■食欲の秋 2015
改札を一歩出ると 肩が抜けそうな程の溜息と同時に ヒールの痛みがつま先へぐっと食い込んでくる
家まではあと3分 だけど もう一歩も動けそうになかった
こんな時間までメイクがただれるほど働いて
私一体 どうなりたかったんだっけ?
「いや 知らんよ」
といわんばかりに 駅前のコンビニは元気に照明を炸裂している
ですよね
とつぶやくと 抗えない蛾のように その眩しい入口をふらふらと目指した
見慣れた店内を奥まで直進し 惣菜を物色する
ぼんやりいつもの品揃えを眺めていると
ふと 秋刀魚の塩焼きと目が合った
瞬間
私の胃のピントは完全にそこに固定されてしまった
秋が今年も来た事を ここで知るのか
けれど もう止める事はできないので ニヤニヤとカゴに入れる
思えば2年前も アホみたいに傷つくだけの恋愛に精を出しボロボロだったけど
ちゃんとまた秋が来て 私は今 普通にお腹が空いている
私 どうなりたかったんだっけ?
知らないよ
足はもう痛くなかった
さぁ 帰って今年も秋を食べよう
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