ノルマ至上主義が生み出した功罪。スーパー営業マンみさおはやがて凋落した。
製薬メーカーの営業を22年間やっていた。
毎月ノルマがあった。金額のノルマだ。極論で言うと、なんでもいいから5000万円をお前は今月売ってこいというものだった。
大いなる志を持って入社した新人営業マンみさおの行動と精神はそのノルマという悪魔の呪縛にどんどん蝕まれてとんでもない境地にやがて達していくことになった。
結果がすべて
という言葉がある。確かにそうなのだと思う。結果が出ないやつに限って、こうやったんですがね、こういうふうに提案したんですがねと過程を評価してくれと必死だ。
いやいやそんなのはどうでもいいねん、結果出してというのもわからなくはない。
だが世の中は2項ではできていない。2項主義は極端を生み出す。元いた会社はノルマ主義の最右翼にあった会社、新人営業マンみさおはやがてとんでもないモンスターになった
モンスターになってしまった新人営業マンみさお
ノルマを達成するために先輩からならい自身で学び、素敵な企画を提案することで売上をどんどんあげていったみさおは、新人全国ランキング6位になり、その時代をたのしんでいた。
しかしどうしてもノルマに届かない月がでてきた。ずっとやってきたみさおは考え抜いたが、やがて策はつきた。
そしてついに禁断の売り込み術に手を染めてしまうことになった。
営業の呼吸 一の型 『おねがいします』
先輩からは決して使うな、もうもどれなくなるぞ
と言われていた 営業の呼吸一の型『おねがいします』をついにつかってしまったのだ。今月ノルマ達成しないとお前なんてもう必要ないでと上司に言われた操は、色々考えたがついに万策つき、その究極の技に手を染めてしまったのだ
だそうと決めてヨシダ薬品にいった。そしてついに技をだした
「すみませんお願いします。30万円だけ買ってください」
そこには、理屈もなにもなかった。この商品はこれがすばらしい、御社がこれを買うことで御社にこれだけのメリットをもたらしますなどの説明は一切ない。
ただただ、理由もなく、自分のノルマ達成のためだけにお願いするという、誰も幸せにしない技だ。
「なんでかわなあかんねん」
というあたりまえの答えが店主からきた。
「そうですよね、社長にメリットなにもないですよね。でもね、社長、今月私ノルマそれがないといかないんです、おねがいします」
と再びなんの理屈もないままお願いした
「なんやねんそれ」
と店主
「お願いします」
と私。
「わかった、貸しやで」
と予想外の答えが店主から返ってきた。おどろいた、この技すごい。
もうあともどりできなくなった
あまりにも簡単に決まった。これについて先輩に報告した。すると先輩は
「もうだしたのか、早すぎたな、おわったで河村」
と言った。やっぱり終わりなのかと思う反面、そのときはまだその恐ろしさにきづかなかった。
その後、しばらくその技をださずにいたのが、売れなくなったとき、2回めにその技を出すという決断は早かった。
なんか売れないなあってなったとき、あまり考えもせず、またあれ使うかと考える暇もなく
「社長、50万円おねがいします」
と口をついた。前回よりやり取りの回数は増えたが結局買ってもらえた。
そして私はその技の中毒になった
使うなと言われていた理由がわかった。私はやがて、なにも考えず頼んでばかりの営業マンになった。こういう企画がクライアントのためになると考えることをせず、どういうお願いが一番効果があるかというのばかり考えるようになった。
頼めばいいわという技の習得ばかりに注力し、私は頼んでばかりの営業マンになった。
もちろん結果は推して知るべし。全国6位をほこった新人営業マン操は消え去り、全国下から5番目の成績まで堕落した。
あいつは終わったとなった。新人営業マン操は次に中堅スーパー営業マン操になって復活するまで5年間底辺に張りついていた