わあああーおめでとう!!
「22」と「46」の数字を上履きに書いていた。どちらの数字が右か左かは忘れたけど、中高生時代の白い上履きの、甲の部分とくるぶし辺りに2つずつ。けっこう大きく。
当時私は熱狂的な阪神タイガースファン。キャッチャーのポジションも大好きで、木戸選手のファンでもあった。喋ると楽しいことを言って笑わせてくれるかわいらしい人で。背番号22をつけていた。
一つの球団を熱狂的に応援するファンは、他の球団をすべて敵と見なすものだけど、もちろん野球が好きなら選手全員をリスペクトしちゃうよね。
そんなわけで、阪神戦を欠かさず観ていた私は、他球団でがんばっている選手たちにも「阪神戦だけはそんなに打たないでね」と思いつつ応援していた。
その中にヤクルトスワローズで背番号46をつけていた栗山英樹がいる。
笑顔を滅多に見せず、派手な活躍をするわけでもなく、ただひたすら野球に向き合っているような横顔が応援したくなる。シブいシブい選手だった。
当時国立大出で教員免許を持っている選手というのがまた珍しくて、応援したくなる要素の一つだった。入団もテストを受けて手に入れたプロの道。
私は中高時代、素行は人並みだったけど、その日の体育館での体育の授業の時。いつもなら体育館用のシューズに履き替えるために、上履きを棚に置く。ところがその日は慌てていたのかそこら辺に放ってしまったみたいだ。先生に「おいおい片付けろよ。この靴、誰のや」と皆の前に掲げられたことがあった。
まだ気づかずに「誰のだろー」と、皆と一緒にぼんやり眺めていたら、先生が「なんか22と46って書いてあるで」と言う。そしてきっと耳まで真っ赤になったであろう私が「えへへー」と取りに行ったのだ。
その直後、「かせみちゃんて、栗山さんファンなん? 私もやね~ん!」と、普段しゃべらないクラスメイトが声をかけてきてくれた。46でピンときてくれたんだ。
優等生のその子が目をキラキラさせて言うので「お。おう。そうやねん。〇〇ちゃんもなんやね!」と意外に思いつつ返事した。栗山に目をつけるなんて、阪神間でちょっと珍しかったからうれしくなっちゃうよね!
今回のWBC、選手たちの盛り上がりが爽快だった。楽しそうに伸び伸びと、熱がこもっていて。スポーツで鼓舞する様子がこんなにも選手や観ている者たちをいっしょに盛り立てるものなんだ。
スポーツが根性論て、私たちの世代は少しずつ疑問を持ち始めていたはず。がんばっているのはきっとそれぞれに。目指すものがあってひたむきに努力して。でも周りの大人が押し付けるものじゃあない。
今の若い世代は変わり始めている。それでも勘違いしたままの指導者たちはなかなか後を絶たず、早くそんなものが淘汰されちゃえば良いと思う。
そしてそういうものがなくたって選手たちは育ち、力を発揮できるってあらゆる面から証明してくれたんじゃないかと胸が高鳴った。
メダルをかけてもらって笑顔な栗山監督を見て、選手引退後も活躍されていたにしても、本当に良かったねとしみじみした。白髪だらけのコーチ陣たちも。個人的には吉井コーチも。紆余曲折あって、ニコニコ頭を下げメダルをかけてもらっている様子を見ると胸がいっぱいだ。
みんな自分で「考えて」「伝えよう」と取り組んできた人たち。
キラキラの選手たちはもちろん、監督やコーチの、年を重ねた様子に胸がいっぱいになるお年頃。
35年ほど前の上履きのことを思い出し、高校のころに声をかけてくれたあの彼女の笑顔も思い出す。きっと喜んでいるだろうな。