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目次とまえがき『あなたは絶対に効果的な学習法に気づけない』 #学習の心理学

この記事は、晶文社から刊行予定の『学習の心理学』の本の「まえがき」と「目次」です。
noteで全文を連載してから書籍化する予定なので、よろしくお願いします!


目次

まえがき『あなたは絶対に、効果的な学習法に気づけない』(本項)

第1章『テストは、試験なんかじゃない』
- テストは誤解されている
- なぜアウトプットが大事なのか?
- テストとは何か?
- なぜテストは忘却を防ぐのか?
- なぜテストは理解力を高めるのか?
- それでも人々がテストを受け入れない理由


コラム『アウトプットの技法①』
- それ、自分の言葉で語っていますか?


第2章『あなたは、自分が忘れるということを、忘れる』
- 忘却曲線は誤解されている
- なぜ復習は大事なのか?
- いつ復習をすれば、もっとも効果的なのか?
- どのように復習をすれば、もっとも効果的なのか?
- それでも人々が復習をしない理由
- 『テスト効果』と『分散効果』を知っている人は、ほとんどいない


コラム『アウトプットの技法②』
- 人間は自分が大好き♡


第3章『一つのことを一生懸命...やってはいけない!!』
- 努力は誤解されている。
- 真面目な人ほど要注意。お手玉実験が暴いた驚愕の真実!
- なぜ多様練習は効果的なのか?
- なぜ学習では邪魔が重要なのか?
- 試験を受ければ受けるほど頭が良くなってしまう理由
- マルチタスクVSモノタスク
- 人間は真実に納得しない。


コラム『アウトプットの技法③』
- あのね、速読、不可能だから。


第4章『学習でもっとも重要なのは、IQなんかじゃない』
- IQは誤解されている
- 『頭が良い』と褒めるな!
- 心理学的に効果的な目標の立て方
- 心理学的に効果的な習慣のつけ方
- 心理学的に効果的な環境の作り方
- 緊張と不安を味方につける方法
- あなたの脳は、いつまでも成長できる

コラム『アウトプットの技法④』
- ただただ、楽しもう。

あとがき『僕がこの本を書いた理由』

参考文献


まえがき
『あなたは絶対に効果的な学習法に気づけない』


私たちが信じている学習法の多くは、『誤り』です。

たとえばあなたは、ご両親や先生にこう教わりませんでしたか?

「教科書をなんどもなんども読み返しなさい」
「学んだら、すぐに復習をしなさい」
「一つのことを、できるようになるまでなんども繰り返しなさい」

あなたがもし、過去にこうした指導を受けたことがあるなら、この際きっぱり忘れてしまいましょう。

これらの学習法は、現代では『効果が低い』と判明しています。


さらに悪いニュースがあります。

アメリカの心理学者が大学生に行った調査によると、『科学的に根拠のある効果の高い学習法』を実践していた大学生は、わずか11パーセントしかいませんでした(1)。

つまり、およそ9割の大学生は、『効果の低い学習法』を行っていたのです。

学ぶことが本業の大学生でさえこの有り様なのですから、調査対象を広げれば、もっと悲惨な結果が待っていることでしょう。

私たちのほとんどは、『効果的な学習』を行ってはいません。

いったいなぜでしょうか?
そんなに優れた学習法があるなら、みんな飛びつくようにそれを行ってもいいはずですよね?

この不思議な現象を解く鍵は、私たちの『脳の錯覚』にあります。

私たちは『錯覚』のために、効果的な学習法を行うことができないのです。

下の画像をみてください。

画像1

この横線、傾いて見えますよね?
斜めに見えます。

しかし、実はこの横線、傾いてなどいないのです。

(ピンク色の補助線は、僕が引きました。神に誓って水平です。)

画像2

これは「カフェウォール錯視」と呼ばれる、「目の錯覚」の一つです。

さて、あなたは最初に上の画像を見たとき、横線が「水平」であることに気づくことができたでしょうか?

あなたはきっと、水平であることに気づくことができなかったはずです。

「錯覚」の恐ろしいところは、自分が錯覚していることを、自分自身で気づくことができないところにあります。

そして効果的な学習法が行われていない理由も、あなたがカフェウォール錯視に気づけなかった理由と同じです。

あなたは『錯覚』のせいで、効果的な学習法を、『効果が低い』と勘違いしているのです。
また、効果の低い学習法を、『効果が高い』とも勘違いしています。

そしてそのことに、あなた自身は気づいてはいない。

実は、あなたはすでに効果的な学習法を行ったことがあるはずなのです。
ただあなたは、その学習法が効果的であると気づいていません。『錯覚』のために。

私たち人間がもつこうした「錯覚」のことを、心理学では『認知バイアス』と呼んでいます。

私たちは認知バイアスによって、効果的な学習法に気づくことができません。

これが、効果的な学習法が9割の人々に行われていない理由の一つです。


そしてあともう一つ、効果的な学習法が行われない理由があります。

その理由とは・・・。
もう一度あの「カフェウォール錯視」を見ていただければ、よくわかるはずです。

画像3

さぁ、あなたはすでに、この画像の横線が水平線であることは知っているはずですね?
だから、あなたの目にも、上の画像は水平線に見えるはずですね?

・・・そう、見えないのです。

あなたは、知識として、上の画像が水平線であることを知っています。
しかし、それでもあなたの目には、上の画像の横線は傾いているように見えてしまうのです。

つまり、あなたは『錯覚』に気づいても、あなたの『感覚』までは修正することはできないのです。

これが、効果的な学習法が9割の人々に行われないもう一つの理由です。

あなたはこの本を読めば、知識として『科学的に高い効果が証明された学習法』を知ることができます。

しかし、あなたは、その学習法を実行に移せないかもしれません。

なぜなら、効果的な学習法は、感覚的には、およそ効果的とは思えない学習法だからです。

効果的な学習法を実践することは、カフェウォール錯視をみて、「水平線だ」と言い張ることに似ています。
たとえ真実であったとしても、あなたにはそれが真実であるようには見えない。
『自分の感覚に反する効果的な学習法』を実践するのは、とても大変なことなのです。

まとめると、「効果的な学習法」が人々に知られず、実践されない理由は次の二つです。

1, 『錯覚』によって、効果的な学習法に気づかない。
2, 『錯覚』によって、効果的な学習法を知ったあとでも、その学習法が効果的であるとは思えない。


この二つの理由によって、この世の9割の人々は、効果的な学習法を無視して、効果の低い学習法を続けているのです。

「錯覚」は、頭の良さに関係なく、人間なら誰しも共通してもっているものです。
だからこそ、効果的な学習法は、人類には受け入れられにくい。

錯覚を克服するために必要なのは、「頭の良さ」ではありません。
今あなたがカフェウォール錯視をみて「水平線だ」と答えるときに使う、「意志の力」です。

もしも、あなたが錯覚に惑わされず、「効果的な学習法」を取り入れる意志をもっているなら、この本はあなたの役に立つでしょう。

そしてもし、あなたがこの本で紹介する「効果的な学習法」を実践したならば、あなたは選ばれし11パーセントの人間になることができます。

この世の89%が効率の悪い学習を続ける中で、あなたは効率的に学び、成長することができます。

それを決めるのは、あなたの頭の良さではありません。
あなたの『意志』です。

さぁそれでは、みんなが知らない『学習の真実』を紹介していきましょう。




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相川真司(かわんじ) #DiQt
あなたの貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!