ウェビナーで上手な質問者になるには?
以下、駄文。
本日午後は「経済産業省 未来の教室キャラバン×大阪」を視聴した。
(様子は近日中に下記、YouTubeチャンネルに録画公開されるとのこと)
このオンラインでの公開キャラバンは、教育関係者のみならず、幅広く一般に公開されており、誰でもが参加でき、チャットにて意見や質問をすることが可能だ。
それこそ経済産業省の官僚や、大学教員、研究者、教育関連の企業人など、日頃は接することない、経済産業省の「未来の教室」とEdTech研究会をリードしてきた委員の方々と、やりとりができる。
国政の中で、とても開かれた、珍しい?場である。
今日も話の中にあったが、GIGAスクール構想での「1人1台」「回線増強」については、経産省や総務省、内閣官房などの協力があって、初めてなし得たものであり、文科省単独ではなし得なかった話でもある、というような霞ヶ関の裏話すら聞くこともできる場である。
今回は主催が「大阪私学教育情報化研究会」。
二部構成で、前半は経産省の「未来の教室」事業についての説明と、STEAM化に関する実証事業の話で、後半は大阪府内の中学校・高等学校の 「Withコロナ対応」の様子が現職の教員から語られた。
「未来の教室」の動きは、自身の興味もあって、個人的に2018年度よりずっと着目しており、いわゆる「追っ掛け」「ヘビーユーザー?」と化している。申し訳ないが、学校行政に関わる、中教審や文科省の動きよりも個人的には面白いから。
面白い点は2点あり、
⑴ 参加する人の多様性が担保されている点
⑵ これまでの学校教育制度の柵に縛られない、
いわば「Create New Value」しようとしている点
にある。
⑴ については、教育とは縁遠いような企業がコンテンツホルダーとして、
教育産業と連携して、学校現場へ入っていく話や、BPR(Business Process ReEngineering)といった、民間企業で利活用されている手法での学校働き方改革の提案など、経済産業省らしさを感じ取れる発想がある。
こうした発想は、学校教育関係者・教育に関係する大学教員で固められ、たまに民間企業のお偉いさんがアリバイ的に委員に入る、といった、多様性が担保されていないように見受ける、中教審や文科省からは出てこないような気がしている。
⑵については、「未来の教室」ビジョン(第2次提言)内の随所に出てくるが、現在の義務教育における「履修主義」のあり方について疑問を投げかけている。
これまで、「既存のルールだから」「文科省が変えないから」でスルーされてきた話を、公文書内に記載され、堂々と公開されている。おそらく、中教審教育課程部会や初中等部会、文科省内からは出てこない話ではないかと思う。
これは、経産省が「本質論(そもそも論)」として未来からの逆引きをし、探究していき、これまでの文科行政への柵がないがゆえに、できた話ではないかも思う。
(以下、p.11 引用)
課題3:授業時数・学年・居場所の制約(履修主義・学年制・標準授業時数、狭い「対面」の考え方)
子ども達一人ひとりが自分に適した学び方を選び、自分に相応しい学習ペースを選んで学ぶことは、EdTech の登場によって技術的には容易になった。しかし、同じ学年の子ども達が同じ教室に同時に集まり、標準的な授業時数を一律に履修することを前提とした現在の制度は、教師が EdTech を活用して子どもの能力を最大限に引き出すべく、授業時間の使い方を工夫する際の制約になるはずである。
また、高速大容量通信とインターネットは、「対面」や「対話」という言葉の意味を劇的に変え、時間的・空間的な制約を越えて、リアルな対面と同等の質のコミュニケーションを可能にした。企業や官公庁においてもテレワークの活用が進み、人々の様々な事情に配慮した働き方を可能にしている。しかし、そうした社会に子ども達を送り出す教育現場では、まだ「同じ空間にいる状態での対面」だけに重きがおかれ、「インターネットを介した対面」や「メールやチャットを用いた文字による対話」の重要性は軽視されている。
興味深いのは、引用部、学校休校措置が出され、現在までの「Withコロナ時代の『学びの保障』」でオンライン授業と対面授業に関する課題を、まさに予言したかのような話であることだ。(「未来の教室」ビジョン(第2次提言)は、コロナ禍以前の2019年6月に出されている)
履修主義から習得主義へ、といった法規や政策の変更は、現実問題、いきなりは無理だとしても、「これまでがこうであったから」という理由で検討すらしてこなかった状態から、検討を始める、へと変わらざるを得ないのではないか、と私は考える。
話が逸れた。
今日のオンラインキャラバンでは、チャットも盛り上がりを見せたが、発言の大半は、大阪はじめ、関西の初中等の教員というよりは、保護者や大学教員であったように感じた。
気になったのは、チャットでの発言内容。
YouTubeでのライブ配信であったので、チャットを隠すこともできるが、様々な意見を見ることも楽しいものであるため、私はチャットをそのまま見ている派でもある。
今回は、EdTechやSTEAM化、さらには教育行政の基礎的な話、さらにはGIGAスクール構想や、長期休校期間から「With コロナ」の対応に至るまで、少し専門性の高い話で構成されていたように思う。
発言や質問、感想は、配信の事務局のルール遵守以外は自由ではあるものの、あまりにも「文科省施策」「経産省施策」とに選別されていない、新聞やネットの小見出しで拾ったが如くの用語の内容を質問する、など、視聴者がチャット発言するにおいても、相当に配慮が求められるなと思う。
今回、感じたのは、
<1. 「明後日の質問」「子どもの質問」>
いわば高校生対象の塾なのに、未就学児内容の質問をするような発言も目立った気がして、個人的には残念であった。
私も、何度かシンポジウム的なオンライン会議で出演したことはあるが、
ずれたチャット質問が出ると、ゴリゴリ精神を削られる。
今回のようなオンラインでの集いを、オフライン(=対面)に置換して想像すればわかるのだが、会場への質問タイムで、関連はすれど、今回の話題とは「明後日の質問」は、運営(時間制約)上、おそらく軽く去なされるのが常である。
登壇者は、自分の意見を発表して、より議論を深めたいから。そして会場参加者も、もっと深掘りしたり、自分の感じている違和感なり賛意を、言語化される質問を待っているのものだと思うから。
<2.「我思う(体験した)。故に我が意見は絶対で、聞け、賛同せよ」>
講演やシンポジウムというものは、登壇する方は、おそらく
「視聴者よりも、よく知り、よく体験され、幅広く情報を持っている人」
である。体験の一事例は一事例として尊重はするが、当然、それは誰しもに共通するが、全てを包含するものではない。(個別最適化の議論も、このあたりは大きな課題であろうと考えている)
今日は、登壇者の皆さんが「実践されたこと」を中心に、お話をされていた。それも非常に論理的にだ。いわゆる、「トゥールミンの三角ロジック」
が効いている。
反して、チャットを眺めると、反駁(Rebuttal)、質疑(Question)、反論(Antithese)のうち、どのタイプが多かったかを考えると…
(チャットのログを集約しテキストマイニングで構造化の分析はしてある)
下記リンクの最後、《禁止事項》な気がしている。
禁止事項
主張(Claim)自体に反対することは破壊的批判(個人攻撃や人格攻撃)とされています。論証責任を果たしている以上はどのような意見であっても一つの意見として尊重し、論証過程すなわち根拠(Data)や論拠(Warrant)など、主張(Claim)以外の要素を検証することで論証の説得力を比較するようにしましょう。
<今日の第一部 "STEAM化" の場合>
主張:STEAM化が今後、学校教育内で重要になる。
反駁:いや、現場の状況知ってる? それ理想だからできないって!
このような議論は不毛であるとしか言いようがありません。このような場合は、相手の主張に対して論証責任を果たすよう求め、相手の根拠(Data)や論拠(Warrant)に対して反対するようにしましょう。
ウェビナーなどで、発言・質問する場合は、以下の3つをこなせると、
「拾ってもらえる"質問"」「使ってもらえる"反論"」
ができるのではないかと思う。
1. 事前に関連する資料を読み込んでおくこと(最低限の参加資格)
2. 「自らの発言は全て一事例であり、仮説に過ぎない」と常に考えること
3. 演題に沿い、発表者の発言・プレゼンの「主張」を的確に捉えること
4. 生産性のある議論にするため「トゥールミンの三角ロジック」で
日頃から訓練をすること
「お前、なんか偉そうなこと書いてるけど、トゥールミンの三角ロジック
に沿ってないだろう!」って?
正解は、「ハイ or Yes 」ですね。だってこれ、感想だもの(笑)