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銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE

2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
明るく楽しく激しい、セルフパブリッシング・エンターテインメント・SFマガジン。気鋭の作家が集まって…
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2021年2月の記事一覧

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 15

15 ほのかにメッセージで呼び出されて、ショッピングモールの中にあるカフェに移動する。通路側のソファー席でコーヒーを飲んでいるイチゴとほのかは、はたから見るとまるで恋人同士みたいに見えた。 「あ、きずなちゃーん、フータくーん、なに買ったの?」 「水鉄砲!」 「すごーい、たくさん買ったねえ」 「ほのかは水着買ったの?」 「うん。えへへー、見たい見たい? イチゴくんが選んでくれたんだー」 「けっこう大胆なやつにしたよ」 「……あー、いいや。夏まで楽しみにとっとくことにする」  イ

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 14

14  ナニガシが私たちの中学校を荒らした次の日、学校は休校になってしまった。建前上は外出しないようにとの指示が出ていたけれど、私たち放送部員はほのかに呼び出されて、隣の区のショッピングモールにいた。 「ちかこちゃん、遅れてくるってー」 「イオン! イオンめっちゃ広いね! ご飯食べるお店がいっぱいある」 「イオンイオン騒ぐなよフータ、恥ずかしいから」  フータはカーゴパンツとTシャツ、イチゴはジーンズとTシャツの上にリネンのシャツを羽織っている。全身銀色よりはずいぶんとまし

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 13

13  私たちが放送室を片付け終えた頃、本城先生が陰鬱な面持ちで職員室から戻ってきた。 「三好、仲谷、今日はもう帰りなさい。俺の車で送ってくから」 「先生、学校でなにかあったんですか?」 「一時間目の途中に、校内で発砲事件があったんだ」 「発砲?」  放送室の鍵を締め、校舎の外の職員駐車場まで歩いて行く。本城先生の車は小さな軽自動車だった。 「本城せんせーの車かわいいー。ほのか、助手席がいいなあ」 「いいよ、私、後ろに座るから」  ドライブ気分でうきうきしているほのかに助手

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 12

12 「ミッチの様子はまた見に来るとして、今日のところは帰ろっか」 「あれ? 私のバッグは……」  ちかこがソファから体を起こし、部屋を見渡す。 「ちかこちゃん、階段のところにトートバッグ放り投げてたよー」  ほのかはベッドで眠るキズナニを撫でながら、足をぱたぱたさせていた。 「しまった、カメラを持ってきていたのに。不覚です」  悔しそうに階段を降りていくちかこを、フータとほのかがにやにやしながら見守っている。 「俺ら、先に帰っちゃおうか」 「そうよねー、迷子になるはずもな