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宝尾集落跡へ(山水倶楽部 宝尾登山)

かつて川上の山中にあったという伝説の山岳寺院、摩野尾山一乗寺。その傍らに宝尾の集落がありました。
摩野尾山一乗寺ついては別頁にて簡単にご紹介していますが、今回は川上の任意団体・山水倶楽部による宝尾集落跡までの山歩き(平成18年6月と少々古いですが)の写真を掲載致します。

山水倶楽部 宝尾登山

宝尾へのアプローチは、まず岸谷川沿いに進み、牛舎裏の分岐を右手に折れる。嶽間谷の砂防を過ぎ、しばらく行くと右手に登り口の看板が現れる。看板の少し先に林道の分岐があるので、そこに駐車。


9:30 登り口着。一行は谷川を渡り、いざ宝尾へ…

先頭は宝尾藤原四家のひとつである宝尾の久左家のI氏。
6月となると登り口付近は結構雑草が茂っているが、杉林の中へ入ると下草もなく歩きやすい。棚田跡の脇を登っていくが、5分も歩いていないのに早くも息が上がってくる。こんな所までよく田んぼを作っていたなと感心する。自然と口数が減っていくが、先頭を行くI氏はなぜか元気。先祖の加護?

登り口から5分ほどの所に鉱生谷へ向かう分岐があり看板が立っている。そこで一回目の休憩。人ひとりがやっとのこの道を、以前は小さな耕耘機を押して鉱生谷から山中の田んぼへ通ったそうな。耕耘機が谷へ転落することもよくあったそうで、その度にロープで引き上げるのが大変だったらしい。

短い休憩の後再び歩きだし、黙々と山道を進む。斜面を見上げると尾根が段々近づいてくる。やがて尾根に出ると道幅が広くなり、ぐっと歩きやすくなる。しかしそれもしばらくのことで、道が掘り込まれた古道の様相を呈してくると、道底に積もった落葉が厚く、とても歩きにくい。ここで2回目の休憩。木々のトンネルが日光を遮り心地良い。このあたりで道中の半分くらいだろうか。

5分の休憩のあと、再び木立の中の古道を進む。落葉の積もった所を避け、なるべく地面の露出したところを歩く。休憩しても歩き出すとすぐにまた休みたくなる。一行は結局このあともう一回休憩した。


男たちはとても疲れやすい

10:45 道が尾根の左側を巻くようになると突然竹林が出現する。この竹林は川上から宝尾を見上げるとき目印になるあの竹林だ。少し進むと道は二手に分かれる。直進すれば宝尾集落、右手を登る道は後で判るが権現前を経て宝尾峠へ向かっている。

そのまま直進するとすぐに大きな2段の石垣が眼前に現れた。この石垣はなかなか立派なもので、このような人工物が山中に突然現れるとかなりインパクトがある。石垣の下も上も広場になっている。ここは屋敷跡でトイレらしき方形の穴もある。近年ここにも地籍調査があったらしく、境界杭がそこかしこに見られる。

立派な石垣出現


この石垣の付近には他にも平場があり、このあたりが宝尾集落の中心だったことが伺える。石垣上広場の右手をさらに登った広場の端には墓の跡があった。この先の道沿いにもたくさん墓石が並んでいる。古いものは小さな五輪塔で、比較的新しい角柱の墓石には文字の多くが明瞭に残っており、戒名や年号が見て取れる。

墓を過ぎると道はUターンするように曲がる。ここの下の段もかなり広い。下の段から今いる道に上がってくる道もある。位置的に集落前の分岐はここに繋がっているようだ。

カーブした先の山の斜面に、竪堀のような溝があるのが目に入った。道は竪堀の所から右手にトラバースするように続いている。これが峠への道だろう。竪堀の脇には一本の門柱らしき石柱と数体のお地蔵さんが並ぶ。対になる場所の落葉を払うと礎石があった。反対の門柱は礎石を残して倒れたようだ。竪堀は上のほうまでずっと続いており、ここが宝尾権現への階段らしい。20数年前小学校の遠足で来たとき、落葉を払うと石の階段が見えたようにも記憶しているが、今はもうすっかり落葉と腐葉土に埋もれたようで、靴で少し掘ってみても階段は現れなかった。
門柱の上の段には竹にもたれ掛かられ、先端が落ちた宝篋印塔があった。郷土史などに写真が載っている櫻井権正の宝篋印塔だと思われる。

宝尾権現への階段跡

階段のかなり上のほうでは木杭で土留めした階段が露出していた。そこからすぐ広場に出る。石垣の向こうに崩れた社殿の木材が見えた。広場は三段になっており、一段目は50m走ができそうなほど広い。二段目に上がると拝殿跡らしき礎石が見える。拝殿の右手には倒れた五輪塔がいくつかあった。拝殿正面の段が社殿跡となる。四半世紀前は傾きつつもちゃんと建っていた社殿は既に倒れ、木材も半ばが朽ちていた。事前に聞いていた話では、屋根の杉板が残っていて、その下の木材の細工は残っているかもしれないとのことだった。しかし杉板は朽ちて無くなり、風雨に曝された木材には細工など残っていないようだった。

権現前の広場(どこもかしこも竹だらけ)
朽ちた社殿の木材(社殿跡の背後より)


帰途につく

しばらく社殿跡で休憩したあと、時刻も予定の11:15となったので少々慌ただしいが宝尾を後にする。昼は行事恒例のバーベキューが待っている、遅れるわけにはいかない。帰りは権現さんの階段を下りた先の道を辿り、集落前の分岐点に出た。そこからの下山は快速で、20分ほどで登り口まで下りることができた。

(山水倶楽部)