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香港から来た若い学生さんたちとの楽しい時間

 「今度、香港からの学生さんたちと一緒に、近辺を観光してみる?」
 「へえ。面白そうだね」

 夫の仕事の関係で、香港から来た大学生20人たちと行動を共にする機会があった。
 
 「何のために?」「何をしていれば良いの?」などと聞くと、「何もしなくて良い」。「時々ビデオや写真でも撮ってあげて」。

 ええ! 本当に見てるだけ? 

 不思議。と思ったけど、それだけの人数を一人でも多くの日本人の大人が見守っている方が良いとか、撮影隊としてとかのようだ。

 学生さんたちからしたら、「誰なんだろう?」なんて思われたかもしれない。
 

 学生さんたちと一緒にガイドさんに英語で説明を聴くと、とてもわかりやすい英語で上手に説明される。日本語で難しい説明を聴くよりわかりやすくて、ああなるほど、そこのポイントを説明されると納得できる! といたく感心したので、声をかけて少し喋った。私より年上のおばさまだったけど、簡単な単語を駆使して、会話慣れ、説明慣れしていらした。

 私が最近、日本語を教え始めたスリランカ人の方も同行していたので、日本語の授業ではないその場では、つたない英語で会話をし、とても楽しんだ。彼の方が、その観光地によく来ていたので「いやあ勉強になるわあ。知らないことがたくさんある~」と言う私を笑っていた。

 その後、移動して、学生さんたちは弓道体験。20名ほどがワイワイする。指導する方たちは、片言の英語で手取り足取り、盛り上げてくれる。皆とても楽しそう。
 私はそれを眺め、撮影する。楽しそうな様子を眺めているのがこちらまで楽しくてニコニコしちゃう。
 可愛いな。息子とそう年齢が変わらない。息子がこうやって異国に来たとしたら、その土地のアクティビティをこんな風に楽しめるのかな。

 さらに、絵付け体験。
 動物か、木の刀かどちらかを選んで、自分でデザインする。
 これがまた良かった。

 動物は最初に赤く塗られているのだが、真っ先にそれを白く塗り替えている子を見て「先入観のない発想って良いもんだなあ~」としみじみ眺めた。
 木刀は意外にも女子に人気で、最初スマホばかり見ているからやる気にならないのかなと思っていると、刀のデザインを探しているようだった。それを見ながら、まず持ち手、柄の部分を真っ黒に塗り始める子。刃の部分も好きな色に塗る子がいる。さっきまでのワイワイが嘘のように、皆がシンとして熱心に塗っている。

 その真剣な様子がまたとても可愛い。

 切り上げる時間を何度か知らせても、一向に終わる気配がなく、限界まで時間を取って、ようやく終えた。

 それでもその時間までに終わらせなければならない、なんて思っていないようで。偶然出来上がった子もいるけど、片面だけの子もたくさんいた。

 皆のを見せてもらったら、男子でもピンク色に塗っている子、白く塗った動物に目や鼻を描くわけでなく模様を描いた子、刀の刃の部分に色とりどりの模様を入れる子、個性が様々でとても楽しかった。

 若い頃に、某インターナショナルスクールで、人のつてで急な代打、補充を頼まれて、ほんの二ヶ月弱、中学生を教えたことを思い出した。彼らは集団になっても、個人個人が独立した意見ややり方を持っていて、それを表に出すのを恐れていない。いや、そりゃあ細かく言えば色々いる。そのインターナショナルスクールでは日本語を教えていたので、授業をとる子は日本人も多かったし、周りの空気を読む子とか、大人しくしている子とか、いた。それでも授業は活発だったし、出すレポートはバラエティに富んでいた。


 そして自分の修学旅行も思い出した。
 特に中学生、高校生の頃の修学旅行。個人で旅行したら、気ままに、できるだけ何も目的を持たないで動きたいタイプ。でも学生の修学旅行は何かしらアクティビティを強要される。そしてそれもまた修学旅行独特の面白さなのだ。ああ私なら何もしない! ウロウロするだけ! ってところを何か作ったり、見学したり、それがつまらなくても上手く出来上がらなくても、記念になる。家に帰ってからそれを見て、その時の空気感や皆の騒ぎっぷりを思い出してほのぼの、或いはニヤニヤする。


 結局私は皆のためにペットボトルを買い、ビデオやスマホで撮影し、何となく見守るためだけにいたけれど、心が充実した。夫の様子を見ていると、時間の調整でバスの人やら旅館の人やらに連絡を度々取って大変そうだったし、皆が揃っているか常に意識するのは私も気を遣って疲れたけれど。
 中学や高校の引率の先生方ってヘトヘトになるんだろうなと想像する。しかも夜は夜で騒ぐから、先生にとって修学旅行は全然楽しいものではないのかもしれない。

 私は旅館に泊まるわけでもないので、車を駐車した場所で降ろしてもらい、帰宅する。そこで手を振ってバスを見送ると、学生さんたちが皆、笑顔で手を振り返してくれた。

 個性が出るのをためらわない子たち、若い子たちの感性、修学旅行のような体験、ちょっとしたくくり、色々感じながら、ただそこにいる楽しさを思い出にして、素敵な時間を過ごせた。

 穏やかで伸び伸びとした香港の学生さんたち、今、特に色々大変だと思うけれど、そのまま穏やかで伸び伸びとした未来があることを、私も祈っています。

 そして夫よ。体調悪くて落ち込みがちだった私に、思わぬプレゼントとなったよ。ありがとう。


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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。