かわせ山田にじみ異世界家族対談
かわせ:こんにちは。ガンズ編集長かわせです。
こちらでは作品連載だけでなく、メンバーそれぞれの活動もご紹介していきたいと思いつつ、だいぶ間が空いてしまいました(反省)
気を取り直しての再開一発目は、先日、人格OverDriveでの『にじみ』連載を無事完結されました、山田佳江さんをお迎えしてお送りします。
山田:こんにちはー。よろしくお願いいたします。
かわせ:よろしくお願いしますー。
さて今回は『にじみ』連載完結記念ということなのですが、僕も読ませていただいてました。とても面白かったです!
小学生の女の子の身近な日常シーンから始まっていて心情描写の解像度が高い状態で、その日常にぽつんと小さな染みができてそれがいつの間にか広がっていく筋立てに、どうなっちゃうんだろうと最後はらはらして読んでました。
山田:ありがとうございます。この作品は二十年以上前に私が一番最初に執筆した小説です。
かわせ:そうそう、それをツイッターで見かけていたので、ちょっとお話を聞いてみたいと思ったんですよ。
この作品の経緯はどんな感じなのでしょう?
山田:それまでは小説を書いたことがなくて、二十代半ばの頃に、友達と自主製作映画を撮影することになり、脚本を書いてみたのですよね。文章で脚本を書いたときに、初めてのわりにすんなり書けたというか、苦もなく書くことができたので「これは、小説も書けるのではないかな」と思って、試しに書いてみることにしました。
かわせ:今回掲載に当たって、手直しとかしました?
山田:ほとんど直していません。明らかな誤字などは修正しましたけど。
かわせ:それ、すごいですね! 最初からあのレベルですか! 山田さん、天才!
こんなこと言うのもですね、実は僕がこのあいだガンズで連載完結させた『クローン04』も、小説書きに転身した初めの頃に書いたものなんですよ。最初は漫画の持ち込み企画で初稿はネームになっています。で、そのあと小説版を書いた。それをちょこっと手直しして掲載しようと、言わば楽をしようと考えたのですが、久々に読んだら描写の解像度が低すぎて、手直しが「ちょこっと」じゃ済まなくなりました。ぶっちゃけ、新しいのを書いた方が早かったのではと思うぐらいです。多少なりとも自分の腕が上がったから気になるのだと、自分を慰めてるんですけど。
それを考えると、最初の作品があれだけ書き込めているのは本当にすごいと思います。
それでも時間が経ったら見えてくるところがあるんじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか?
山田:まあ、いろいろ拙さなど感じる部分はありましたが、それも持ち味なのかもなあと思って、あえて大きくは修正しませんでした。かわせさんはいつ小説書きに転身されたのですか?
かわせ:初めて取れた漫画の連載が打ち切りに終わって、しばらく他の企画をいじった後ですね。きれいにスパッと転身してなくて、ネーム原作できるんじゃないかとか、いろいろ並行していました。
打ち切りがあったのが2006年の夏。今小説フォルダの中を確認してみたら、最初の小説は2007年4月。このファイル開いたら稚拙さに悶え死にしそうだから見ない(笑)。
山田:だいたい一年くらいで書き終えてる感じなんですかね。連載が取れるだけでもとんでもなくすごいことだとは思いますが、その先もずっと厳しい戦いが続くのですねえ。
かわせ:執筆にかけた時間はけっこう短かったです。当時のブログも見返しましたが、一か月弱ぐらい。打ち切り後に出した企画が、自信を失っていて筆に迷いがあるからことごとくうまくいかず、そこで一度落ち着いて考えた時に、小説なら今抱えている問題が問題じゃなくなると思ったんですよね。そういう負のエネルギーに突き動かされているから、熱に浮かされるように引きこもって書いてた記憶があります。
厳しい戦いは、人気商売だと仕方ないですよねえ。小説でも以前ラノベ作家の生存率という話題がありましたし。セルパブでさえ、そこから逃げられてないなあと思いますもん。
山田:確かに、セルパブですらもやめてしまう人、けっこういますからねえ。
かわせ:作品ひとつ仕上げるのにはかなりのエネルギーがいるので、モチベーションを保つの大変ですからね。僕は「ここまでやってきたのに、頭の中にある物語を全部吐き出さずに死ねるか」みたいな意地が原動力になってるところがあるんですけど、そういうごく内側からではない場合、思ったほど反応がこなくてモチベーションが続かないということもあると思います。
山田さんのセルパブはうまく回ってると思うんですが、山田さん本人はどっち寄りのモチベーションで書いてる感じですか?
山田:基本的には「100万部売りたい」というモチベーションで書いています(笑) でも最近は、モチベーションに頼って執筆をすると、どうしても書けない時期ができてしまうので、もうなにも考えずに朝のルーチンに組み込んで「毎日300文字」を書くようにしていますね。二ツイート分くらいなら、なにも考えずに容易に書くことができるので。
かわせ:ちょうどこのあいだモチベーションについて書かれた科学記事を読んだんですけど、モチベーションって行動を引き起こす心理的要素のことなので、「習慣」もその一つと考えられるみたいですよ。内発的なものも外発的なものもがんばりすぎると消耗してしまうことについても書いてありました。
なので習慣化してしまうのはいいですよね。僕も起きて一番頭が働く時間帯にちょこっとでも書くようにしています。
ただ、ちょっとずつだと筋がぶれそうになっちゃうんですけど、山田さんはプロットはどうしてます?
山田:プロットはとてもざっくり書きます。一章につき三行くらいですね。
かわせ:そこからもう文章書けちゃう感じですか?
山田:書けちゃいますね。プロットのほうを修正するときもありますけど。
かわせ:それでできた初稿って、推敲何回ぐらいかかります?
山田:二回か三回くらいですかね。プロットを全く書かずに書いた「泥酔小説家」は、推敲が大変で、四回くらいやりました。
かわせ:他の人はどれぐらい推敲してるんだろう。僕はめっちゃ多いんですよ。漫画家上がりなので地の文が箇条書きみたいな状態からスタートになって、いつも不足気味なんです。 『クローン04』は一度書いたやつなのに、毎回10周ぐらいしていました。
山田さんは最少2回で済むってことは、初稿でちゃんとした文章になってるってことですよね。いいなあ。
山田:十周はすごいですねえ。そのくらいやれば、かなり最初と違うものになってきそうですね。私は実際のところは推敲というよりは、誤字脱字の確認がほとんどなので、初稿から最終稿はあまり変わっていないですね。
かわせ:最初からちゃんとしたクオリティの文章が出てくる方が、絶対いいですよ。書いてどんどん出した方が、読者にもいいと思うし。
どんどん出すと言えば山田さんは、小説家になろうで書き始めてますよね。
山田:そうですね。小説ってどうしても、書き上がるまでの期間が長くなってしまうので、一作書き終えてから公開するとなると、その間にSNS上でのアウトプットができないのですよね。なので「にじみ」のウェブ連載や「異世界家族ロビンソン」の連載を試みてみています。「にじみ」は完成原稿がありましたが「異世界家族ロビンソン」は書きながらの連載ですね。
かわせ:どれぐらいのペースなんでしたっけ?
山田:毎週月曜の午前七時に更新しています。最近はできるだけ最小限の労力で執筆を習慣化するようにしていて、一日に300文字程度を書き進めているのですが、一日に300文字を書けば、七日間で2100文字になるのですよね。なので、一話分を2000文字程度として、週イチで更新をしています。
かわせ:週刊連載いいですね。読む方からしたら、それぐらいの間隔だと習慣化しやすいですもんね。反応はいかがですか?
山田:実際のところ、小説家になろうって毎日連載するほうがページビューが増えるらしく、一週間に一度の更新だと、それほど多くの読者がついてきてくれる感じでもないのですが、それでもまあ、読者の母数が大きいので、他のサイトで連載するよりは読まれている印象です。アクセスを解析すると、ツイッターの告知以外からの流入もあるようですね。
かわせ:毎日連載は最強だと思うけど、読み返すたびに直す所を見つけてるようじゃ、僕は間に合う気がしませんねえ。毎日書いてる人、すごいですよね。
「異世界家族ロビンソン」も読みました。序盤ですけど、山田家の行く末が気になります。あれは作品を思いついてからなろうに載せようと決めたのか、それともなろうに載せる作品として考えたのか、どちらですか?
山田:あの作品は、ある日唐突に「異世界家族ロビンソン」というタイトルとだいたいの構想が降ってきたので、まず類似の作品がないかどうか調べました。ライトノベルの小説としては、かぶっているものがほぼなかったので執筆することに決めました。で、どうせ執筆するならばやはり異世界ものの聖地に挑戦してみようと思い、小説家になろうについて色々調べましたね。
過去の日記を読み返してみたら、今年の六月四日に「異世界家族ロビンソン」が降ってきたようです。で、その日に調べ物などをしてプロットを書き上げていますね。小説家になろうでの連載開始が七月四日なので、準備にちょうど一ヶ月をかけていたようです。
かわせ:作品が先だったんですね。準備はどんなことを?
山田:主にライトノベルを読んでみたり、小説家になろうについて調べたり、構想を何人かの創作仲間に聞いてもらって手応えを確認したりしましたね。
かわせ:お子さんが師匠というような話を見た記憶があります。
山田:長男がライトノベル大好きなので、ライトノベルについて色々教えてもらいました。
かわせ:身近なところにリサーチ対象になる人がいるといいですよね。若い子にはどの辺が人気なんでしょう。
山田:偏っているかも知れませんが、うちの長男は「転生したらスライムだった件」が今のところ一番好きですね。
かわせ:転スラはまさに、なろう発の異世界転生ものですよね。
『異世界家族ロビンソン』は、どの辺までプロット固まってるんですか?
山田:ざっくりとですが、一応最後までプロットはできていますね。15万文字くらいで完結する予定です。第一部完結、という形になるかも知れませんが。
かわせ:そうすると、一年半分ぐらいあるんですね。楽しみです!
山田:あれっ、そんなに長くなりますか(笑) 週二回更新にしてもいいくらいですね。
かわせ:そしたらあと一声で毎日更新行けるかもですよ(笑)
山田:本当は、毎日更新したほうがいいんでしょうけど、途中で力尽きてしまいそうなのでやめておきます(笑)
かわせ:本日は『にじみ』連載を完結され、さらに『異世界家族ロビンソン』の連載を始められました、山田佳江さんをお迎えしてお送りしました。ありがとうございましたー。
山田:ありがとうございました!
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銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE
2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
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