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秋 わびさび ぼーっと 

年齢を重ねるほど、秋という季節が好きになっている。
この頃は朝晩だけでなく、日中も肌寒さを感じる瞬間が増えてきた。
通勤時または散歩の折に、町を染める光線のセピアがかった色を目にする。
それがいかにも秋の風情で、しみじみと「いいなぁ」となる。

先日とある古本屋の店先のワゴンを物色していると、「わび」「さび」それぞれをタイトルにした新書が2冊並んであった。
なんの気なしに引っ張り出して表紙を見てみると、シリーズものの著作というわけではなく、それぞれ別の著者による本だった。

私の絵について「This is WABI SABI !」とか「Beautiful WABI SABI style!」などと、海外の方からコメントやメッセージをいただくことがある。
(ちなみに、「わびさび」はそのままローマ字書きで世界共通語らしい)
おそらく、日本的な美のことを彼らは「わびさび」と呼んでいるのだろう。

自分の絵についてそう評してもらっている私自身が、実はあんまりわびさびについて分かっていない。
どこかのタイミングで、一度わびさびについて体系的に学んでみたいと考えていたので、古書店屋で偶然手にした2冊を買うことにした。

それぞれの本に、わびについては主に珠光から利休にいたる茶の湯の系譜をたどりながら、さびについては主に短歌や芭蕉以降の俳句の系譜をたどりながら書かれている。
それらを読みつつ、私もまた俳句を作りたくなってきたのでそうしてみる。
下手な俳句を。

話は変わってここ数ヶ月、自由になる時間の中に、ぼーっと過ごす時間を積極的に作っている。
本も音楽もつけず、もちろんスマホもさわらず、ただぼーっとする。なるべく考え事もやめてぼーっと過ごす。

仕事帰りの橋の上で、暮れ方の景色をぼーっと見てみる。
外の雨音を耳に、部屋の中でただぼーっとしてみる。
ただ、ぼーっとそこに在る自分。

普段生活している中で、ふと昔のことを思い出す瞬間がある。
その時に思い返される情景の多くが、ぼーっと過ごした時間のことだと、割と最近になって気がついた私。

そういえば、ここ数年、あんまりぼーっとしていなかったな、と。
どういうわけか、忙しく過ごしていたはずの期間ほど、何をやっていたのか思い出せなかったりする。

もっと、ぼーっと過ごすことにしよう。
ぼーっと。

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