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キャプテン・ラクトの宇宙船 第7話

  七 海賊退治

 トウキョウを出て二日目。〈はやぶさ〉は燃え盛る太陽に向かってつき進んでいた。メインベルトからは小さく見える太陽が、今ではずっと大きく、そしてまぶしいほどにかがやいている。
 そして前方には巨大彗星。うすく光る、大きな長い尾をたなびかせている。
 彗星はちりと氷のかたまり。実は小惑星の仲間だ。太陽に接近すると、氷が溶け出しガスとなり、ちりがふきとばされて、あの長い尾が作られる。
 この彗星はその中でも特大のサイズ。サングレーザーと呼ばれる、太陽にものすごく近づく軌道を持つ種類の彗星だ。青く光るガスの尾と白く光るちりの尾が長く長く、一億キロメートルものびていた。
 普段ならその美しい光景はため息を誘う見ものだっただろうが、今〈はやぶさ〉のブリッジにいるラクト、イチコ、ミミは、それを楽しむような気分ではなかった。
「さあて、そろそろじゃないかと思うんだけど」
 ホロウインドウに出した軌道図をながめるラクト。目の前の席のイチコが、心配そうにふり向いた。
「らっくん、もう一度言っときますけど、海賊が来たら全速力でにげるしかないんですよ? 私のリミッターはらっくんの保護モードのままで、人の乗っている船に攻撃できないんですから」
「わかってる」
 ケレスでもそうだったように、今のイチコは一番強い規制がかかった状態だ。もともとは、オオムラ家でラクトといっしょに他の子供たちの世話もする予定だったから、子守モードに設定されていて、そのままなのだ。
 モードの変更は両親でないとできない。二人が帰ってくるまで〈はやぶさ〉は整備に出しているはずだったので、船のコンピュータもイチコの設定に引っ張られている。なので自衛用についているレーザー砲も、海賊船には使えない。
 ラクトに命の危険があればリミッターは自動で解除されるのだが、それはかなり厳密に設定されている。もしそうなった時には、すでに〈はやぶさ〉は無傷ではないだろう。
 ただ、ラクトはそれについては心配していなかった。というより、最初からあきらめていたのだ。
「どっちにしろこの船についてるレーザー砲は大した事ないから、相手が大物の海賊だったら、正面から撃ち合うなんて無理だよ。前におそわれた船は〈はやぶさ〉より重武装だったのにしずめられてる。撃ち合いじゃ勝ち目ないと思う。」
「じゃあ、どうするんです? にげ切れる相手なんですか?」
「おそわれた船が残したデータからして、けっこう相手の足は速そうだけど。でもだいじょうぶ。秘密兵器を積んだから。あとは読み通り場所が上手く合うかなんだ」
「場所?」
 ラクトのひざの上にいたミミが聞く。
「うん。ミミは、おそわれるとしたらどの辺だと思う?」
「そうねー、当然救援が間に合わないような、他の軌道からはなれた所よね。だとすると……この辺?」
 よいしょと背のびして、ホロウインドウの軌道図の太陽近くを指差す。
 太陽のそばは当然熱く、またいろいろな電磁波や荷電粒子がふきあれている。太陽表面ではときおり大きな爆発、太陽フレアが発生し、その時にはさらに激しい嵐が起きる。故障の原因になるので、ふつうはあまり太陽に近い軌道は取らない。
 ということは、自衛艦隊の護衛艦も、そばにはいないということだ。海賊にとっては、絶好の襲撃場所だ。
 そしてそこは、もうそろそろ到達する場所だった。
「だよね。前回もその辺りだし。オレの読みもそこなの。ゴヘイおじさんはスパイがいるって言ってたから、オレたちが出港するのを聞きつけて連絡を入れたとして、時間的に追いつけるのはこの辺だと思う。イチコ、しっかり見張っててね」
「了解です、らっくんー」

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