漏れ日の一粒一粒は、ピンホールカメラと同じ原理で映し出される太陽の形だ。樹下の地表に無数の小さな太陽が揺れているさまを「なつの鼓動」と詩的に表したことで、夏特有の強い生命感が際立っている。  白斑のある天牛虫として、ゴマダラカミキリを思い浮かべた。その名から胡麻模様と思ってきた斑は「星の斑」と呼ぶこの歌により、私の中で瞬く間に星へと変わった。  大きな樹と小さな虫、昼の木漏れ日と夜に光る星、という二つの対比が鮮やかに印象に残

          樹の下になつの鼓動があるごとく天牛虫のしろき星の斑/祐德美惠子

          石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも / 志貴皇子

           万葉集より。  雪解けの流れのほとりに芽吹いた蕨。まだ地表に小さく身を屈めてはいるが、春の訪れを喜ぶかのようにしぶきを受けてきらきらと光る。  上句は「の」が繰り返されることでテンポよく勢いをもって進む。声に出してみると、その響きはどことなく落ちてゆく水音を思わせる。下句は「萌え出づる春に」の字余りが、小さなふくらみをもって穏やかな結句へと到る。言葉どおり芽吹きの兆しのよう。一首全体が透きとおるような明るさに満ちている。 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにける

          石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも / 志貴皇子

          舟が寄り添ったときだけ桟橋は橋だから君、今しかないよ/千種創一

           歌集『砂丘律 』より。  一読して青く静もる夜の湖畔を思い浮かべた。  「舟」とは「君」か、はたまた詠み手自身のことか。「君」との間には何か躊躇するような(おそらく避けては通れない)ことがあり、ひいて二人の関係性の変化も予感する。惑う心や、確約のない相手との結びつきに、揺れる小舟のたたずまいが重なる。  相手を諭すような語り口は、同時に自身にも言いきかせている。四句まではモノローグで、実際に声として発せられたのは結句だけかもしれない。「今しかない」理由なら、きっと「君」も

          舟が寄り添ったときだけ桟橋は橋だから君、今しかないよ/千種創一

          雀らを追ひちらし立つひよどりの顔つきはどこか誰かに似てゐる/清水房雄

           餌を独占するために低く旋回して雀たちを追い払うひよどり。着地して胸を張る姿には「立つ」という言葉がしっくりくる。  「誰かに」としているが、詠み人の脳裏には特定の人物の顔が浮かんでいるに違いない。下の句の二度の字余りが、口をついて出かかったその人の名前をのみこんだかと思わせて、歯切れの悪さがかえって微笑ましい。  ともかくも、ひよどりに似ているというのなら憎からず思っている相手だろう。素直ではないけれど、たしかな愛情が感じられる一首。 雀らを追ひちらし立つひよどりの顔つき

          雀らを追ひちらし立つひよどりの顔つきはどこか誰かに似てゐる/清水房雄