「冬季限定ボンボンショコラ事件」読了

今回読んだ小説は、小市民シリーズ完結となる4作目です。この小説では、小鳩くんと小山内さんが小市民を目指すきっかけとなった事件を振り返りながら、過去の事件と同じ状況で小鳩くんが車に轢かれてしまった事件を解決していく物語です。

本作は小鳩くんが車に轢かれるという衝撃的なシーンから幕を開けます。小鳩くんは轢かれる直前に小山内さんを突き飛ばすことで、小山内さんは無事でした。しかし、小鳩くんはかなりの重症をおい、入院してしまいます。おかげで大学入試も1年スキップです。

小山内さんはこの事件にショックをうけ、1人で事件の調査を始めます。「ゆるさない」という強い言葉と信念をもって、小山内さんは動きます。

小鳩くんはというと、流石に動くことができないので、過去の失態であり、小市民になろうとするきっかけとなったひき逃げ事件を回想します。

発生場所は小鳩くんと同じ、堤防道路。Uターンができない一本道といっていいでしょう。つまり、ひき逃げ犯は道路先の監視カメラに映っていなければいけない存在です。しかし、そのひき逃げ犯の車、空色のバンはカメラに映っていませんでした。小鳩くんと小山内さんは犯人は誰か、どこに逃げたのかを突き止めるべく、積極的に行動します。

しかし、被害者の日坂くんはその小鳩くんの行動に、「やめてくれ」「ほっといてくれ」などの言葉を浴びせます。当時の小鳩くんにはあまり響かず、このまま犯人を捕まえれば日坂くんのためになるというもはや善意の気持ちで行動していました。

そして、小鳩くんと小山内さんは日坂くんが轢かれた時、となりに女生徒がいたことを突き止めます。そこで、耳にしたのが「エーカンのエーコ」でした。小鳩くんはそのエーコがいる高校の前にポスターを掲示します。

数日後、小鳩くんの携帯に電話がかかってきました。どうやら、ポスターを見た人が電話をしてきたようです。大人の男でしたが、小鳩くんは1人で会うことにします。

その男は日坂くんのお父さんを名乗り、調査の状況を聞いてきました。小鳩くんは、本当に日坂くんの父親なのかを疑いながらも話をしました。

しばらくして、日坂くんが学校に復帰しました。そして、小鳩くんを平手打ちします。この体験は、善意で動いていた小鳩くんにとっては、大きなショックを受けるものとなりました。これを機に、小鳩くんは謎を解くことに躊躇い、小市民になることを目標にします。

結局、日坂くんを轢いた犯人はコンビニバイトで、そのコンビニの監視カメラ映像の日付をずらすことでまるで消えたように見せていた、というだけですぐに捕まりました。これが、小鳩くんと小山内さんの失敗でした。

さて、小鳩くんの事件はというと、ついに小山内さんと小鳩くんが話をすることが出来ます。今まで、小鳩くんは夜になるとすっかり寝てしまって、小山内さんと会うことが出来ていませんでした。小山内さんからは、メッセージカードで水をドライフラワーにあげて(水を飲むな)ということを伝えられます。

なんと、その水には睡眠薬が入っていたのです。そして、その水を毎回用意していたのは、小鳩くん担当のベリーショートの看護師さん。その看護師さんはほかの看護師などがつけている名札を付けておりません。

なぜか、それは名前を知られたくないから。なぜ名前を知られたくないのか、それは小鳩くんが名前を知っているから。なぜ小鳩くんは名前をしっているのか、それはエーカンのエーコ、日坂英子だから。

英子は小鳩くんを車でひき、自分の目で監視をしていたのです。

日坂くんの事件の当時、日坂家では父と母の仲が悪く、姉弟はこっそり会い家族の仲を取り戻そうとしていました。しかし、事件当日に姉弟が一緒にいたことを日坂の父が知ってしまい家族仲復興のタイミングを逃してしまいます。

このことを日坂姉はずっと恨んでいました。同じ痛みを小鳩くんに与えるために小鳩くんをひいたのです。日坂姉から逃げ、病院の屋上に来た小鳩くんと小山内さん、そして日坂姉。小山内さんは警察を呼び、時間を稼ぐことを提案します。

そして、小鳩くんは日坂くんが自殺を図ったことを知ります。本当に日坂くんは死んでしまったのか…
話をなんとか続け、誰かが屋上のドアの前まで来たことを小山内さんは示唆します。しかし、警察のサイレンは聞こえていないため、警察ではありません。

そこに現れたのは、日坂くんでした。日坂くんは自殺をはかったものの助かり、大きな怪我をしていました。日坂くんは姉に、そんなことしてほしくなかった、と伝えます。日坂姉は弟から言葉にもうどうすることもできず、逮捕されます。

小鳩くんと日坂くんはやっと、話し合うことができました。日坂くんは、自分が秘密を隠していたのだから、言いすぎたと語ります。小鳩くんも、自分の善意の押しつけにより日坂姉弟を気づけた愚行を謝ります。

さて、小鳩くんの事件も解決し、病室には小鳩くんと小山内さんだけが残ります。治ったら行きたいところがあるか聞かれた小鳩くんは、春夏秋と訪れてきたスイーツ店の名前を口にし、この1年がどれだけ楽しかったかを表します。そして、小山内さんは3年間で「今」が1番忘れられない瞬間とし、両者ともに2人で歩んできた道に満足したようでした。

残念ながら受験が1年遅れてしまった小鳩くんに、小山内さんは京都の大学をすすめます。小山内さんは京都の大学を受けるからです。小山内さんは、秋季の際に「この街を出るまでの次善」としていた小鳩くんを、次善としながらも今後も一緒にいたい、と言ったのです。今後もこの遠回りで考えすぎで謎解きが好きで復讐が好きな2人の互恵関係は続いていくのでしょう。

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