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飼育小屋 ハーレー コーラ

飼育小屋には、ウサギとニワトリと、鴨、あと名前のわからない小さい水鳥が数羽いたかもしれない。
餌やり当番だった僕は、普段の通学と同じ頃合いに家を出た。
地形の傾斜によって、うまいこと日陰ばかりが続いていた坂道も、それが途絶えたところで一気にこれでもかと降り注ぐ日差しに出会うことになる。

日差し対策に、僕のかぶっているキャップは叔父が送ってくれたもので、真ん中に(当時の僕にとって)カッコいい英語をあしらったロゴがデカデカと載っていた。
というか、英語だったらなんだってカッコよく見えた気もする。

黒、オレンジ、白、の配色がおりなすメカニックな雰囲気が、「ガンダムみたいだな」と、僕の心を掴んだのだ。
そして、後で知ったのだがそれはどうやら、「ハーレーダビッドソン」と言うバイクブランドのロゴらしかった。

叔父がハーレーダビッドソンを好きだった記憶は無いし、僕が「やっぱ、バイクと言ったらハーレーだよね」と叔父に言った記憶もない。
いったい、何の因果でハーレーダビッドソンの帽子が僕の元にやってきたのだろう。謎である。
人生とは、好奇心をそそられるまでもない謎に満ち溢れているが、これもその一つに数えられる。

さて、餌を待つ動物たちのいる飼育小屋の中で、もう1人の当番であるUと、水を換えたり掃除したりと手を動かしていた。
Uと何の話をしたのかなんて、一切覚えていない。

とにかく、僕たち2人は夏休みの朝、飼育当番として飼育小屋で必要な作業をしていた。
別に動物が好きだった僕ではないが、毎日のように通っていると、愛着も湧く。
勝手に名前をつけたりした。
一羽の鴨を「社長」と呼んでいたことだけ、覚えている。そう呼んだ理由は、多分ない。

当番の仕事を終えると、Uと2人の帰り道。
近所のリカーショップ前に、立ち並ぶジュースの自動販売機にさしかかると、Uが「オレ、コーラ飲もうかな」と言った。
お金を持っていない僕は、「オレはいいや。帰って水飲むから」
それは、強がりでは無い素直な気持ちだった。そもそも買うお金も無いのではあるが。

プシュっとプルリング引いた後、コーラの赤い缶を傾けてものすごい勢いでUが、それを飲んでいる。
僕は横でそれを見ている。
別にいらないと思ってはいたが、こうやって暑い中目の前でコーラを飲まれると、やはり羨ましい。
「ぷほーー!!うめーーー!!」
Uが言う。
「なぁ、一口飲ましてくれよ」
「うん。いいよ」

結局、その缶の半分以上は僕が飲むことになった。
Uはいつも、最初の2口くらい飲んだら「あとはいい」らしい。

それって、どういうことだろ…。
当時の僕には、理解が追いつかなかった。

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