黄金の滝
はじめは子供たちがいたずらで、おもちゃか何かの粉を辺りに振りまいているのかと思った。
公園に沿った道を歩いていた時のこと。突然私の体の横に、金色の粉が雪崩れるように降って来た。
けれど、公園と歩道との間に生け垣のように並ぶ木立の向こうに、子供の姿どころか人の気配もなかった。
足元に顔を向け、落ちて来た黄色のものをよく見てみると、それが米粒よりひと回りほど大きい金木犀の花弁だと気付いた。
ちょうどその時、強い風が吹き、また黄金色の雪が降り掛かって来た。
頭の上を見上げると、大きな木の青々とした葉の合間から、絶え間なく金木犀の花弁が落ちてくる様子が目に映った。
その勢いは滝とも見まがうほどで、すぐにすべての花びらが落ちてしまうのではないかと思われた。
はじめての光景に足を止めて見入ったが、風が吹き止んでも、緑の隙間にあるオレンジ色の花弁の数はちっとも少なくなったようには見えなかった。
再び風が吹くと、秋の透明な日を煌めかせながら黄金の滝が宙に流れた。
それは、私が再び歩き始めても続いていた。
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