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ヤフオクの浮世絵落札事情(第1弾)


ヤフオクで美術品が安く出品されていますが、一般の人にとっては真贋が分からないために安く出品された美術品を見てもオークションに参加することまでは考えられないでしょう。
ところが、美術品の中で浮世絵は真贋が分かりやすい美術品でもあります。

例えば、有名な北斎、歌麿、写楽などは、明治時代以降に復刻版がたくさん出され、その復刻版に汚れをつけ江戸時代のオリジナルのように見せかけて出品している人がいます。

「素人だから真贋はわかりません、画像で判断してください」のような文言を復刻版だと出品者は分かっているのに書いています。

これらの浮世絵はまず明治時代以降の復刻品なのでオリジナルに比べれば100分の1とか1000分の1というような値段です。

それに北斎、歌麿、写楽などの江戸時代のオリジナルはヤフオクには出品されません。

だから、このような有名浮世絵師の出品は、真贋が分からなくても素人は手を出さなければ良いだけです。

ヤフオクで出品される美術品の最高額は500万以上はあり得ないし、浮世絵でも100万円以上はまずありません。

それ以上の高額の浮世絵は浮世絵専門店での売買か有名オークションでの売買になるでしょう。

浮世絵の場合10万円を超える落札でも珍しいのです。

ほとんどの場合が3万円以下です。

江戸時代のオリジナルの浮世絵が3万円以下で落札できると聞けば驚く人が多いと思います。
何しろ、現代の復刻版でも13,000円するのです。

それが170年前の浮世絵が3万円以下なんて、と考えると、きっとひどい粗悪な浮世絵なんだろうと考えてしまうでしょうが、美術館に飾ってもおかしくない浮世絵も3万円以下で落札できるときもあるのです。
今、この原稿を書いているのは2020年7月20日7時44分です。

実は、昨日の夜に終わったオークションの情報をここに載せようと思いこれを書いているのです。

昨日出品終了の浮世絵は、三代豊国の『今様押絵鏡』です。

三代豊国は江戸時代において、浮世絵師史上1番人気の高かった浮世絵師です。

浮世絵師と言えば北斎や歌麿、写楽の名前は誰もが知っていますが、豊国は聞いたことがないという人も多いでしょう。
そんな無名の浮世絵師がなぜ
浮世絵師史上1番人気なのか? と疑問を持つと思います。
実は今の人気の浮世絵師の名は明治の中ほど以降、欧米の知識人や金持ちによって決められたのです。
もちろん、北斎や歌麿に関しては江戸時代でも有名でしたが、それでも3代豊国の人気にはかなわなかったのです。
そして現代において3代豊国が一般の人には知られていない理由は欧米の知識人や金持ちが3代豊国を好きではなかったからです。
しかし、印象派の画家、特にファン・ゴッホは大量の3代豊国の浮世絵を買っていますので、1890年代はそれなりに知られた浮世絵師でもありました。
その3代豊国の作品の一つに
『今様押絵鏡』があります。
江戸1番の人気絵師であり、大御所の浮世絵師の三代豊国の作品ですから版元も気を使い豪華絢爛な作りになっています。
これは広重も同じなのですが、大御所の地位にいたときに広重の代表作『名所江戸百景』は作られたので『名所江戸百景』は22版というとてつもない版を彫り摺られた作品なのです。
一般的には8版で作られるのでその違いが分かると思います。
ちなみに写楽はその8版も使っていない作品もあるくらいです。
この『今様押絵鏡』は一般的には鏡絵と呼ばれ、ヤフオクでも時々出品されます。

だから珍しい浮世絵ではないのですが、今回は10点も大量出品され、それも摺り、状態が良いのです。

実際に、手にしてみなければはっきりとは言えませんが、美術館所蔵でも問題ないように見えるのもあります。

おそらく、浮世絵コレクターが何かしらの理由(一番考えられるのは亡くなり、遺族がまとめて古美術屋に売った)でコレクションを処分し、それがまとめて出品されたのだと思います。

上が出品された10点です。
赤の四角で囲まれた浮世絵は私が落札しました。
私はこの鏡絵を30年前にコレクションしていました。
そして、その種類は浮世絵美術館で有名な太田美術館よりも多かったのです。
  ☟太田美術館展示会

30年前に鏡絵をコレクションしていたからヤフオクでも鏡絵が出品されると落札していたかと言うと、そういうわけではなく、ほとんどは入札に参加していませんでした。
何故なら、お金がないからです。
しかし、今回は摺りが良いのがたくさん出て、いっぺんに買えば送料が1回分ですむので何年かぶりで頑張ってみました。
鏡絵は一般浮世絵店での相場は2~5万円くらいです。

一般浮世絵店の相場はヤフオクの3倍程度です。
違う言い方をすると、一般浮世絵店が仕入れするのは売値の3分の1ということでもあるのです。
それはヤフオクでもプロ(一般浮世絵店)が入札に参加しているということでもあります。
昔、ビュッフェのリトグラフを私が出品したときに落札したのはプロでした。
ヤフオクではかなりのプロが参加していると教えてくれました。
だからこそ、プロが安く落札したいために、なんでも鑑定団などでもネットオークションはほとんど偽物だという偽情報を流させるのです。
なんでも鑑定団をちゃんと見ているとネットオークションで落札して本物だったという美術品は多く、大体2分の1とか3分の1で落札できています。
それ以上になるとプロが降りるために、それくらいで落札できるのです。
その方程式で鏡絵を見ると、一般浮世絵店の鏡絵の安いのは2万円くらいです。
そしてその3分の1と言うと7000円です。
つまりヤフオクで浮世絵を買っているコレクターたちはそのことを知っているために7000円前後での攻防がよくあるのです。
ところが今回の落札に関しては7000円前後の落札が6点、2万円台まで行ってしまったのが2点、3万円台が1点もあります。
これはどういうことかと答えを書きますと、私が入札に参加したために落札金額が上がってしまったのです。
オークションは落札したい人が2人以上いれば無限に値が上がっていきます。
もう一度10点の落札画像載せますので見てください。

赤四角が私の落札した鏡絵です。
次点と次次点の入札金額を載せています。
この金額を見れば、私が参加しなければ次点もしくは落札した人が10050円が6250円、7460円が5460円、7250円が6250円、23500円が6460円、6750円が4870円、7270円が4050円、20210円が7710円、6460円が5950円、6710円が6460円と、殆どが7000円以下で落札されているのです。
そして20000円台で落札された鏡絵も7000円は超えたのもありましたが、私が入札に参加しなければ、6460円と7710円で落札できたのです。
私が相場を上げてしまいましたが、一人でも絶対買いたい入札者が現れると2倍、3倍にも落札金額は上がるのです。
私がなぜ絶対買いたいと思った理由は、私がコレクションしていない鏡絵が3枚も出品されたからなのです(こんな事今までにはありませんでした)。
鏡絵のコレクターとしては生活費を犠牲にしてまで買いたいので絶対落札する覚悟で臨んだのです。
普通なら1万円以下で落札できるのに1万円を超え2万円台になったのは同じように鏡絵をコレクションしていた人がいたのかもしれません。
そして私が持っていない鏡絵なので珍しい絵柄なので、競り合った入札者も、それを持っていないために2万円台までついてきたのでしょう。
しかし、今回落札できなくてもまたの機会があると考え降りたのだと思います。
この2万円台と言う金額は浮世絵店で売っている金額でもあるので、それ以上は入札しなかったのだと推理できます。
だからコレクターのプロでもあるのでしょう。
私がコレクションしている鏡絵で持っているのは7000円以上は入札しなかったので7250円と7270円で他の人に落札されてしまいました。
ここで目立った落札品で33500円があります。

これに対して私は17000円で降りました(この絵柄持っていますから)。
だから高値で落札された理由に私が入札に参加したというのはありません。
この鏡絵が高くなったのは入れ墨があるからです。
入れ墨入りの浮世絵はヤフオクで人気が出て高値がつくようになりました。
入れ墨コレクターがそれなりにいるのでしょう。
ある種類のコレクターが何人か出て買い占めていくとその種の浮世絵は何倍にも上がっていきます。
昭和初期に5人くらいが五渡亭国貞を買いあさったときは歌麿並みに値が上がったそうですし、今のヤフオクも入れ墨と国芳、ちりめん浮世絵は下手したら一般浮世絵店より値が上がっています。
ヤフオクは値の上下も早いのです。
実は鏡絵も、30年前に次兄が買い集め10万円以下は全て買ったので、その時の相場は10万円を超えたのでした。
一人でも熱烈なコレクターが現れるとすぐに数倍から数十倍にまで値は上がるのです。
オリジナルの浮世絵はたくさんまだこの世に残っていますが、増えることはないので集め出す人が現れると値が一気に爆発するのです。
現在、値が高いと言われている1700年代の古浮世絵にしても明治10年ころまでは幕末の浮世絵より値が低かったし、1880年代のパリでも数万円で買えたのが18
90年代になり、アメリカ人の参入により一気に値が上がってしまい100倍以上の値上がりをしたのです。
だから今安いからといって数十年後も安いとは限らないのです。
何しろオリジナルの枚数は増えないのですから。

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