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黒アゲハ サンダル擦れ 傘

ここ2.3日降り続いている雨が、ポツポツと傘に音を立てていた。
少しだけ水位が上がった小川の向こうに自宅のマンションが見えている。川を挟んで対岸の通りを車が滑っていくが、盆の時期はその数も少ないようだ。

休みの日は決まって散歩に出ることになる。日課と呼ぶほどのものでもないが、とにかく外にでる。あてもなくそこらへんをほっつき歩く。
なんの変哲もない住宅街の片隅に、意外にも目につく光景は数多転がっていたりする。

南国の花、ハイビスカス(だと僕は認識した)が、とある民家の石垣から顔を出すように咲いていた。
そぼ降る雨に濡れ、花びらの赤、葉の緑はその深さを増すようだ。
そこにチューチューチューチューと、耳を澄ませば音が聞こえて来そうな勢いで、花蜜をむさぼる黒アゲハの姿だった。

黒アゲハなんて、いつぶりかねぇ。
と、僕の中にある黒アゲハの記憶の引き出しを引っ張り出して、中身を物色するものの、なにも手がかりになるようなものはなく、徒労に終わる。要するに、黒アゲハにちなんだ思い出が僕にはひとつも無いようだ。

スマホを取り出して、黒アゲハとハイビスカスに向けてカメラを構えてみる。
羽ばたきのスピードが早すぎて、はっきりと映らないそれ。色も、カメラ越しでは雰囲気がいまいち出ないが「まぁ、そんなもんですよなぁ」と、あきらめてシャッターを押して、出来映えのいまいちな写真をフォルダに保存した。

そのまま、小川沿いを南下していくと、川の浅瀬になったところで大きな白い鳥が、立っていた。休憩なのか、獲物を待ち構えているのか知らないが、とにかく大きな白い鳥がそこにいた。
それにしても、植物だの鳥だの、本当に自分は名前を知らないなぁ、とこう言うとき思う。
大きな白い鳥だぁ!!と言葉に出さず言っている自分に不甲斐なさはあるが、仕方がない。

さて、散歩を始めて1時間半。サンダルを素足に履いて出てきたため、靴擦れならぬサンダル擦れを足の甲に起こす。
痛い痛いと、上手いこと足の甲にサンダルがヒットしないように歩くが、うまくいかない。
目を近づけて見れば、うっすらと血が滲んでいた。

帰り道にエビスの500ミリを2本買って、冷凍庫にあるフライドポテトを揚げてつまみに一杯やるのが楽しみで、ウキウキしていたが、サンダル擦れのせいで少しだけテンションが落ち込んだ。
そして、雨上がりの空を見て1つまた悪いニュースが頭にポンと流れてきた。
お店に傘、忘れてるやん。

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