三体Ⅱ(下)読了

主に自分のための備忘録です。

まずは一言、すごい作品を読んだ。

今回の下巻は、上巻で4人の面壁者が企てた作戦の効果が特になく批判された、無視された後の物語。

4人中2人の面壁者は自殺し、もう1人は自分に敗北主義の暗示をかけ、最後の一人羅輯(ルオジー)は宇宙に呪文を送信したあと、冬眠していた。

羅輯が冬眠から目覚めると、世界は一変していた。そこは地下の世界で、大不況を乗り越え、テクノロジーのブレイクスルーが行われた新たな地球となっていた。身の回りの物体は全てがディスプレイとなり、インターネットに繋がっている。さらに、宇宙軍も出来上がったこの地球ではもはや三体世界からの侵略は恐怖ではなかった。

しかし、羅輯だけはこれまで以上に命の危険に晒される。車にひかれかける、レストランの配膳用ロボットから包丁をさされかけるなど。もちろん、そばに大史がついているので事なきを得たが羅輯はひとまず地上に戻ることを選択する。地上にも住んでいる人間や自治体はあり、冬眠から目覚めた人々は慣れた地上に住みがちである。

そんな時、三体世界からの探知機「水滴」が地球にやってくるという。探知機とは名ばかりに、地球への友好の証なのではとまで予想される。そこで、宇宙軍は探知機の捕獲へと取り組んだ。無事、ロボットアームを駆使して水滴を宇宙船内に捕獲することができた。

もし、敵意を持っているならば捕獲された際に自爆するだろうと思われていたため、水滴が捕まったことは友好の証であることを裏付けた、かに思われた。

宇宙船に乗っている水滴を最初に触る科学者は、その恐ろしく滑らかな表面と強度に恐怖を覚える。その後、科学者の「逃げろ」という言葉と共に、水滴が前進を始めたのである。

水滴は滑らかな表面と強度をもって、宇宙戦艦を貫いた。そのまま、何千とある宇宙軍のほとんどを貫き、地球を恐怖のどん底に陥れた。水滴はプレゼントではなく、攻撃機だったのだ。ある意味ではプレゼントかもしれないが。

攻撃が始まった当初、なぜ宇宙戦艦が爆発しているのかを宇宙軍は把握できていなかった。そのため、逃げる戦艦はほとんどなく、水滴の餌食となった。

ただし、少ないながらも的確に分析し宇宙軍が「攻撃」されていると感じて逃げた戦艦もあったが、そこまでの脅威はもはやないと判断されて追撃を免れた。

この攻撃後、水滴は地球にやってくるという。羅輯は今までの経験上、自分を殺しにくると確信した。大史と共に人気のない暗闇に移動すると、宇宙の公理と呪文について語り出した。宇宙の中で文明が生存していくために、他の文明を見つけた時、自らの存在を発信すべきか、しないべきか。唯一の正解はどちらでもなく、ほかの文明を葬ることである。

そこで羅輯は呪文として、とある惑星とその周りの星の位置情報を太陽を媒介として宇宙に送信したのだ。宇宙には三体世界よりももっと高度な文明があると羅輯は考えた。その文明に、三体世界を破壊してもらおうという考えである。その考えは見事にうまくいき、とある惑星は見事に宇宙上から消え去った。

そして、ついに水滴が羅輯の視界に入るまで近づいてきた。羅輯に突撃すると思いきや、途中で反転し太陽の方を向いたのである。なんと、この水滴は羅輯が太陽を使って呪文を発信することを抑制するためのものであった。こうして、この時点で羅輯が地球のためにできることはすべてなくなってしまった。

攻撃を受けたこと、そして羅輯が宇宙に向けて発信した呪文によって惑星が破壊されたことを理由に、再び羅輯は面壁者となる。しかし、前述のとおり羅輯はもう何もできない。面壁者として仕事を行なっている姿勢を示してほしいという依頼もあり、水素爆弾を海王星で爆破させ、油膜を宇宙に広げることで三体艦隊の航跡を突き止める準備作業に従事した。だがこれは地球の人々からみると、面壁者としての役割を放棄しているように見え、ついには面壁者としての権利を失い、与えられた住居を追い出されてしまう。

その時にはすでに羅輯は心身ともにボロボロになっており、最後に葉文潔の墓の近くに自分の墓を掘りに行くという。

そしてその葉文潔の墓の前で、一言「三体世界に話がある」と交渉を始めます。なんと、羅輯は無意味だと思われていた水爆を用いた油膜の展開作業を使って、三体世界の位置情報を映し出すという呪文と同様のことを行なったのである。

そして、そのトリガーはあのレイ=ディアスが考えたゆりかごシステムを採用し、羅輯が死ぬと水爆が爆発する仕組みになっていた。羅輯は自分の命、地球の命をかけて、三体世界を破壊させようとした。

この段階で三体世界は羅輯の計画を見破ることができず、止める策はなにもなかった。三体世界はこの交渉をのむことしかできなかった。

かくして、地球は守られ、羅輯は面壁者としての最高の仕事を終えたのである。

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