スタバ 見る ハート
駅ビルの2階にあるスターバックスの窓際の席からは、眼下に路線バスのロータリーが、カタツムリのような螺旋を描いているのが見えた。
ぐるぐるぐると、ヘッドライトを煌々と灯したバスが旋回している。行き先表示の電光掲示板に光るオレンジ色のLED。
あのオレンジは、友達がバイクに乗る時に被っていた、フルフェイスヘルメットのオレンジと、全く同じトーンだな、などと思い出してドリップコーヒーをズズズとやっている。
日曜の夜は更けるのが早い。というのも、17時にもなれば蜘蛛の子を散らすように、街から人々が帰路に着く。
19時にもなると、なかなかに閑散としてくる。平日の21時過ぎくらいの雰囲気が漂っている。
僕が今いるスターバックスにしたって空席だらけ。そう、ここはローカルシティだ。
2時間ほど前に仕事を終えて、川沿いの公園を歩いてみた。春にはピンク色に染まる桜並木が、いつの間にか葉っぱを一枚残らず落としていて、その梢は完全に冬の装いだった。
いやいや、いつの間に冬きたん…と、僕が変わらぬ毎日を送っている間にも、淡々と確実に巡る季節の営みに感じ入ってみた。
歩くときは相変わらず絵の素材用にと、スマホで写真を撮っている。
絵を描くようになってから、写真の撮り方、それはつまり街を見る自分の視点が大きく変わった。
というより、きちんと風景を「見る」ようになった。以前は見てるようで実は全く何も見ていなかったから。
その証拠に、通勤路にある建物の色や形、どんな看板があるかなどそんなこと何一つ覚えていなかった。
でも今は違う。子供の時のように通いなれた道の風景を記憶している。きちんと見ているらしい。それがなんだか嬉しい。
さて、スターバックスのコーヒーをこの時間に飲んで果たして今夜は眠れるのだろうか、と今更ながら自分がカフェインに敏感な体質であることを思い出した。
スタバのコーヒーはそこそこ苦い。イメージだけで言うけど、割とカフェインしっかりっぽい。好きな味だ。
レジのお姉さんがすごく丁寧に接客してくれた。マスクとアクリル板越しでほとんど何言ってるのか聞こえなかったけど、ハートで接客してくれているのが伝わったので清々しくお会計ができた。
結局、コミュニケーションとは言葉ではなくハートだな、などと相変わらず月並みでどうでもいいような物思いが頭の中を逡巡する。
ところで、既にしてものすごく目が冴え渡って来ている気がする。今夜は長い夜になりそうだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?