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おそるべし重力
幼少期は奥二重で、「○○おじさん(父の兄弟)に目が似ている」と言われたものだった。
中学生の頃になると、二重がクッキリしてきた。電車の中で、「すごく目がキレイ!!」と同級生にさんざん言われて、彼女がサッサと自分の駅で降りた時には本当に恥ずかしかった。そんなに特徴のある素敵な目ではない。ただ「当時は」、二重のラインがクッキリしていた。それだけだ。そして多分彼女の好みだっただけだ。彼女が下車した後は、顔をもう窓の外に向けるしかなかった。
その時以来、一度も魅力的と言われたこともないので、そんなに目を気にした記憶はない。
目の表情は、すぐ気持ちが出ちゃってコントロールできていない自覚があるので、欠点と裏表でチャームポイントと思っている。でも目の「形」は私にとって、特別なチャームポイントでもなく、コンプレックスでもない。なんでもない部分のはずだった。
それが最近、そのラインがもう消えかかっている。二重のシワが薄くなってきたわけではない。まぶたが下がってきて、二重のラインにかぶさってきたのだ。
二重のラインがなくたって、一重でも可愛い目、キレイな顔立ち、魅力的な人たちはいっぱいいる。だから一重だろうが二重だろうが構わない。
でも。
まぶたも重力に負けるの?! って気が付いた時、震えたわ。
とハイジのようにつぶやいた。(わからなくて良いです)
もうお尻も長くなってきたのに。太ももの肉も崩れ落ちて膝の上にたまってきているのに。頬も弛緩してきて、顔が長く長く、父に似てきているのに。アラフィフの身体はよほどきちんと管理しないと、重力にひたすら負け続けるばかりではないか!
そ。そうだわ。きっと下を向いている時間が長いからなんだわ。
急に思い立って鏡の前で、カッと目を見開いてみた。まぶたを弛緩させているばかりではダメなのだと。眉を上げ、目を見開いて、まぶたを上げる。
下がったまぶたの中から二重のラインがニュッと出てくる。
すると。同時におでこに何本ものラインがクッキリ出てきたではないか。
わあああ!!
……猿がいる。
いやかわいい猿もいるけどね。
もしかして。
おでこの皮膚も重力に負けているのか。
今度は、さらに上の頭を、重力に逆らい引っ張ってみる。
キリがない。
猿のおでこが衝撃だったので、わざわざ母に言った。
「まぶたが下がってきたから、上げようと目を見開いたら、おでこにシワがよる」と。
そうしたら、母が「私は起きたらいつも目の体操してるわよ」と言うではないか。
こうすれば良い。ああすれば良い、と力説を続ける母に、尊敬の念を抱いた。70半ばで垂れ目の母も努力をしているのかと。
母は言う。
「女優の誰それが‘50でもそんなに美しい’とか言うけど、50くらいでしょ? 美しいなんて、あったりまえよ!」
んんー。
エイトブリッジ別府ちゃんが見当違いのツッコミを繰り返した時の、篠栗のように私は唸った。(わからなくて良いです)
50なんてまだまだ若いんだ。
身体が弱いのにそれに関しては、あまり愚痴を言わない母が、最近珍しく「弱ってきたわあ」と言うから、説得力ある。
まだ私なんて若いんだ。そりゃ20、30、40の人が若く見えたとしても。70歳の人にとったら50歳もまだ若い。
まぶたが下がってくるのは仕方ないとしよう。しかしとりあえず目の体操はするぞ。
固く自分に誓って、続けている。
変化はまだない。
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