この分子模型、硫酸が作れないんだよ

 へ?

 息子がさっき言った台詞だ。
「この分子模型、硫酸が作れないんだよ」

 だから。

 へ?

 今は高3息子が、小学3年生の頃にハマった分子模型グッズを出してきて、遊び始めた。

 「あと、せっかくだからタンパク質作りたいじゃない?」

 は?

 皆さん。
 私の気持ちをわかってくださるだろうか。
 話が合わない。

 それでも息子は話し続ける。
 こうやって私と息子はコミュニケートしてきたのだ。少しは苦労をわかっていただきたい。映画やお笑い、友人たちの話で盛り上がる時だってある。でもこの類の話になると、私はハニワみたいな顔で、アホみたいな質問しかしない。
 できるだけ噛み砕いて説明してくれるけど、ちょっと何言ってるのかわからない。

 でも分子模型を見ていると、芸術作品に見えてこない?

 もう「芸術作品」とか思っている時点で、説明がイマイチ入ってきていないのがバレバレだ。
 私は「可愛い」とか「美しい」とかでこの写真を撮る。

 これは「単斜硫黄」。……らしい。た、タンシャ?? いや微妙に間違ってるかも。とか言う。ああそう。あってても間違っててもわかりませんわ。

画像1

 これは「酢酸」。……らしい。

画像2

 これは「ベンゼン」。……。

画像3

 元気良さそうで可愛いね! と言うと「おおう。面白いこと言う」と言われた。
 「じゃあ、これ、動物みたいに見えるよ」と私に合わせて別のを見せてくれたので、「ホントだー。何か手に持ってるよね」と言うと、黙られた。あれ。そこは違うのか。

 いや、同意の返事が面倒だから黙っただけだと反論される。かみ合わない私たち。

 もっとちゃんとした物が作れたらなあと言ってるけど、ちゃんとした物って。ナニ。
 昔はもっと大作を作っていたけど、そういう物のことかしら。結局大作を作る前に飽きちゃったみたい。

 と思ったら、飽きたんじゃないよ、大作は作り方忘れたんだよ。と言われた。

 そう、息子はあの頃から特別にのめり込むわけでもなく、その知識の宝を使うこともなく、ただ遊んだ。それだけなので、その先はない。極めたら「すごーい!」「カッコいい!」ってなるんだろうけど、何だか普通の子になった。別にそっちの道に進むわけでもない。

 とりあえず、小学生のころぶりの遊びを少しは楽しんだ息子だった。

#エッセイ #分子模型 #わからない #理系 #親子の会話

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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。