骨折をめぐる2人の会話に、ドラマを見た話
先日、友人と3人で時間を過ごしました。
その中の1人タケシ(仮名)が話しました。
「母ちゃんがさ、やっと腕のギプス外れたんだよ最近」
マサ(仮名)が答えます。
「おー、よかったじゃん」
2人の話を僕はだまって聞いていました。
タケシ「今までギプスしてたもんだからさ、外れたらなんか怖いみたいでさ」
マサ「あー、守られてるものが無くなる感じするもんなぁ」
と、僕は知っていましたがマサは過去に骨折したことがあります。
そしてそのことを知らないタケシに、自分の骨折の経験を匂わせる返しをしましたが、そんなことは毛ほども感じ取らずにタケシは続けます。
タケシ「いやまったくさ。親も年取るとさ、骨折が命取りになりかねないじゃんよ」
マサ「だよな」
タケシ「骨折って痛いんだろうなぁ…」
マサ「え?タケシ骨折したことないの?」
タケシに自分から質問することで、同じ質問を自分に返してくれることを、期待しているマサの胸の内が僕には透けて見えました。
と言うのも、僕はマサが自分の骨折の話をしたくて仕方ないのを、雰囲気で感じ取っていたから。
しかし、それに気が付かないタケシ。
タケシ「オレ骨折したことないんだよな」
と答えると、それっきり会話が尻切れトンボのように終わりました。
僕は思いました。
いや、聞かんかい
マサ待ってるやん。そっちは骨折したことあんの?って聞かれたがってるやん。
話したくて震えてるやん。会いたくて震えてる西野カナも真っ青、話したくて震えてるやん。頼むタケシ、マサに聞いてやれや。
しかし、そんな僕の胸の内が分かるはずもなく、タケシが話題を切り替えました。
2人の共通の趣味の話になりました。
相変わらず僕は黙ったまま聞くだけでしたが、マサの話しているどこか上の空な雰囲気で「あ、マサまだ自分の骨折の話したがってるな」と、なんとなく感じ取っていました。
ところが、悲しきことにタケシは全くこれに気が付かない。
そして、話がひと段落した時にマサが聞きました。
「ところで、タケシの母ちゃん、リハビリのやり方とか大丈夫なん?」
いや、ねばるやん
あきらめない姿、見せるやん。骨折の話するキッカケをつかむ挑戦、続けるやん。
泣けるやん。感動を与えるやん。挑戦する勇気、与えるやん。
タケシ、はよマサに聞いてやれって。もう息も絶え絶えぞ。
タケシ「んー、オレはよく分からないけど。母ちゃんなりにリハビリは頑張ってるみたいだよ」
マサ「そうか。リハビリ大事だよ。やり方でずいぶん変わるからなぁ」
タケシ「へぇ…。」
2人「……」
焦らすやん。
なぁ、タケシ。焦らすやんマサのこと。まだ聞かんのかい、なぁ。
てか、お前ほんとにタケシか?峰不二子じゃなくて?あの、焦らし界の頂点の峰不二子じゃないよな?おまえ、タケシのツラした峰不二子だろ本当は。
と、僕はさすがにマサが不憫に思われてきました。
マサもマサで気にせず自分から話せばいいものを、きっとプライドが邪魔してるのでしょう。
自分からいけしゃあしゃあと話し始めた日には、「あ、こいつ自分語りほんと好っきゃな」と思われかねない。
そんな自分にはなりたくない、とのプライドでしょうか。
マサ、おまえにはミスチルが足りてねーよ、と。
「妙なプライドは捨ててしまえばいい。そこから始まるさ」。
名もなき詩不足してんじゃないよ、と。プライド捨ててもう、話てしまえよ。
そんな感じで2人を見守っていると、
それは起こりました。突然に。
タケシ「あれ…?もしかして、マサって骨折したことあん…」
マサ「足とあばらはイッたことあるね」
めっさ、被せるやん
質問言い終わる前に話すやん。なぁマサ。
その質問待ってました感の露出すごいやん。もうほぼ、露出狂やん。なぁマサ。
あと、1つ気になったことあるんだけどさ、
「イッた」て。
骨折のことイッたって言うんだ、なぁマサ。
骨折を性的に捉えるやん。なぁ、マサ。
スッキリした顔で骨折の話、スタートするやん。
いや、それこそ「イッてる」顔してるやん。 スッキリしたってか、なぁ。
でも、良かったやん。マサ。
もう話そ。今日はとことん話そ。マサの骨折の話、とことんしてたくさん汗かこ。今日は。
それから、マサは自分の骨折の話をそれは嬉しそうに得意顔で続けたのでありました。
実は僕も腕を骨折したことがあるのですが、その時のことを思い出しながらマサの話を聞いていました。
マサの話がひと段落したときに、ミスチルが足りている僕は、妙なプライドに縛られることなく自分から
「オレも昔さぁ…」
などと自分の骨折談をし始めましたが、それを聞く2人の興味なさそうな顔を見てすぐにやめました。
結論、
みんな聞くより、話したいんだよな
現場からは以上です。