■悪い夢
アラームが枕元でけたたましく絶叫した瞬間 私は極彩色の悪夢から現実の朝へ急浮上した
その真っ赤な鮮血の残像があまりにもクリアだったので 本当に刺されていないか震えつつ脇腹を確認してみたほどだ
数えた事もないが 繰り返し繰り返し一人ぼっちの私を襲ってくる悪い夢
ともかく 生きている事に安堵しつつ 呼吸を整え 現実の周波数を捉えようとスマホを開いてみる
誰かの熱愛も殺人もデモも詐欺も ベッドの中スクロールされていくニュースは あの悪夢の延長のように思えた
あぁ いつも通りの今日が始まったんだ
夢の感触を脱ぎ捨て 私はリビングへ向かった
ふと 冷えた空気の中 キッチンから人の気配がする
その一瞬の緊張の後 私は ほっとして吹き出した
あぁ
そうか
私の今日は 今日からこうやって始まるんだった
「おはよう」
「おはよう」
同じ苗字になった人が 寝癖頭で笑っている
「何かいい夢でもみた?」
「そうね」
こんな気分になれるなら 悪くない夢かもね
私は小さく微笑む
#お題 :「なんとなく気分のいい朝」
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