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自作ラジオ 深夜 クラスメイト

中学のころだった。Tが家に泊まりに来ていた。
「夜更かし」をするだけのことに、何かいけないことをしているような、あるいは、大人になった自分たちを感じるような、そんな気分の年頃だった。

その日も当然のことのように夜遅くまで起きていた。
僕らの間で流行りの遊びと言えば、オリジナルのラジオ番組をカセットテープに吹き込んで作る、というものだった。

お互いがラジオdjになりすまし、フリートークを展開。また、届いたリクエストやメッセージ(もちろん自作自演)を読み上げて、それに応えたり曲を流したり。
ジャミロクワイやエアロスミス、Mr.Bigやその他ハードロックバンドの曲をよくかけていた気がする。

その夜も夕方から録音したカセットテープを聞き返していた。
番組のタイトルは、「リスナージャック」。
自分のことながら、死ぬほどダサい名前だな、と今思い返しても赤面するレベルである。

その「リスナージャック」のジングルも作っていて、ロケット発射時のカウントダウン、発射後のエンジン音を、どこかの音源から拾ってきて、その音声を流した後にTと僕が
「リスナージャック!!」
と2人で叫ぶものだった。

書いていて、夏場なのに寒気がしてきた。
気温がグッと下がったように感じる。
リスナージャックて。なんだよそれ。ひどいよな。いや、ダサすぎるて。

でもな…、そこがいいな!と。
その、ダサさが青臭くていいじゃないの!と、今僕は思いたい。

その日もTとリスナージャックを3本録りくらいしたと記憶している。
自分たちで録った番組を聞いて、自分たちで笑い転げる。
ダメ出しをし合ったり、次回作への意欲を交換し合ったり、企画やアイデアを模索し合ったり。なんと平和な一幕だろうか。娯楽の自家発電。

リスナージャックの吹き込まれたカセットテープは、その都度クラスメイトの数人に、なかば強制的に「聞いてや」と貸し付けられることになるのだが、評判は上々だった。
そこそこに、クラスメイトの耳はジャックできていたらしい。

さて、Tが泊まりにきた夜に戻る。
時刻も深まりあまり音も出せなくなったところで、「ちっと、外行こうや」と、どちらからともなく言い出す。
時計は、日付を跨いだ深夜になっていた。
イキッた中学生の「深夜徘徊」である。

冒頭書いた通り、夜更かしすること、深夜外に出ること、そんなことが、僕らにとって「何かいけないこと」であり「大人の真似事」だった。(未成年の深夜徘徊は、実際やったらダメ)
昼間と打って変わった様子の、闇に包まれた住宅街を歩きながら、押し寄せるおっかなさと満足感とが、イキった心に渦巻いていた。


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