連絡が滞っていたことに気付かないほど
レターセットの中にはさんであるびんせんがあった。誰からの手紙だっけ。
昨年11月ころから少し元気になってきて年末年始、少し時間のある時に部屋の片づけを少しずつ進めていた。各部屋のあちこちに、置きっぱなしになっている物がなんとなく積もっている。
手紙の最後に書かれてある名前を確認すると、小学生のころからの友人。
でも自分が気持ちが悪くなるほど内容を覚えていない。
これ、いつの物よ。私、なんでこれを置きっぱなしにしてたのよ。
読み込むと、どうやらここ何年か以内のよう。
ひぃぃ。私、無視したことになってる??
手紙を前にだいぶグルグル。思い出そうとした。
彼女は、私が帰国子女でまだ日本の学校の雰囲気になじめていないころから優しく接してくれた。
少しずつ親しくなっていった当時をよく覚えている。それまでの、私の周りにいないおとなしいタイプで。
私の名前も当時はちょっと珍しくて自分で気に入っていたけど、彼女の名前は私以上に珍しく、今で言うキラキラネームともちょっとちがって和風でかわいい。互いに名前をほめあい、うふふと笑い合った。
大勢で遊ぶ時も必ず彼女は私の視界の片すみにいて、きっとおとなしいながらも積極的に私と関わってくれていたのだと思う。
1年半ほどで私が引っ越した後も、手紙を送り続けてくれた。
私は転校した後、いじめられたり孤立していたりしたのを隠したくて自分を誇示する内容ばかり送っていたのに、彼女は彼女のペースでほのぼのな内容を送ってくれた。決して突き放したりせずに。
何年かブランクがあっても、どちらからともなくぽつぽつとやり取りがあって、年賀状も彼女は欠かさない。
札幌に住んでいた時に、「観光に行きたい」と連絡があった。
20年ぶりくらいの再会を喜ぶも、おとなしい彼女と、あまりしゃべらない私。シンとした時間が多かったけど、彼女はそれほど気にしていない様子でどこまでもありがたいのだ。
そして正確に何年前だったかは忘れたけど、私が「年賀状やめてカードを送るね」と手紙を送り。その1年後くらいに返事が来たようだった。
「手紙もらったのに1年も経ってしまった」の記述がある。
でもこれを読んだ頃、私は自分のことで精一杯だったようで、こちらの方は1年どころではない。
更年期症状になやまされ始めたのは、5年ほど前から。
寝込むようになったのは3年ほど前。とは言っても、ずーっと横になっているわけではなく、夫や息子の送迎をこなしたり、買い物や最低限の家事はこなす。それすらもダメな日は確かにあったけど、ヴォーカルレッスンの時間には起き上がってレッスン受けに行くし、時にはカラオケで練習もする。週末は元気があれば映画館にも出かける。はたから見るとそんなに大変そうに見えなかったかもしれない。
こういうところには書くけど、普段の生活で「しんどそう」に見せたくないので、少し愚痴は言っても元気そうな顔をしてがんばってしまう。でも家に着くと倒れ込むように横になる。ソファや玄関で横になったりそのまま寝たり。
そうやって座っているのもしんどかった2020年。
そして年末には五十肩で動きづらくなっていった。
翌年は体調少しマシになっていたけど、息子の受験や引っ越しでよく動かなければならなかった。五十肩が両肩にきて寝づらいし、あらゆることにやる気を失っていった。
そして昨年は精神的なつらさ。たぶん更年期のせいだから、特に理由がない。ちょっとした揺れからすぐ不安定になる。
出会った婦人科からの漢方薬でようやく11月頃から気持ちが落ち着き、身体が少し元気になったかな。
すごく久しぶりに台所の壁を磨いたり、玄関を磨いたり。
そして部屋の整理をして見つけたその手紙に、愕然とする。
年末年始の整理ついでに、アドレス帳も一新することにした。
ホリデーカードや年賀状を書く段階で、ノートにまとめている皆のアドレスが、変更などで黒々としてきている。
それで新しいノートに書きかえながら、ふと気がついた。
アラ。カードのうちの一通、住所を前のものにしたのでは!
それは札幌で知り合った美容師さん。
私に子供ができてからウチまで抱っこしに来てくれたり、一緒に公園でランチしたり。私が引っ越してからも札幌に行った時にタイミングが合うとカットに行くことがあった。
彼女は結婚して札幌を離れ、息子クンは小学生になり、店も改装し。次々と展開していく中、持病のあったダンナさんが亡くなった。ダンナさんのブログに彼女が書いていて、その思いに胸がつまった。
その後も手紙を、ひんぱんではないけど送り合っていた。
昨年暮れにも少し久しぶりにカード送ったのに、住所まちがえていたかもしれないなんて! と慌ててこの前、手紙を書き直した。
さらに今年は、そろそろヴォーカルレッスン再開したくて先生に連絡を取ろうと思っていた。
まだ密室で大声を出し合う気持ちになれないのだけど、ずっとレッスンへの思いはある。まさか2年以上も先生と連絡取っていないなんて、履歴を見るまで気付いていなかった。
よく考えたらわかるのに1年くらいだと勝手に思いこんでいて。先生ごめんなさい。お元気でいらっしゃるのかしら。
どの件についても、2年くらいの間、私の意識はどこへ行っていたのと衝撃を受けてしまった。
それなりに日々こなしていたつもりだったし、noteに自分の気持ちは書きつづっていたはずなのに、そんなにも私は日常生活がギリギリだったの。心も体も自分のことに精一杯で、まわりのことに気を配れていなかったのかもしれない。
自分がそこまでも余裕がなかったことは仕方ない。反省しつつ、皆との関係を再構築していきたいから、これからの自分を見せていくしかない。
まずはこの3人に、私の思いが伝わりますように。