見出し画像

プラットフォームが初期ユーザーを集めるための8つの戦略と事例紹介

ブログやマッチングサービスのような、価値を生み出す『生産者』と価値を消費する『消費者』の二種類のユーザーがいるサービスを、『プラットフォーム』や『ネットワーク製品』と呼びます。

Twitterやメルカリ、そして今あなたが読んでいるnoteも、「プラットフォーム」と呼ばれるサービスです。

しかし、このプラットフォームの立ち上げには、一つ大きな壁があります。

それは、『立ち上げ初期に機能させるのがとても難しい』という問題です。

プラットフォームでは『生産者』と『消費者』の2種類のユーザーを集めなくてはなりません。
しかし、サービス立ち上げ時には、このユーザーを集めて実際にサービスを機能させるのに大変苦労します。

なぜならプラットフォームでは、『生産者が増えないと消費者が増えない一方で、消費者が増えないと生産者が増えない』というジレンマがあるからです。

たとえばメルカリであれば、出品者が増えないと購入者は増えない一方で、購入者が増えないと出品者も増えません。
ブログなら、執筆者がなければ読者も増えませんが、読者がいなければ執筆者も増えません。

こうした「生産者」と「消費者」の関係を、「鶏がいなければ卵が生まれない一方で、卵がなければ鶏が生まれない。」というジレンマに見立てて『鶏卵問題』と呼んだり、「コールドスタート問題」と呼んだりします。

8つの戦略 (5)

そしてプラットフォームにとってこの鶏卵問題が深刻なのは、サービス立ち上げ初期というのは、たいてい「生産者(卵)」も「消費者(鶏)」もいないゼロからのスタートであるためです。

生産者か消費者かどちらか一方を連れてこようにも、それぞれに活動を促せるようなメリットを提供できないため、成長が難しいのです。

このnoteでは、この鶏卵問題を解決するための戦略と、実際の事例を紹介します。

このnoteは、主に「プラットフォーム・レボリューション 」(ジェフリー・G・パーカー,マーシャル・W・ヴァン・アルスタイン, サンジート・ポール・チョーダリー著)」「ネットワークエフェクト(アンドリュー・チェン著)」の2冊を参考にしています。

他にもおすすめの書籍があれば、ぜひ教えていただきたいです。

プラットフォーム・レボリューションによると、プラットフォームが鶏卵問題を解決するための戦略は大きく分けて「8つ」あるそうです。

8つの戦略


1, フォロー・ザ・ラビット戦略

8つの戦略 (1)

フォロー・ザ・ラビット戦略とは、プラットフォーム以外のサービスを用いて成功モデルを作り、その成功モデルをもとにプラットフォームを構築することで、消費者と生産者の両方を呼び込む戦略です。

ちょっと意味わかんないですね。
具体的に説明しましょう。

メルカリやフリル(現ラクマ)といったフリーマーケットアプリは、サービス立ち上げ時、ユーザーを集めるのに大変苦労されたようです(参考)

一方で、アマゾン・マーケットプレイスは、立ち上げ時のユーザー集めに苦労しませんでした。

しかし、フリーマーケットアプリもアマゾン・マーケットプレイスも、「生産者が商品を出品し、消費者が商品を購入する」という構図は同じです。

なぜ2つのあいだに、このような違いが生まれたのでしょうか?

その答えは、『プラットフォームをユーザーに提供する前に、プラットフォーム以外のサービスでプラットフォームに転用可能な「成功モデル」をもっていたかどうか』にあります。

アマゾンは、マーケットプレイスというプラットフォームを提供する前に、「オンライン小売店」として自分たちで商品を仕入れ、顧客に販売していました。
この「オンライン小売店」こそが、フォロー・ザ・ラビット戦略で追われる『成功モデル(ラビット)』です。

「オンライン小売店」として成功するために、すでにアマゾンは効率的な流通システムを構築し、豊富な製品リストで「消費者」をたくさん惹きつけていました。

そしてアマゾン・マーケットプレイスというプラットフォームは、この「オンライン小売店(成功モデル)」として構築した流通システムと消費者を、『生産者』側にただ開放しただけなのです。

かくして、「成功モデル」という名のウサギを追いかけようとする生産者は増えに増え、そして増えた生産者は消費者を呼び込み、鶏卵問題は解決されるというわけです。

一方でフリーマーケットアプリには、「オンライン小売店」のような多くの消費者を用意してくれる前身サービスはありませんでした。
フリマアプリは、ゼロからいきなりプラットフォームを構築・提供しなければならなかったため、鶏卵問題から、生産者・消費者を呼び込むのに苦労したというわけです。

このフォロー・ザ・ラビット戦略は、とても興味深い戦略です。

なぜなら、『プラットフォームとして成功したければ、いきなりユーザーにプラットフォームを提供すべきではない』という逆説的なメッセージをもっているからです。

この逆説的なメッセージが伝わるように、もう一例、フォロー・ザ・ラビット戦略を採用したサービスをご紹介しましょう。

ハフィントン・ポスト紙は、日本ではメディアとしてよく知られていますが、アメリカでは革新的なプラットフォームを構築したことでも有名です。
そしてそのプラットフォーム化するまでの戦略に使われたのが、フォロー・ザ・ラビット戦略でした。

ハフィントン・ポストは 、まずはライターを雇い、多数の高品質なブログを掲載することで、多数の読者を獲得しました。
これによってメディアとしての成功モデルをつくりあげたハフィントンポスト は、ユーザーがハフィントンポスト にブログを投稿できるようにすることで、プラットフォームとして人気を博しました。

メディアという前身サービスで獲得した多数の読者を求めて、ブロガーがハフィントンポスト へ記事を投稿し、その記事によってブロガーのフォロワーが新たにハフィントンポスト の読者になる、という良いサイクルが回ることで、ハフィントンポスト は鶏卵問題を解決したのです。
(ちなみに2018年、ハフィントンポスト はこのブログ投稿機能を廃止しました。理由など詳細はこちら。)

8つの戦略 (2)

フォロー・ザ・ラビット戦略では、いきなりユーザーにプラットフォームを提供する前に、プラットフォームの前身となるサービスを提供します。

たとえば、AmazonならECサービス、ハフィントン・ポストならWebメディアです。

この前身サービスを成功に導き、「成功モデル」をもとにプラットフォームを構築し提供することで、プラットフォームを成功に導くという二段構えの戦略が、『フォロー・ザ・ラビット戦略』なのです。

フォロー・ザ・ラビット戦略は、前身サービスを成功させれば鶏卵問題を解決できる優れた戦略ではありますが、前身サービスの成功によるイメージが強すぎて、プラットフォームとして認知されにくくなるかもしれません。

AmazonはECサービス、ハフィントン・ポストはメディアというイメージが強いと思います。

『フォロー・ザ・ラビット戦略』まとめ

・「フォロー・ザ・ラビット戦略」とは、まずプラットフォーム以外のサービスをユーザーに提供し、そのサービスを成功させてから、成功したサービスをもとにプラットフォームを構築して提供する戦略のこと。
例:「ECサービス⇨マーケットプレイス」「メディア⇨CGM」

・フォロー・ザ・ラビット戦略は、前身サービスを成功させれば鶏卵問題を解決できる優れた戦略ですが、前身サービスの成功によるイメージが強すぎて、プラットフォームとして認知されにくくなるかもしれません。

2, 便乗戦略

8つの戦略 (3)

便乗戦略とは、他のプラットフォームのユーザーを、自分のプラットフォームへ参加してくれるように促す戦略です。

自分のプラットフォームにユーザーが少ないために鶏卵問題を解決できないのであれば、ユーザーが多いプラットフォームからユーザーやコンテンツを連れてくることで、鶏卵問題を解決しようという戦略です。

便乗戦略をとった例の一つは、YouTubeです。
2005年の黎明期のYoutubeは、当時最大のSNSであったMyspaceのインディーズバンドの会員に狙いを定め、彼らが求める「外部サイトへの動画の埋め込み機能」などを提供することで、Myspece経由でユーザーや動画を獲得していきました。

面白いことに、日本のニコニコ動画もまた、そのYouTubeに対する便乗戦略で初期ユーザーを獲得しています。
当初のニコニコ動画は、YouTubeからもってきた動画にコメントをつけるサービスで、YouTube経由でユーザーと動画を増やしていきました。
(そしてYouTubeからアクセスを遮断されるまでにトラフィックを生みました笑)

こうした便乗戦略は、今なお初期のプラットフォームにおいては有力な成長戦略のようです。

決済サービスPayPalは、eBayというECサービスで主要な決済方法となることで爆発的に利用者を増やし、
Airbnbは、ユーザーの投稿した住宅情報を、CreigListという広告プラットフォーム上にも同時投稿する仕組みによってユーザーを爆発的に増やしました。
他にもTwitterで人気のマシュマロやクイズメーカーといったサービスも、中心となるユーザー体験にシェアが深く組み込まれている点で、Twitterへの便乗戦略であるといえます。

(Youtube, PayPal,Airbnbの便乗戦略は、下のリンクでも紹介されています)


8つの戦略 (4)

便乗戦略において重要なのは、『ゼロから利用者(消費者)やコンテンツ(生産者)を集めずに、自分よりも大きなプラットフォームから利用者やコンテンツを連れてくる点』です。

そのため、プラットフォーム立ち上げ初期でも、多くのユーザーやコンテンツを集められるという利点があります。

ただ、この便乗戦略には、忘れてはならない重要な視点があると思います。

それは、他のプラットフォームに便乗したときに、単なるコピーサービスになるのではなく、自分のプラットフォームで独自の付加価値をつけられるか?という視点です。

Youtubeは、Myspaceに便乗しましたが、Myspaceが提供できなかった『外部サイトへの動画の埋め込み』という独自の付加価値を提供しました。
ニコニコ動画は、Youtubeに便乗しましたが、Youtubeが提供できなかった『動画を流れるコメント』という独自の付加価値を提供しました。

こうした独自の価値があれば、便乗戦略も反感を買いにくいかと思いますし、ビジネス的にもプラットフォームは競合優位性を得られます。

『便乗戦略』まとめ

・便乗戦略とは、他のプラットフォームのユーザーやコンテンツを、自分のプラットフォームへ連れてくる戦略です。

・便乗戦略は、立ち上げ初期でも多くのユーザーやコンテンツを集められる利点がありますが、他のプラットフォームに便乗することによってどのような付加価値がつけられるかが重要です。


3, 種まき戦略

8つの戦略 (5)

種まき戦略とは、プラットフォーム企業自らの働きかけによって、プラットフォームの参加者を活性化させる戦略です。

鶏卵問題を抱えたプラットフォームには、ユーザーの「活動」というものがありません。
この「ユーザーの活動」をプラットフォーム企業の働きかけを「呼び水」にして生み出すことで、鶏卵問題の突破しようというのが、種まき戦略です。

たとえば、後発のスマートフォン用OSであるAndroidを開発したとき、Googleが行った施策がそれでした。

Googleは、「ゲーム」や「生産性」や「エンターテイメント」など10のカテゴリーのそれぞれで最高のアプリを用意した開発者に、『賞金500万ドルを贈呈する』、というキャンペーンを貼りました。

当然、Androidのアプリプラットフォームには、賞金を目指して開発者(生産者)が殺到します。
そして、実際に賞金を受け取れるほど素晴らしいアプリが世に出たなら、そのアプリは、カテゴリーのマーケットリーダーとして他の大勢の消費者も呼び込むことになるため、プラットフォームには鶏卵問題と無縁の好循環が生まれるのです。

また決済サービスのPayPalは、新規登録者に10ドルをプレゼントし、既存ユーザーは、PayPalに友人を紹介すると10ドルもらえるキャンペーンを行いました。

このキャンペーンによって、PayPalはユーザーを爆発的に増やし、さらにプレゼントされた10~20ドルをつかって、実際にユーザーに決済を利用してもらうことに成功したのです。

しかし、種まき戦略は、ユーザーに大金をばらまかなくてはできないというわけではありません。

むしろほとんどの種まき戦略は、お金よりも汗の匂いのする、とても泥臭いものです。

たとえば掲示板サイトRedditは、立ち上げ当初、自作した偽のアカウントを使って、創設者がサイト上にあって欲しいと思ったコンテンツを投稿し、掲示していくことを「呼び水」にして、他のユーザーの活動を促しました。

日本でも展開しているQ&AサービスであるQuoraでは、発足当初、Quoraのスタッフが質問を投稿し、それにスタッフが自ら答える形で、プラットフォーム上で活動が行われているように「装って」いました。
そしてこれらの活動をみてユーザーが質問してくるようになると、スタッフがその質問に答え続けることで、ユーザーを巻き込んでいったのです。

日本でも、メルカリやフリルといったフリーマーケットアプリは、立ち上げ当初、会社のメンバーが商品を出品したり、出品してから一定期間経った商品をメンバーが購入する、などの活動を行うことで、他のユーザーの活動の「呼び水」をつくっていました。

8つの戦略 (6)

こうした種まき戦略は、あえて悪いニュアンスで表現すると「自作自演」「サクラ行為」ともいえます。
実際、出会い系サービスでは、偽の魅力的な女性のアカウントを作成することによって、男性ユーザーをプラットフォームに引きつけるなども行われています。

こうした自演的な種まき戦略は、「フリントストーン戦略」として知られており、多くのサービスで用いられてきました。
フリントストーン戦略とは、サービス初期に運営者が「人力」でコンテンツを拡充したり、ユーザーのニーズに応えたりすることです。
YouTubeでさえ、創業初期は、創業者が自ら動画を投稿していたのです。

この「種まき戦略」「フリントストーン戦略」には、長期的に見てポジティブな効果もあります。

初期のプラットフォームに弾みがつくだけでなく、参加してくる生産者の間にも、運営者が作成したコンテンツの種類や品質を維持しようという意識が生まれることです。

言い換えると、運営者の自演によって、プラットフォームのその後の「方向性」や「文化」を醸成することができるのです。

Androidアプリの10のカテゴリーに対する賞金は、Androidのアプリプラットフォームがどんなアプリを重視しているかを示しました。

RedditやQuoraの自演コンテンツは、それぞれのコミュニティに高い品質をもたらそうとする文化を生み出しました。

フリルが出品した商品は、女性ものの服や雑貨だけでしたが、それによってフリルは若い女性から圧倒的支持を得るフリーマーケットアプリになることができました。

種まき戦略は、プラットフォーム企業の汗くさい努力に支えられていますが、こうした努力はプラットフォームの鶏卵問題を解決するだけでなく、プラットフォームの文化を方向づける役割をも果たすのです。

『種まき戦略』まとめ

・種まき戦略とは、プラットフォーム企業自らの働きかけを呼び水にして、プラットフォームの参加者を活性化させる戦略です。

・種まき戦略は、運営側の労力が必要な戦略ですが、初期のプラットフォームに弾みをつけるだけでなく、プラットフォームのその後の「コンテンツの質」や「文化」を醸成することができます。


4, 看板戦略

8つの戦略 (7)

看板戦略とは、重要なユーザーやコンテンツを引きつけることで、プラットフォームに参加したくなるインセンティブを提供する戦略です。

これについては、あまり多くの説明は必要ないかもしれません。

ある強力なユーザー、ある強力なコンテンツが参加するだけで、プラットフォームの鶏卵問題を解決できてしまうことがあります。

有名人やインフルエンサーをユーザーとして迎えたり、有名タイトルをキラーコンテンツとして扱うことができれば、プラットフォームはそれらのフォロワーを新たな消費者として獲得することができます。

Q&AサービスのQuoraは、オバマ大統領やFaceBook COOのシェリル・サンドバーグなどの有名人に参加してもらうことでユーザーを増やしました。

日本でもVALUやタイムバンクといったサービスは、有名人に生産者として参加してもらうことで多くの消費者を引きつけました。

有名人が主宰するオンラインサロンなどは、この看板戦略がよく働いている例であると思います。

看板は、人であるとは限りません。
キラーコンテンツやそれの提供元も、看板になります。

例えば、任天堂、ソニー、マイクロソフトなどがゲームプラットフォームを構築する時、ゲーム会社のエレクトリック・アーツ社(EA)と特別のパートナーシップ契約まで行い、EAのゲームを自社プラットフォームで扱えるようにしたがるのは、キラーコンテンツはそれほどまでにプラットフォームに多くのユーザーをもたらすためです。

8つの戦略 (8)

看板戦略は、鶏卵のジレンマを突破する有効な施策であると思いますが、プラットフォームの人気が看板に依存したままだと、看板の活動や影響力が少なくなったときには、プラットフォームの衰退につながりかねません。

看板戦略は、プラットフォーム自体の魅力を前提とした戦略であると言えるでしょう。

『看板戦略』まとめ

・看板戦略は、重要なユーザー層を引きつけることで、プラットフォームに参加したくなるインセンティブを提供する戦略です。

・有名人やキラーコンテンツは、多くのユーザーを誘引する要素ですが、プラットフォームの人気が看板に依存したままだと、看板がなくなったときにプラットフォームの衰退につながります。


5, シングルサイド戦略

8つの戦略 (9)

シングルサイド戦略とは、消費者か生産者かのどちらか一方のユーザーに役立つサービスを中心にビジネスを生み出したあと、そのユーザーと関わりたいと思っているもう一方のサイドのユーザーを引きつけて、最初のビジネスをプラットフォーム・ビジネスに転換させる戦略です。

シングルサイド戦略は、『プラットフォームを成功させるために、プラットフォームからはじめない』という点で、フォロー・ザ・ラビット戦略の一部です。

実際、フォロー・ザ・ラビット戦略で紹介したアマゾン・マーケットプレイスは、シングルサイド戦略と呼ぶこともできるでしょう。

プラットフォームにおける鶏卵問題とは、「生産者がいなければ、消費者は生まれない。消費者がいなければ、生産者が生まれない」というジレンマです。
そのため、このジレンマを解決するもっともシンプルな方法は、『生産者か消費者のどちらか一方を、無理やり一定規模まで生み出す』というものです。

シングルサイド戦略のわかりやすい例が、レストラン予約サービスである「オープンテーブル」の用いた手法です。

レストラン予約サービスでは、典型的な鶏卵問題が発生します。
なぜなら、サービスに参加するレストランの数が少なければ、利用客にはサービスを訪問すべき理由がないし、利用客が少なければ、レストランもサービスに参加しようとは思わないからです。

そこでオープンテーブルは、まずレストランに「座席の管理に役立つ予約管理ソフトウェア」を配布しました。
そして、この予約管理ソフトに十分な数のレストランが集まると、次は予約管理ソフトを、予約を行う消費者サイドに開放しました。
そして消費者が実際に席の予約をするようになると、レストランから見込み客の紹介料を徴収できるようになったのです。

8つの戦略 (10)

つまり、『はじめは一方サイドのユーザーが自己完結的に使えるツールとしてサービスを提供し、一方サイドのユーザーを集めたあとで、もう一方のサイドのユーザーにサービスを開放することによって、サービスをプラットフォーム化』したのです。

シングルサイド戦略は、「ツールで誘ってネットワークで引き止める」戦略とも呼ばれます。
たとえばドロップボックスは、初期ユーザーにはファイルのバックアップや個人的なクラウドストレージとして利用する人が多いですが、その後同僚とフォルダを共有するという用途にまで発展すれば、ドロップボックスはネットワーク製品となり、そのユーザーは人間関係というネットワークによってドロップボックスから離れにくくなるでしょう。

他にもたとえば、インスタグラムも最初は「写真にフィルターをかけて加工するツールアプリ」でした。
しかしご存知のとおり、現在のインスタグラムはSNSであり、人間同士のネットワークによって離れ難いサービスになっています。

このようにツールから徐々にプラットフォームへ移行していく「シングルサイド戦略」は、鶏卵問題を解決する上で、よく採用される戦略だったりします。

『シングルサイド戦略』まとめ

・シングルサイド戦略とは、消費者か生産者かのどちらか一方のユーザーに役立つサービスを中心にビジネスを生み出したあとで、そのユーザーと関わりたいと思っているもう一方のサイドのユーザーを引きつけて、最初のビジネスをプラットフォーム・ビジネスに転換させる戦略です。

・シングルサイド戦略は、フォロー・ザ・ラビット戦略のうち、鶏卵問題を解決する方法の一つである『一方サイドのユーザーを一定規模まで集める』ことにフォーカスした戦略です。


6, 生産者エバンジェリズム戦略

8つの戦略 (11)

生産者エバンジェリズム戦略とは、生産者が自分の顧客に対して、プラットフォームのユーザーになるよう働きかけてくれるように、プラットフォームを設計する戦略のことです。

ここまで紹介した戦略は、プラットフォームが生産者や消費者を集めることで鶏卵問題の解決を目指す戦略でした。

一方、生産者エバンジェリズム戦略は、『生産者に消費者をプラットフォーム内に連れてきてもらう』戦略です。

この戦略を活用している有名な例は、KickstarterやCampfireのようなクラウドファンディング・プラットフォームです。

クラウドファンディングで資金調達プロジェクトを立ち上げる生産者は、自分たちでSNSなどを通じて、プラットフォーム外部の人々の支援を募ってくれます。

こうした生産者が自ら消費者にセールスをしてくれる設計によって、クラウドファンディング・プラットフォームは、生産者を増やす努力のみで鶏卵問題を解決することができます。

8つの戦略 (12)

生産者エバンジェリズム戦略とは、このように生産者をエバンジェリスト(伝道者)にするプラットフォームの設計のことです。

ただ、一つ注意すべきことがあります。

生産者が伝道するのは、生産者が自分でつくったものであって、プラットフォーム自体ではないということです。

これはプラットフォームのバイラリティの設計にも共通することですが、プラットフォームの認知拡大は、直接的な形ではなく、間接的な形をとります。

クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げたユーザーは、積極的にプラットフォームの外部で自分のプロジェクトを宣伝しますが、プラットフォームについて宣伝することはありません。

プロジェクトの宣伝と、プロジェクトの成功の過程で、間接的にプラットフォームへの関心や認知が広まるのです。

したがって、生産者エバンジェリズム戦略においては、何より重要なのは『生産者の成功』ということになるでしょう。

生産者エバンジェリズム戦略における成功は、『消費者の獲得』と『新たな生産者の獲得』による鶏卵問題の解決です。
しかしそれは、『生産者の成功』の副次的な結果でしかありません。

『生産者エバンジェリズム戦略』まとめ

・生産者エバンジェリズム戦略とは、生産者が自分の顧客に対して、プラットフォームのユーザーになるよう働きかけてくれるように、プラットフォームを設計する戦略のことです。

・生産者が宣伝するのは、生産者が自分でつくったものであって、プラットフォーム自体ではないので、プラットフォームは『生産者の成功』を優先することが重要です。


7, ビッグバン適応戦略

8つの戦略 (13)

ビッグバン適応戦略とは、プラットフォームに膨大な量の関心や注目を集めるために、プッシュ型のマーケティング手法を使う戦略のことです。

「プッシュ型のマーケティング手法」とは、インターネット広告、テレビCM、Eメール配信、PRなど、伝統的な企業が使う『認知を獲得するためのマーケティング施策』です。

こうしたプッシュ型のマーケティング手法は、当然ながら、ユーザーを集めるのに役立ちます。

Twitterは、映画、音楽、技術の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト2007」にて、1万1000ドルを投じて巨大なパネルスクリーンを設置し、スクリーンにツイートを表示するマーケティングを行うことでTwitterの利用状況を3倍にしました。

出会い系アプリTinderは、南カリフォルニア大学の社交パーティー中にサービスを提供して大ブレークしました。
こうしたパーティは、そもそも交際相手を探している若い男女が集まる場所であったためです。

メルカリはローンチ初期、毎月5000万円ずつ広告に利用することで、後発ながら一気にダウンロード数を伸ばし、フリーマーケットアプリのマーケットリーダーとなりました。

8つの戦略 (14)

このようにプラットフォームの鶏卵問題は、伝統的なマーケティング手法でも解決することができます。

ただ注意すべきは、プッシュ型マーケティングで『サービスの認知を集めること』と、『サービスが利用されること』は同じではないということです。

プラットフォームにおける最重要指標は、ユーザーの『利用』であり、それはクリティカルなユーザー体験から生まれます。

このユーザー体験の磨き込みが不十分なまま認知だけ獲得しても、ユーザーの定着につながらず、「穴のあいたバケツに水を注ぐ」が如しだというのは、よく聞く警句なので、気をつけたいものです。

たとえば、2019年にサービス終了したSNS「Google+」は、ビッグバン型立ち上げの失敗の例としてよく挙げられます。
このSNSは、Googleの大資本を背景に、大規模な広告と宣伝によって立ち上げから数ヶ月で9000万人ものユーザーを獲得したものの、その離脱率は高く、利用時間も短かったといいます。
お金に任せて大量にユーザーを集めれば、確かに鶏卵問題を解決することはできるかもしれません。
しかし、本当に価値あるプラットフォームを提供できるかどうかは、大量にユーザーを集める前の「ネットワーク構築」と「コアなユーザー体験の磨き込み」にかかっているのです。

少なくとも「ネットワーク・エフェクト」の著者のアンドリュー・チェン氏は、「ビッグバン型で立ち上げたネットワークは脆い」と断言して一章語っているほどなので、この戦略を採用する前に一読されておくと良いかもしれません。

『ビッグバン適応戦略』まとめ

・ビッグバン適応戦略とは、プラットフォームに膨大な量の関心や注目を集めるために、認知獲得型のマーケティング手法を使う戦略のことです。

・伝統的なマーケティング手法は、今なおユーザーを集めるのに効果的ですが、プラットフォームの利用と定着を促すためにはコアなユーザー体験の磨き込みがまず重要です。

8, マイクロ市場戦略

8つの戦略 (15)

マイクロ市場戦略とは、すでにメンバーが交流している極小市場をターゲットにすることから始める戦略です。

この戦略をもっともうまく活用したサービスは、Facebookでしょう。

フェイスブックは立ち上げ当初、ひどく低迷していました。

プラットフォームの中でもSNSは、後発参入者がつけ入る隙が最も小さい分野です。
当時のSNSには、2〜3ヶ月で300万人以上のユーザーを集めた「Friendster」や、数千万人の会員をもつほど急成長していたMyspaceという先行者がいました。
この状況で、もしFacebookが世界中でサービスを始め、すぐに登録してくれたのが数百人か数千人だったとしたら、Facebookは軌道にのらなかったでしょう。

なぜなら、「世界」というような、ユーザーが広く分散し、出入りも不規則な状況では、よほどのユーザー数でもいない限り、プラットフォーム上でユーザー同士の活動そのものが起きないからです。

そこでフェイスブックは、ハーバード大学という閉鎖的なコミュニティでのみ利用できるようにしました。
これは手近で始めたという安易なものではなく、鶏卵問題を解決する巧妙な戦術でした。

Facebookは、ハーバード大学という地理的、社会的に集中度の高い場所で、最初の『500人』のユーザーを得ましたが、これによってサービス開始時点ですでに、Facebookは確実に活発なコミュニティを作ることができたのです。

Facebookはその後の拡大においても、同じくマイクロ市場戦略を用いました。
「大学」という小さいながらも密集していてユーザー同士の活動の起こりやすいコミュニティを単位に拡大を続けることによって、プラットフォームを成長させていったのです。

ただし、マイクロ市場戦略は、地理的に集中することだけではありません。

カテゴリーに集中することもまた、強力なマイクロ市場戦略です。

スタック・オーバーフローというQ&Aサービスは、最初は、プログラミングに関する質疑応答サービスとして始まりました(日本では今でもそうです)。

その後、ユーザーの要望が多かった『料理』というカテゴリーにもサービスを拡大させていったのです。

8つの戦略 (16)

初期のプラットフォームにとって、なぜマイクロ市場戦略はこれほどまでに強力に働くのでしょうか?

それは、マイクロ市場に集中すればするほど、プラットフォーム上で『ユーザー同士の活動を生み出すために必要な参加者の数』が少なくて済むためです。

逆に、サービスが扱うカテゴリーが多いと、それだけプラットフォーム上で『ユーザー同士の活動を生み出すために必要な参加者の数』は多くなります。

これは簡単な説明です。
プログラミングに興味のある人は、料理に興味のある人よりも、同じようにプログラミングに興味のある人とコミュニケーションを取りたいと考えます。
もしそれぞれのカテゴリーでユーザー同士の活動が起こせる最低人数が100人だとしたら、1つのカテゴリーなら100人で済むところが、2つのカテゴリーなら200人必要なのです。
(ちなみに、この現象は心理学では「類似性」と呼ばれます。類似性については、以前書いた「オンラインサロンについての記事」で紹介しました。)

プラットフォームの本質は、『ユーザー同士の活動』です。
なので、ユーザー同士が活動しやすいように、うまく興味の重なるユーザー同士をマッチングさせないといけません。
きちんとユーザー同士がマッチングしないと、プラットフォームで活動が生まれないのです。
活動が生まれないどころか、ミスマッチなユーザーが増えることによって『負のネットワーク効果』まで発生します。

このマッチングの問題は、大手企業の人気サービスは、人工知能を使ったキュレーションやレコメンドシステムによって解決しています。
しかし、立ち上げ初期のサービスに、そんな高度なマッチングシステムを実装する余裕はありません。

そして機能するマッチングシステムがないのなら、サービス自体に制約をかけてユーザーやコンテンツをフィルタリングすることでしか、効果的なユーザーのマッチングを実現することはできないのです。

そして、そのユーザーのマッチングのためのフィルタリングこそが、『マイクロ市場戦略』なのです。

マイクロ市場戦略の利点は、市場を絞り込むことによって、プラットフォームが成長段階のごく初期であっても、効果的なマッチング機能を提供できるようになることです。

そして、市場を絞り込むほど、少ないユーザー数で効果的なマッチングができるということは、すなわち『少ないユーザー数で鶏卵問題を解決することができる』ということでもあるのです。

そして、カテゴリーを絞り込んだ上で、さらにそのカテゴリーの中でも『すでに交流が起きているコミュニティ』に便乗することができれば、より少ない人数であっても盛り上がりを生み出すことができます。

『マイクロ市場戦略』まとめ

・マイクロ市場戦略とは、すでにメンバーが交流している極小市場をターゲットにすることから始める戦略です。

・マイクロ市場戦略の利点は、市場やカテゴリーを絞り込み、すでに交流が起きているコミュニティにサービスを提供することで、少ない人数でもプラットフォームを機能させることができる点です。


金もコネもない個人開発者やスタートアップは、どの戦略をとるべきか?

ここまで紹介した8つの戦略の中には、資金やコネクションがなければ簡単に手を出せないものもあります。
「ビッグバン適応戦略」や「看板戦略」などはまさにそうです。

この記事を読んでいる人のほとんどは、大規模な広告にかける資金もなければ、有名人にプロダクトを使ってもらうためのコネクションもないでしょう。

そうした「持たざる者たち」にとって、a16zの投資家アンドリュー・チェン著の「ネットワーク・エフェクト」は実務的な示唆に富んだ本になるはずです。
ぜひ読んでみてください。

以降、主にこの書籍を参考に、持たざる者の戦略を紹介したいと思います。

結論から言うと、持たざる者はまず『マイクロ市場戦略』を考えるべきです。

アンドリュー・チェン氏の言葉を借りれば、ネットワーク製品はまず「アトミック・ネットワーク(プロダクトが機能するだけの必要最小限のネットワーク)」の構築を目指すべきだといいます。
そのために「あれこれ機能を揃えず、限りなくシンプルに立ち上げること」、そして「初めのターゲットは劇的に絞ったほうがいい」とのことです。

スタートアップにとって、ターゲットを絞ると投資家から「市場規模が小さい」という批判を招くことになるので、決断には勇気がいるかもしれません。
しかし、彼の言葉によれば、「市場規模が小さいという批判はいったん無視して」「ニッチな市場から始めよ」とのことです。

マイクロ市場戦略で鶏卵問題をうまく解決したサービスとしては、先ほど紹介したFacebookのほかにも、Slackやウーバーやクレジットカードがあります。

Slackは、新規登録会員を招待制にして、スタートアップコミュニティに限定して提供していました。
ウーバーは、最初期は「午後5時、通勤列車カルトレインの5番ストリートとキングストリートの駅前でタクシーに乗りたい人」というレベルの粒度でターゲットを絞っていました。
世界初のクレジットカードを発行したバンク・オブ・アメリカは、カリフォルニア州フレズノという町の住民限定でサービスを提供しました。

このようにターゲットを狭めることの大きなメリットは、『供給サイドを集めやすくなる』ことです。
実は、ネットワークを作る上で一番重要なのは「供給サイドを集めること」であり、最も難しいこともまた「供給サイドを集めること」なのです。

たとえば、Wikipediaでは、全体の利用者のうちたった0.02%の編集者が記事の大半を執筆し、ウーバーではドライバーの約5%にあたる少数のドライバーが大半の迎車依頼を請け負っています。
強力な供給サイドのユーザーを集めて定着してもらうことこそが、プラットフォームの成否を決めるのです。

そして多くの場合、マイクロ市場戦略は、供給サイドのモチベーションに影響を与えます。
ハーバード大学限定のSNSなら、すでに構築された人間関係によって、ハーバードの大学生は他のSNSより投稿しやすいでしょう。
プログラミング限定のQ&Aサービスなら、自分の専門知識に対するコミュニティの賞賛が期待できるので、プログラマーは他のQ&Aサービスより回答しやすいでしょう。
カリフォルニア州フレズノだけでしか利用できないが住民の半分が利用しているクレジットカードなら、フレズノのお店も対応する気になるでしょう。

また少数の限定されたコミュニティならば、一人当たりのサポートコストも小さく抑えられるので、その分供給サイドへの充実したサポートを提供することもできます。
それによって、コアな供給ユーザーのユーザー体験の向上に集中できるというメリットもあります。
むしろターゲットを無闇に広げすぎてしまうことで、ユーザー体験がピンぼけしてしまって、最も重要な供給サイドのユーザーのロイヤリティを損ねてしまうという事態にもなりかねません。

以上のことから、金もコネも持たざる者は、(いや、持っている者であっても)、ターゲットを劇的に絞った「マイクロ市場戦略」は、まず第一に検討すべき戦略だと思います。

マイクロ市場戦略は、投資家からは「市場規模が小さい」と批判され、ターゲット以外からは「おもちゃ」と批判されがちです。
しかし、カリフォルニアのたった一つの町でしか使えなかった「おもちゃ」が、今や100兆円という巨大な市場規模をもっている現実を見れば、まず「おもちゃ」からはじめる重要性というものが理解できるのではないでしょうか?

成功したプラットフォームの初期は、だいたいニッチな「おもちゃ」にしか見えません。
イーベイのターゲットは、コレクター。
フェイスブックは、ハーバードの大学生。
ウーバーは、金持ち向けリムジン運転手。
エアビーアンドビーは、宿泊と朝食を提供するホスト。
ティックトックは、口パクミュージックビデオの演者です。
どれも小規模でニッチな市場に向けた、金儲けになりそうにない「おもちゃ」です。
もしも私が投資家なら、こんな「おもちゃ」に投資したいとは思わないでしょう。
もしも私が大企業の重役なら、こんな「おもちゃ」に予算をつけたいとは思わないでしょう。

しかし、最終的に巨大なプラットフォームを築くためには、まずニッチな領域で「小さいが確固たるネットワーク」を築ける「おもちゃ」こそが重要なのです。
なぜなら、一つでも確固たるネットワークを築ければ、そのネットワークで培ったシステムとノウハウを援用して、隣のネットワークを征服できるからです。

たとえばFacebookは、初めこそハーバード大学限定のSNSでしたが、そのネットワークで培ったシステムとノウハウで、次はアイビーリーグ(アメリカの有名大学)のネットワークを征服し、その後は一般大学のネットワークを、その後は大学のOBが勤務している会社のネットワークを征服し、今や国境までもこえて、世界的なネットワークを征服するに至りました。

これが「おもちゃ」のなせる技です。
持たざる者であれば、それを逆手にとって、劇的にターゲットを絞った「マイクロ市場戦略」によって、まず「小さいが確固たるネットワーク(アトミック・ネットワーク)」の構築を目指すのは良い戦略でしょう。


DiQtはどのように鶏卵問題を解決したか?

最後に、自分が開発・運営している辞書&単語帳アプリ「DiQt」が、実際にこの鶏卵問題を乗り越えた方法を紹介して終わりにしようと思います。

かつて、DiQtがBooQsという名前で「問題集の投稿サービス」だった頃、アクセス数は15でした。
デイリーではありません。ウィークリーです。
サービス運営者にとって、これは控えめな地獄です。

私はこの地獄を、「マイクロ市場戦略」「シングルサイド戦略」「便乗戦略」「種まき戦略」で脱出しました。

まず「マイクロ市場戦略」として、「なんでも学べるサービス」から「英単語を学べるサービス」にまでターゲットを絞りました。
実は今もDiQtには「統計学」や「フランス語」や「地理」の問題があるのですが、「英単語」にターゲットを絞るためにすべて隠しています。

また「シングルサイド戦略」として、いきなり「問題投稿サービス」というプラットフォームから始めるのではなく、まずは「ツール」でユーザーを惹きつけるために、「ユーザーによる投稿ボタンを削除」しました。
そして、まずは問題も運営側で用意することにしたのです。
用意する問題もターゲットを絞り、「NGSL」という超基礎的な英単語に絞りました。
そして、以下のNGSLについて紹介したnoteがバズったことで、DiQtはまず「過疎」という地獄を脱することに成功したのです。

しかし、これではまだ「英単語暗記アプリ」というよくある「ツール」です。
DiQtが目指していたのは、あくまでCGMであり、プラットフォームであり、ネットワーク製品でした。

そこでDiQtは、「英単語を覚える」というニーズの横展開として「ユーザーの編集できる英和辞書」を提供しました。

しかし、最初はなかなか辞書の編集者が増えませんでした。
そこで利用したのが「便乗戦略」です。
Google Chromeの拡張機能としてDiQtを利用できるようにすることで、
Web上の英文のページをコンテンツに辞書を利用する機会を増やしました。

Chrome拡張のおかげで、ユーザーはWeb上で出会った未知語に対してもDiQtの辞書を利用するようになったため、辞書の項目の追加や編集といったユーザーの行動も格段に増えました。

また並行して、辞書の編集のロールモデルを示すために、開発者の私自身も「種まき戦略」を取りました。
現在、DiQtの英和辞書の編集履歴は1万件以上ありますが、そのうち半分ほどは私の編集履歴だったりします。

こうした地道な努力によって、少しずつDiQtは、単なる「英単語帳アプリ」というツールから、「辞書&単語帳CGM」というプラットフォームへと移行しています。

とはいえ、私もまだPMFには至っていない、手探りの段階です。
勉強すべきこと・実験すべきことはまだまだたくさんあります。
もしまた学んだことなどあれば、この記事も加筆・修正していくつもりです。
ネットワーク効果の働くプラットフォームのグロース戦略は、それほど奥が深く、学ぶ価値のあるものだと思います。

なので、読者の方でもご意見があったり、事例などをご存知であれば、ぜひ教えていただければ嬉しいです。
私は大体、Twitter運営者ギルドにいます。

宣伝

めっちゃ語彙力がつく「英和辞書&単語帳アプリ」を開発しているので、ぜひ英語を学ばれている方は使ってみてください〜〜〜!!!🙇‍♂️

Web版:

iOS版:

Android版:

Chrome拡張版:


あなたの貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!