先生の鼻毛が完全にアウトだったこととかの話
中学のとき学校の廊下で生徒たちから怖いと恐れられている先生に、しこたま怒鳴り散らされたことがあった。何をしでかしたのかは忘れてしまったけど。
怒られている最中、先生の顔を見てみるとあろうことか、鼻毛がワッサーーッと飛び出していた。
というか、鼻毛が飛び出しているのか、趣味で大量のヒジキを鼻に突っ込んでいるのか、パッと見では判断がつかないくらい飛び出していた。
「鼻毛めっちゃ出しながら、めっちゃ怒鳴ってるなぁ、この人」と、いい大人が子供相手に、鼻毛も声量もトゥーマッチなこの状況に、なんだかめちゃくちゃウケてしまい、うつむくしかできなくなった。
(自分でも、かなり性格歪んでると思う)
当時はまだ先生が生徒を殴るのは、割と日常茶飯事だった。(土地柄もあったかもしれない)
たがら、ヤバい、ここで爆笑したらこ○される。絶対に笑っちゃダメ。絶対に。
そう自分に言い聞かせながら、目線を下に。あくまで先生の顔を見ないように努めた。
気を紛らわそうと、先生の靴を見てみる。なるほど、ヒモ靴ですか。ヒモを通す穴の数は、1、2、3…、
「おいコラどこ見てんだ!!人が喋ってんだからこっち見ろっ!!なめてんのか、かわなべ!!」
万事休す。
仕方がない、絶対に笑わないぞ。
よし、先生の方に向きなお…
「ぷぷぷーーーーーっ!!!」
当然その後、ほっぺたをグーでぶん殴られた。
そんなのアリかよ、と思った。
むしろ、笑かしに来てたじゃないのあれはもう。
トラウマで、その後しばらくはひじきを見るとその先生を思い出して、とても嫌な気持ちになった。
元々大好きなひじきを奪われた気がして、とても悲しかった。
あれから20年以上過ぎた今にして思う。
やっぱあの鼻毛は、アウトでしょ。エチケットとして。
毛にちなんだ話がある。
高校の時、友達のKの家に遊びに行ったときのこと。Kが妹のモノだという手のひらサイズの電動毛抜きマシーンを持ってきて、自分の腕に当て始めた。
「それ痛くないのかよ?」と聞く僕に、
「慣れだね」と返すK。
(ほほう、オレはもう慣れてるアピールですか…)
未だ電動毛抜きマシーン童貞だった僕は、先を行かれまいと
「ちょっと貸せよ」
と、それを取り上げると、自分のスネに当ててみた。
正直、少しビビりながらスイッチをオンにしてみたところ、脳みその裏側に割としっかり稲妻が走った。
激痛である。
しかし、ここで痛がっている姿を見せようものならKにバカにされそうな気もする。
それは、誇り高き薩摩隼人としての僕のプライドが許さない。断じて許さない。
ということで、脳みその裏側にバチンバチンに稲妻を走らせながら、スネの上に毛抜きマシーンを走らせた。すり減るくらい奥歯を噛みしめながら。
「スネはさすがに痛いっs」
「いや、全然痛くないね」
食い気味で返事をしてKにマシーンを返したその時、勝利の鐘の音が聞こえた。
そして、帰宅してからまだ痛むスネを、死ぬほどさすさすしてあげた。
勝利の鐘の音を聞いたはずなのに、なんだか情けない気持ちで、しかも何がそんなに情けないのかも分からず、ただ惨めだったことを、覚えている。
これを読んだあなたも、あなた自身の毛にまつわる話がいくつか脳裏に浮かぶかもしれない。
不思議なもので、毛にまつわる話って、憂いの色を帯びている。
あなたの話も、きっとそう。
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